見出し画像

いつか結婚しても

8月某日。

私の友人(新婦)が結婚式を挙げた。

大学時代からの友人で男女問わず仲の良いメンバーが招待されていた。

その日は挙式の集合前に土と砂のような雨が急に降った。

私は早く着いていたためかろうじてそれに当たることはなかったが他のメンバーからは「通り雨だろう。雨が止むまで駅で、建物の下で待つ」と連絡が入っていた。

招待者の集合が少し遅れたせいか挙式のスタッフが慌てて挙式へ誘導する。

確かに私の周りの結婚式の規模としてはかなりの人を要していた。
この混雑や人の渋滞はスタッフの結婚式のスケジュールを狂わし、その笑顔の中にはきっと流れる滝のような汗が心臓の鼓動を早くしていたに違いない。

私は早く来てソファに座っていたにも関わらずあとから来る人来る人でごった返した控え室に飲み込まれ出席とご祝儀をその場で出せないまま挙式場に向かうこととなった。

挙式の時の新郎新婦の緊張感というのはとても新鮮で新郎新婦が段取りをどう間違えようと、声が変なトーンで出ようと天使のような微笑みで全て包み込む不思議な空間である。
(私が見てきた限り、「100%キマッた」みたいな挙式はみたことがないのでむしろこっちが本当の台本なんじゃないかと思っている)

そう考えると新郎新婦と神父とスタッフは演技派である。
我々をそこで微笑ませるコントを生み出している。
東京03か。

そんなこんなで挙式は微笑ましく終わり、披露宴へ移動する。
少しスタッフがあせあせしているのがどことなく伝わってくる。
テーブルに座ってスケジュールの紙を見ると段取りと現時刻に15〜20分のズレが生じていた。

披露宴の司会の方が式を進める。
乾杯の挨拶では新郎の友人がネタを仕込みつつ場を和ませる。
乾杯後にスタッフから「新郎新婦の写真をどうぞ」と言われ各テーブルの人が動いて高砂横に待機列を作るのであった。
私のテーブル、言わば大学のメンバーも様子を見てから行こうかという雰囲気になり出された料理を食べていると司会の方が

「今、ケーキ入刀用のケーキが運ばれてきました!!」

と唐突に言う。

おいおい!!まだ写真列終わってないぞ!!
これは段取り通りか!?それとも巻いてるのか!?俺は結婚式したことないからわからないけどなんか進行がYouTubeの1.5倍速みたいに見えるぞ!?

と思ってしまった。

新婦がお色直しの最中。

新郎の友人が新郎とわいわい騒いでいる。
私には到底できないテンションで酒を飲み大いに笑っている。

そこで私は自分がもし結婚したとしたらどうなるのか頭でシュミレーションした。

あぁいう楽しくわいわいできる友人は私の周りにいただろうか。側からみたらあぁいうのって冷めるのかな。いや、みんなが楽しい方が絶対に良いに決まってる。でも、どうだ限度があるだろう。
しかし、静か過ぎる結婚式よりはあぁやって盛り上がってる方がいいんだろうな。

とか当面見えない未来の不安と対峙しながらコースメニューを食べ、切り替えるかのようにコーヒーで流し込んだ。

披露宴は押しながらも無事に終わった。

次は二次会である。
二次会の会場はすぐ近くだった。
新郎新婦が登場するや否やビンゴ大会が行われた。

ビンゴたいかーい!!

1等は選べるペアチケットです!!

イェーイ!!フゥー!!

◯番!!◯番!!◯番!!◯番!!
リーチの方いますか!?

◯番!!◯番!!◯番!!◯番!!
リーチの方いますか!?

ハイ!!リーチデス!!

リーチの方いました!!いきますよ!!

◯番!!◯番!!

ビンゴー!!

さぁ箱からくじを引いてください!!

◯等!!

ウォー!!ワァー!!

これが繰り返される訳だが不思議と1等は中々でないのである。

私のビンゴカードも穴だらけになるが、リーチにならない。

ここで私は思った。
もし、ここでリーチ、ビンゴしてしまってくじを引いて1等を出した場合、ペアチケットをもらうことになる。その時に「誰と行くんですか?」と聞かれるかもしれない。フゥー!!フゥー!!なテンションのこの会場で何を答えることが正解か。
考えると不安になり、いっそのことビンゴカード当たっても挙手しないことが私の答えとなった。

という自意識過剰とは裏腹に別の方がビンゴし、最後の最後に残ったペアチケットをジャンケンで勝って手に入れたのである。

内心はホッとしている。

だが、私のビンゴカードは穴だらけだがリーチはない。

結局掠りもしていない。

誰かが私がいつか結婚しても。

私が「ビンゴ!!」
と言うことはないかもしれない。

結婚式の幸福感が私のビンゴ!!

そんな臭いセリフで終わらせたっていい。

この記事が参加している募集

夏の思い出

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?