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「君たちはどう生きるか」感想 ~夢分析的考察編~

以前に『君たちはどう生きるか』を早速観て書いた感想を上げました。

そこでこれは夢分析的な読み方をした方が良いタイプの作品みたいに書いたので・・・ちゃんとそっちの思考で考えた感想と考察を書こうと思いました。(あと、先日2回目の視聴にも行ってきました)

高尚な感想・・・とまで言って良いかわかりませんが、割と読み応えある内容になってるんじゃないか?と思います。

※趣味で内容に関係したタロットカードの絵も当てていきます。各項目に対して他に妥当なカードもあるかもしれませんが、とりあえず当ててみたものとして読んでください。






夢分析的考察編

【母】

「夢分析的な考察」ということで、とりあえず抽象度を極端に上げて解釈してみよう。

まず、映画のストーリーでは「マヒトは母を失った」展開になっているが、これは見た目通り「マヒトは母を失った」ことを表現しているのではない。

マヒトは宮崎駿が思う理想の(男の)人間像であり、人間の象徴ともいえるかもしれない。それから、母は「母性」の象徴である。
つまり、「母を失ったマヒト」は「母性を失った人間」の象徴だと言えるのである。

そして、父は頼れる人で、父が新たに好きになった女性「ナツコ」が新たなお母さんとなる。これは「新しい母性」の象徴ということになるだろう。
マサトはそれを好きになろうとはしたいが、まだすぐには馴染めなかった。相変わらず旧来の「母」が恋しいのがマサトだった。

「母」は謎につつまれた「塔」にいることが分かった。
また、ナツコも何故かそこに行くようになった。

母とナツコのためにマサトは「塔」に挑んでいく・・・

【塔】

では「塔」とは何なのか?
その中にあるのは「死者の住む世界」であり「生まれる前の世界」でもあった。『千と千尋の神隠し』にあった世界のイメージとも被り、まるで神々の住まう不思議な異世界のようでもあった。
大叔父が建てた「塔」はその門のようになっていて、「マヒトの大叔父が塔を建てた」というシナリオになっているが、これも「マヒトの大叔父が塔を建てた」ことの表現ではない。
一つの解釈としてあり得るのは・・・大叔父は「祖先」の象徴なのである。そのため、「マヒトの大叔父が塔を建てた」ことは、「人間の祖先が塔を建てた」ことになる。
そして、その塔は宇宙からの隕石が元になってできていたので、「人間の祖先が宇宙からの渡来物を元に作ったもの」の象徴が「塔」である。

塔は宇宙からの飛来物であり、その世界の中で何故か人間が生まれる前の仕組みまで持っていたようだったし、死者が住まう場所でもあった。
もしそこが地球上にあるすべての世界の機能を司っていた場合、大叔父の統括する世界が崩壊したら、人間が生まれることが一切なくなってしまうが、実際はそんなことはない。
あれはあの世の仕組みのうちの一つで、大叔父が統括してた世界の他にも、あの世界みたいな場所が色々とあるのだろう。
塔の世界の中にいたマヒトの母が「塔はあちこちにある」みたいなことを言っていたので、実はあちこちにあるって解釈は合っていそうである。

大叔父は塔の中に動物を入れたりと、色々と手を加えて世界を作っているらしい。そのため、その内容は管理人である主によって変わるのだろう。
 

さて、そういえば「塔」といったらあのカール・G・ユングがなんか作ってたな・・・
・・・と思って調べたら、やはり「石の塔」というものを作っていた。

塔というより大きめな家ぐらいなサイズだけど・・・
ユングはこれは「塔」と呼んでいる。

1922年。深層心理学者として学問的研究を続けつつも、無意識と向き合う日々を過ごしていたユングは・・・何か自分の中に眠るものを石の塔として表現しなければならない・・・そしてそこを自分が理想とする安息の場所としたい・・・そんな衝動にかられて動き出したらしい。
それは母の死後から二ヵ月ぐらいたった時期でもあった。

