見出し画像

【思い出エッセイ】数学で仲良くなった友人

高校では一生懸命に友達を作ろうと思った記憶が無い。

たとえ一生懸命友達を作ろうと思っていたとしても、自分の性格上多くの友達はできなかっただろう。

実際、高校時代において友人と呼べる関係の者はほんの数人であった。


そのうちの1人とは、ある数学の授業を通して仲良くなった。

その数学の授業というきっかけが無ければ、私と彼は全く仲良くはならなかったのでは無いかと思う。

そう思えるほど私と彼は性格が全く異なっていたのだ。


彼は基本的に誰とでも仲良くでき、場の調和を重んじ、対立を避け、どちらかといえばことなかれ主義の人物であった。


私は基本的にそういう人間は嫌いなはずである。

八方美人のように見えて気味が悪いし、何よりも信用ができないと思ってしまうからだ。


しかし、なんとも奇妙なことに彼とは高校卒業後も連絡をとる仲となった。

そんな彼と仲良くなったきっかけが数学の授業というわけである。


高校1年生の時に私は彼と同じクラスになった。

1年生当時、私の高校の数学の授業では1クラスをさらに2クラスにわけ、それぞれ別の教室で、別の先生が授業する方式をとっており、そこで私と彼は同じクラスに属することとなった。


一番最初の授業の席順は出席番号順であったが、その後すぐに席替えが行われ、そこで偶然私と彼は1番前の席で隣同士となった。

そして理由は不明だが、それ以降そのクラスは席替えが行われなかった。
つまり、私と彼は1年間お隣同士として過ごした。


私は入学早々に教科書を無くしたか、それとも教室移動時にいちいち教科書を持つのを面倒に思ったのか、理由は忘れたが毎回の授業で彼から数学の教科書を見せてもらっていた。

とんでもない迷惑人だが彼は毎回応じてくれていたと思う。流石ことなかれ主義者である。


一緒に授業を受けるうちに、彼はどうやら優等生タイプであるらしいということが分かってきた。

しっかり授業を受け、先生の話も真面目に聞いていた。

対する私は、授業を聞くのが苦手なタイプ(ちなみに授業は良い授業だったと思う)。
正直さっさと教科書読み進めたかった。


そういうわけで私は授業を聞くのを早々にやめ、(友人の)教科書を読み進めて問題を解くことにしていた。

しばらくして、1人でやるのもいいがどうせなら誰かと問題を解いたほうが面白いと思い、私は彼に「この問題やろうよ」と問題演習の誘いをするようになった。


真面目に授業を受けている人間の邪魔しかしていないわけであるが、彼はその誘いにも(恐らく最初は嫌々)のった。

それからというもの、その数学の授業では彼と共に教科書に載っている問題を解くというのが常になった。

分からない問題を教え合ったりしてどんどん教科書を先に進めた。


一番前の席で喋りながら一緒に問題を解いていたわけだが、先生からは特に何も言われなかった。

先生自身、我々が授業も聞かずに喋っているのは当然分かっているわけであるが、数学の問題を解き進めているということで大目に見てくれていたのであろう。


最初は、彼とは殆どその数学の授業のみで話す程度だったと思うが、毎授業で一緒に問題を解いていれば勝手に仲良くなっていくもの。

その数学の授業以外でも一緒に数学の問題を解いたりしていた。


たまに難関大の過去問にチャレンジしたりしていたが、クラスには他にも数学好きの生徒が何人かいたので数人で同じ問題を考えたりすることもあった。

彼ら愉快な仲間たちのおかげで高校1年生は楽しく終えた。


高校2年生になる頃には文理選択により、私は理系に、彼は文系に進みクラスは分かれた。

たまに文系クラスに遊びに行くと、彼は数学の問題を解いていることがしばしばあり、大抵私を見るに「はい、これ解いて」と計算用紙を渡してきた。

その時も一緒に問題を考えた。


このように、1年の時ほど頻繁に話すわけではないにしろ、卒業まで、さらには卒業後も関係は続くことになる。


私と彼の性格上、高校1年生のときの数学の授業で偶然隣同士になっていなかったら、その後にまで関係が続くほど仲良くはなっていなかっただろう。


席替えの結果というただの偶然が今にまで影響を与えている。

こういった出会いの可能性がそこらへんに転がっていると思うと、自分の内向的・閉鎖的な性格は損を産んでいるのだろうなと思わずにはいられないのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?