[映画]スティング

 今夜のU-NEXT。1973年の作品、『スティング』。『カーズ/クロスロード』のところでポール・ニューマンの話が出てきたところからのポール・ニューマンつながり。

 この映画、痛快なんですねとにかく。裏世界の大物をハメるという話なのだけれど、その騙しっぷりのすごいことと言ったらない。

 大物のカネをそうとは知らずにかっぱらってしまい、命を狙われる。逃げて逃げ切れるもんでもないし、かといって戦って勝てる相手でもない。そうだ、ハメよう!

 ってならないだろ普通…。

 そんな具合に大物を騙す話になるのだけれど、これがちょっと想像を超えた騙し方だ。序盤、「まずは人を集めろ」という話になるのだけれど、200人や300人は集まるだろう、みたいな話をしている。

 え、桁間違ってない?

 数百人がかりで相手を騙す。ちょっとそのやり方は想像を超えている。しかも、散りばめられた細かいエピソードにも驚きが満載で、おっ、そんなことになるの?という驚きが何度もある。見事に練られた脚本だ。

 注目のポール・ニューマンはもう、スクリーンに登場する最初のシーンから最高だ。酔いつぶれてベッドと壁の隙間に落っこちて寝ている。スクリーンに登場する最初のシーンでこれだ。いろんなものを超越した存在感。

 ポール・ニューマン演じるヘンリーという人物がこの大掛かりな騙し作戦の首謀者だ。彼はいわば詐欺師なので、いくつもの顔を持つ。一芝居打つわけだ。いや、一芝居どころではない。始終芝居しっぱなしである。

 これだけでもだいぶややこしい。ポール・ニューマンはこのヘンリー・ゴンドルフという人物を演じているわけだが、そのヘンリーがまたショウという人物を演じている。素面のまま酔っぱらいを演じるヘンリーを演じるポール・ニューマン。

 なんというこの多層構造。ポール・ニューマンの名優っぷりが遺憾なく発揮されている。相棒役はロバート・レッドフォードで、もはや豪華とかそういう次元ではなく歴史的。ロバート・レッドフォードが演じているジョニーという人物は主人公だがいろいろ抜けていて、マヌケなことをしでかす。しかしそのマヌケぶり、どこまで素でどこまで芝居なのか。

 これ、二度目に見るとしたら今度は彼らがどういうポジションを演じているのかということを踏まえて見てみると面白いかもしれない。

 なおわたしは、彼らに騙される大物、ドイル・ロネガンを演じたロバート・ショウの芝居が好きだ。目だけで驚いたり怒ったりする。この作品はコメディに分類されることが多いけれど、これをコメディたらしめているのは間違いなくロネガンのキャラクタである。ロバート・ショウの芝居によってロネガンは愛すべき悪役となったのだ。

 張り巡らされた伏線を見事に着地させる脚本と、名優揃いで見応えのある芝居。映画の醍醐味がどっさり詰まった作品といえる。

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