スイスのボーリンゲンのあたりにちょうど良い場所を見つけたので、ユングはそこに住める家を作ることにした。もちろんユングは精神科医のような仕事をする心理学者であり、大工や建築家ではない。学者の立場で住める家を自身の手で作るのはものすごいことであるが・・・建築遊びが好きな性分であったユングは石工のギルド入りし、石の割り方やレンガ積み工の技術を習って作ったらしい・・・。そして最初の完成品が出来上がった。
そこから何か物足りなさを感じて増築し・・まだ原始的すぎると思ったから増築し・・・瞑想部屋が欲しくて増築し・・・開廊が欲しくて増築し・・・中央部分の建物が自身にとって重要だと思って増築し・・・
そんな感じで、最終的に妻が亡くなった後の老年期で最終的な完成版ができあがったらしい。

ユングの作った「石の塔」は様々な意味を持つものと考えられている。
それはユング自身の内面を表すものであり、個性化のため創造するべきだったものであり、別荘であり、インドの家屋を参考にした瞑想部屋でもあった。また、ユングにとってのそれはとにかく特別なものであり、母の胎内、あるいは母の像とも思えたとも、自身の出した『ユング自伝』に書かれている。

ユングの「石の塔」は、それにまつわるエピソードは聞けば聞くほど感慨深くなってくるものであり・・・宮崎駿の『君たちはどう生きるか』の元ネタはこれなんじゃないか?と思うぐらいやっていることがシンクロしている。

【石】

あの世界には所々に「石」が出てきた。

まず大元となるのは空から降ってきた隕石である。これは物語の終盤で大叔父からその本体らしきものを見せて、大叔父はこれによってこの世界を作ったと語った。

「石」は「意志」を持っているらしく、世界を形作っているため偏在している。ナツコのいた産屋には特にそれが充満していて、歓迎していない主人公たちを火花で威嚇していた。大叔父の部屋の入り口辺りにもそんな場所があった。

あと、大叔父が世界を作るために立てた、積み木のような「白い石」がある。これも謎の多い石だが、これが世界の心臓部分みたいになっていて、世界全体を形作るための根幹として存在している。
また、マヒトは大叔父が持っていた白い石を見て「それは墓石と同じ素材です。悪意を感じます。」と言った。
(あれもどういう意味なのか謎が深い)

それから、大叔父が世界中を探して苦労して見つけた「悪意を持たない純粋な白い石」もあった。数は全部で13あり、大叔父はそれを使ってより平和で豊かな世界を作ることをマヒトに要求する。通常よりも強く純粋な世界を作る力を持っているようである。

大元の隕石の石、悪意があるかもしれない普通の白い石、悪意を持たない純粋な白い石・・・

これらがそれぞれ何を意味するかは・・・よく分からないが・・・
宇宙の意志か何かなんだろうか?

【アオサギ】

そしてアオサギについて。これはもちろん最重要である。
映画の広告に唯一出ているキーキャラクターであり、その中身は宮崎駿作品でよく出てくるトリックスター系のキャラクターだった。
『もののけ姫』のジコ坊、『風と谷のナウシカ』のクロトワ、『天空の城ラピュタ』の盗賊達やドーラなどに近いキャラである。

「トリックスター」はユング心理学における元型(アーキタイプ)の一つで、利己的で敵か味方かが分かりずらく、どっちの味方にもつかなそうな感じでトラブルを起こしながらも、新しい道を切り開く役割を持っている存在である。

そしてアニマンダラ先生によると、アオサギには神聖な意味があるらしい。

ネイティブアメリカンの
メディスンアニマルでは
暗い水中 (無意識•死の世界•深淵)に深く潜り
魚(隠れた才能•宝)を獲ることから
無意識の開拓と“内省”による
才能開花と精神の再生を暗示します。

・・・とのことである。

映画に出てきたアオサギはだいぶ神聖なイメージとはかけ離れた感じではあったけど、実際のアオサギは食べ物は何でも丸呑みで、獰猛で狡猾そうでもあるので、むしろあんな感じの方がしっくり来るのでは?

