[映画]嘘八百

 今夜のU-NEXTは『嘘八百』。2017年公開の邦画。中井貴一主演のコメディということで、わたしの大好物であります。

 『スティング』、『ディパーテッド』ときてこの『嘘八百』。騙し合い映画つながり。

 この作品は古美術商を主人公に、贋物、いわゆるニセモノを使った騙し合いを描くという、言わば詐欺合戦の映画だ。こういうのを見ると、古美術怖いなぁと思う。わたしなどあっという間に騙されるだろう。

 この作品で中心的に描かれるのは焼き物、陶芸なのだけれど、陶芸なんてわたしには本当にわからない。もちろん、この器が好きだなぁとかいうことはあるけれど、それは単に好きかどうかであって、なにがどう優れているのかもわからなければ、それが古いものなのか新しいものなのかもわからない。

 でも例えば、途中、贋作の器でカフェオレを飲むというエピソードがあって、ベージュの器にカフェオレを入れて「カフェオレが映えない」などと言っているシーンがあるのだけれど、それはとてもわかる。わたしはそういう意図でカフェオレ色のカフェオレボウルを選んでカフェオレを飲んだりしたことがあって、器と中身が溶け合って境界があいまいになる感じは好きだ。

 作中ではついにニセモノを自分たちで作るという一大プロジェクトがスタートするわけだが、作るものがデカい。利休が最後に使っていたという幻の茶器を作るというのだ。あるかどうかもわからないどころか、多分無いものをでっちあげる。そのでっちあげる茶器が緑色をしていて、「茶が映えない」わけだ。ちょっと前にカフェオレで「映えない」と言っていたのに、「茶が器と一つになって海原になる。利休は最後に海原を見たかったのではないか」みたいなテキトーなことを宣う。

 スペシャルな技術を持った職人が集まってニセモノをでっちあげ、中井貴一扮する主人公が出まかせを滔々としゃべって目利きを騙す。詐欺師感が見事すぎる。もちろんやっていることは詐欺以外のなにものでもないわけだが、中井貴一の詐欺っぷりはあまりにもハマっていて、「胡散臭い」の実例みたいなことになっている。

 ラストにももうひとドタバタあるのだが、笑いを取りながらもスッと「いい話」を落としてくる。このドタバタの中にときどき「いい話」を入れてくるその入り方が実に気持ちよく、爽快な後味を残す。

 こんな映画を見たあとは、ちょっと肉厚な茶碗でお茶なんぞ飲みたくなったり、しますね。

 

いただいたサポートはお茶代にしたり、他の人のサポートに回したりします。