マヒトにとってのアオサギは「異世界の住人」であり「異世界への導き手」であり「異世界で行動を共にする相棒」ということで良いだろう。
そして最後の「トモダチ」というのも感慨深い。

・・・ポケモントレーナーのサトシにとってのピカチュウみたいな感じ?
・・・さすがにポケモンとは大分イメージが違うけど・・・本物の異世界に必要な相棒はあんな感じなのだと思う。

【ペリカン】

ペリカンについて。
塔の世界でのペリカンは、ワラワラ(白くて可愛い奴)を食べる謎の捕食者だった。現実世界でもなんでも食べる習性を持った鳥である。

塔の世界のペリカンの出自は、大叔父によって連れ込まれたやつが繁殖したらしい。海には魚がほとんどいない世界なので一族が生き残るためにはワラワラを食べるしかないということで生存本能で捕食していて、自分達が住んでいる海のことを「地獄みたいな世界」と言っていた。
ワラワラを食べるためにわざわざ連れてこられたということで、意味のある役割を持っていた?と思われる。

これもまた何かの象徴なんだろうか?
宇宙にはそんな宇宙人もいるみたいな?

【インコ】

インコについて。
国家のような集団を形成している一族であり、これも大叔父によって連れ込まれたやつが繁殖して増えて、あんな感じの文明を持つ生き物になったらしい。
大叔父のいる場所の近くには大元である動物のインコが生息している森(庭?)があって、塔の世界でしゃべるインコ達はそれを見て「ご先祖様だ」と言っていた。

わりと野蛮な性格で大量にいるけど、あんまり頭は良くなさそうである。
インコのリーダーである大王がいて、皆それを慕って生活をしている。
その生活ぶりはまるで中世ヨーロッパのよう?

これが何を象徴しているのかを考えると、まるで君主が支配していた時代の国家のようである。西洋だとキリスト教に支えられていた国王崇拝、中国だと天子崇拝、日本だと天皇崇拝を好む一派みたいなものなのだろうか?
それらは崩壊寸前の古い思想となったため、塔の中ぐらいしか居場所がなかった。そして最終的に大王の自尊心とミスで世界が崩壊してしまった。
インコ達はそんな魂の表現なんだろうか?

【キリコ】

物語のキーパーソン、キリコについて。
現実世界にいる7人のお婆ちゃんのうちの一人で、マヒトについていって塔の世界の中に入ったと思いきや、何故か若い姿で出てきた謎が多い人物である。あれはなんだったのだろうか?

そもそもあのお婆ちゃんたちはあんまり人間っぽくない。全部で7人いたんだけどどういうことだろうか?
大叔父や母の一族ではないけど、眷族みたいなものだったりするのだろうか? だから「マヒトを守っている」みたいな感じのことを言われていた。
塔の世界でキリコが出てきたのと、現実世界のキリコが入り込んだことに関係はあるのだろうか?
塔の世界には実は他の眷族もいるけど、現実世界のキリコが入り込んだことで、塔の世界のキリコとだけ縁ができたとか?

・・・といった考察もできたけど、やはりキリコだけが特別だったような気もする。

塔の世界のキリコは「俺はずっとこの世界に住んでる」と証言していた。
本当にずっと住んでるということで外の世界から来たわけではないということで正しいのだろうか?

しかし、最後のシーンでキリコはマヒトの母と同じ扉で外に出た。これは現実世界に行くことを意味している。
塔の世界で生まれ育ったのに外に出るようになった存在ということになるのか?

一方でマヒトの母は現実で生きている途中で神隠しのように塔の世界に入った人物だった。塔の中は時間の概念がなくて長期滞在しているようだったが、物語の最後でまた元に戻った解釈でOKだろうか?
それとも、あの最後の扉は実は現実世界で新たに生まれるための扉だったりするのだろうか?

あと、塔の世界のキリコは何故か人形のキリコを持っていて、そこで渡された人形のキリコは元の世界に戻ったら現実のキリコになった。
あの人形のキリコは何で、塔の世界のキリコは何故それを持っていたのだろうか?

うーん・・・流石に分からなくなってきた(笑)

【ヒミ】

「母」とは別に塔の世界で若い時の母として表れた人物「ヒミ」について考察しておこう。
・・・というか自分は完全に作中で「姫」って聞こえてたので「姫」と思ってたけど・・・調べたら「ヒミ」という名前だったらしい。
何故かマヒトの実の母親の名前である「ヒサコ」とは違う名前がついている。

ヒミと付随してキーとなる概念は・・・「火」だった。

先ほど、「母」は「母性」の象徴であるので、「母の喪失」は「失われた母性」の象徴みたいなことを解釈として書いたが・・・
ヒミが「火」を扱うことに関しては「母性」とは逸脱した表現である。

「火」は創造と破壊を司るものであり、むしろこれは男性性の象徴のようなエネルギーを持った存在である。
つまり、ヒミはただの女性性や母性の象徴とは言い難く、それとはまた次元の違う創造のエネルギーを持っているような…
強くて気高い「火を扱う女神」のような位の存在だと言えるだろう。

そもそも「ヒミ」という名前がもう人間離れしている。「火巫」と書くのか「卑弥」と書くのか分からないが・・・ほとんど神様の名前である。

つまり、マヒトは「母」を求めて塔の世界に挑んだが、そこでより力強い「炎の女神」と出会うことになった・・・という筋書きになるわけである。

これは、母性よりももっと創造的な女神との出会いを象徴するものとなるだろう。

【マヒト】

本作の主人公、マヒトについて。
作者の宮崎駿自身が投影されていそうな主人公であり、人間の象徴みたいなものでもあるわけだが、どちらかというと富裕層生まれの坊ちゃんでもある。
坊ちゃんであるが、ナイフを器用に扱い戦うための道具を作るなど、なかなかワイルドな一面も見せる。
(これは宮崎駿自身の生まれた時代や、幼少期の境遇を表すものとしても重要である)

ちなみに、キリコはマヒトの名前を聞いて…
「マコト(眞)のヒト(人)か!どおりで死のにおいがプンプンするな!」
と言っていた。あれもなんとも深みのこもった台詞だったが・・・

自分(Raimu)がこの主人公を終始みてて思ったのは・・・
ASDっぽさがある・・・な・・・と思った。あるよね? うん。
「アスペルガー症候群」とも言われているアレである。
とはいえこれは「かなり社会適応ができるタイプのASD」って感じであり・・・ASDの度合いが微量かつ絶妙で、ASDの中だとかなり奇跡的なぐらい優秀な人間である。

だから自分も個人的には共感度が高かった。

そして、マヒトは宮崎駿自身の投影とも思われる主人公なので・・・これは宮崎駿自身のASDの度合いを表しているとも解釈できるだろうと思う。
あと、前作の『風立ちぬ』の主人公もそんな感じだったので、それを踏襲していそうなのもある。

昔はこういうASDタイプの人間は、戦前にあった「男は男らしく」の日本男児モデルにハマって真面目な性格になってなんとか上手くやっていくこもあったのかもしれない。しかし、現代ではそうしたことがほとんど無くなった。
だから、宮崎駿自身が個人的にそれを懐かしがってああいうキャラができているのかもしれない。

【父】

マヒトの父親は裕福な生活ができるぐらい稼げる役職の人物であり、非常に優秀そうで頼れるお父さんだった。
声は木村拓哉が演じているらしいけど全然分からなかった。役に合ってて凛々しくて立派としか言いようがない。

お父さんに関しては・・・特に言うことなし!
たぶん宮崎駿自身が本当に良いお父さんに恵まれた人なんだと思う。

時代背景

主人公のマヒトは「人間の象徴」としたが、あるいはこうも解釈できるか?
『君たちはどう生きるか』の舞台となった時代がそもそも戦中の時期だった。日本が欧米化して資本主義が本格化する手前の時代である。
そのため、マヒトは現代人としての人間の象徴というより、少し昔の日本人の象徴かもしれない?
これから起きるのは旧来的な「母性」が失われて、資本主義的な混沌が到来する時代であり、古い世界が崩壊した後で「君たちはどう生きるか」という意味があの作品のタイトルにあるのだろうか?

ちなみに、宮崎駿の生まれは1941年であり、映画の舞台の時期は「戦争の二年後に母さんが亡くなって、四年後に父さんに連れられて疎開した」と言われていた。第二次世界大戦の開始が1939年で、日本も参戦した太平洋戦争の開始が1941年なので、どっちを指しているのか分かりにくいが・・・
終戦後のマヒト達一家の様子から判断するに、たぶん1943年あたりの出来事だったと推測できる。

マヒトは中学二年生と仮定するとその生まれは約1930年あたりと推測ができて、それから物語の直後にナツコの子供が生まれる。そうなるとその子供は宮崎駿とほとんど近い年に生まれた人物?ということになる。
マヒトは宮崎駿自身が投影された主人公だが、架空の兄みたいなものなのだろうか?

宮崎駿の境遇

さて、ここで宮崎駿の境遇についてちゃんと見てみよう。
Wikipediaに書いてあるぐらいの情報でもかなり主要なことが分かる。

生まれは1941年1月5日。太平洋戦争の開始の年であり、第二次世界大戦の真っ最中である。4歳の時に1945年で戦争が終結する。その後は戦争直後の時代を過ごしている境遇である。
普通だったらあの辺の時代は食べるものを確保することすら大変で、みんなお腹を空かすことが多い印象があるが・・・宮崎駿の場合は父親や叔父が大きな航空機製作所の役員をしている一族だったので、戦争付近の時期だったにも関わらずとても裕福だったらしい。だから宮崎駿の作品にも富裕層の光景みたいなものがよく表れるのだと納得できる。
実際に貧困な生まれで大変だった人に対しては他人事の立場であるのが事実である。したがって、アオサギみたいにスラム出身のようなズル賢さを持つ者は宮崎駿にとっての「他者」にあたるだろう。

たぶん父親は経済的に優秀な上に、性格・人格的にもそこまで問題のない人物だったと推察できる。
作家の人生にそういうのがあったら普通は作品に父親・父性への憎悪みたいなのが表れるが、宮崎駿作品にはそういうのがほとんどない。むしろ、父親が優秀であれば人生は安泰のような世界観ですらあると思う。
フロイト的に言うとこういうのは「オイディプス・コンプレックスの不在」と解釈される。

しかし、母親は1947年に結核を発症し、以後9年間にわたり寝たきりの状態になったらしい・・・。宮崎駿が6歳の時からそうなってしまったということである。
これは作品にも如実に表れていそうで・・・これまでの宮崎駿作品でその影響っぽいものもちょくちょく心当たりがある。作品内で実際に結核が登場してるものもあるが・・・それよりも、母性への喪失感からくる渇望みたいなものが作品にうっすらと出ている。

父性への信頼感と、母性への喪失感に関することは、今回の『君たちはどう生きるか』にも如実に表れている。
こういう作品は宮崎駿個人の人生と、時代に必要な精神がシンクロしたりして、映画として形になったりする。

そして、宮崎駿ほどの天才作家は、ほとんどチャネリングをしていると言っても良いだろう。
だいたいチャネリングの元となる存在は、人間達を通じてメッセージを発信したがっている。その存在は古の神々なのか未知の宇宙人なのかは分からないが・・・なにかしらの存在が宮崎駿を通じてメッセージを降ろそうとしていても、別におかしくはない。

とくに『風の谷のナウシカ』の漫画版とかは一番すごいことになっている。
映画版はポピュラーな所をストーリーにして映画に収めただけだが、漫画版は映画版にない設定や種族があったりするし、後半や終盤とかになるともっとすごいことになり、なにかとてつもなく得体の知れないものまでを描いて
いる内容である。

チャネリングというものは大体、個人の体験に基づくビジョンと、完全な異世界からのビジョンが混ざってやってくるものである。
どの部分がソレで、どの部分がアレなのか? 
念入りに考察すると見えてくるものがあるかもしれない。

映画『君たちはどう生きるか』も宇宙から受け取った壮大なメッセージの可能性もあるが・・・

あるいは、宮崎駿の個人的なものかもしれない。

色々と考察したが、ユングの「石の塔」のように、人生の末期に自分が作りたいものを作ったに過ぎないのだろうか?

戦中に生まれた割には父親は経済的に優秀な一族で、頼れる父親の元であまり不自由なく暮らしていた。しかし、6歳の時に母親が結核を発症し、そこから母性への喪失感に悩まされるようになった。
運動は割とできなかったためそちら方面でも悩んだが、絵が抜群に上手かった。幼少期は田舎へ疎開してたこともあり、昭和初期の時代特有の自然体験と、富裕層特有の教養や自由さを合わせ持っていたため、自然由来の強さを身につけつつ、自身の精神世界へ存分に潜ることができる環境だった。そうした中で、母性への喪失感を自身の創作能力で埋めようとするのは必然的な道だった。
そして自身の精神世界の中は非常に広大であり、そこで出会ったのがアオサギのような存在だったり、キリコのような存在だったり、ヒミのような存在だったりした。それらは自身の作品でも必要不可欠なものにもなり、そうして出来上がった作品は多くの人を魅了した。
しかし、創作がすべてではなく、それらは虚構を生む存在でもある。そうした世界に別れは付きものであり、現実を進むことも大事である・・・
そんな人生の中、自身が「どう生きるか」を考え続けたことから、「君たちはどう生きるか」を問う作品を作りたかった・・・

そんな感じなのではないだろうか?






以上。

色々と長々と考察を書いていきましたが・・・

そんな感じで、作品に対して「どう解釈するかは自由」なのが、作品鑑賞の醍醐味なので、各々が好きなように捉えて楽しめば良いと思います!

 

余談1 ぬまがさワタリ氏による濃厚レビュー

生き物を面白おかしく解説するのが趣味のぬまがさワタリ氏が『君たちはどう生きるか』をレビューしてました。
その内容がすごく深いとこまで書かれていて、めちゃくちゃ読み応えあるので良いです。長文レビューを読みたい方は読んでみると良いでしょう。

余談2 「失われたものたちの本」という作品

先の記事でぬまがさワタリ氏が紹介してて知りました。
アイルランド出身の作家、ジョン・コナリーによる『失われたものたちの本』という作品があって、これが元ネタではないか?と書かれています。この書籍の刊行の際に宮崎駿が「ぼくをしあわせにしてくれた本です。」と帯コメントを書いたこともあるらしく、ファンであることは間違いないです。

以下、Amazonに書かれているあらすじです。

第二次世界大戦下のイギリス。本を愛する12歳のデイヴィッドは、母親を病気で亡くしてしまう。孤独に苛まれた彼はいつしか本の囁きを聞くようになったり、不思議な王国の幻を見たりしはじめる。ある日、死んだはずの母の声に導かれて、その王国に迷い込んでしまう。狼に恋した赤ずきんが産んだ人狼、醜い白雪姫、子どもをさらうねじくれ男……。そこはおとぎ話の登場人物や神話の怪物たちが蠢く、美しくも残酷な物語の世界だった。デイヴィッドは元の世界に戻るため、『失われたものたちの本』を探す旅に出るが……。本にまつわる異世界冒険譚!

これは・・・ドンピシャ感がすごい!
宮崎駿版『君たちはどう生きるか』の元ネタは吉野源三郎版『君たちはどう生きるか』ではなく、『失われたものたちの本』だった?

自分は内容を読んではいませんが、気になる人はチェックしてみては?

余談3 感想記事いろいろ

noteでは映画の感想を書いている人がいっぱいいて、『君たちはどう生きるか』に関しても面白い記事があるので、いくつかピックアップします。
 

↓「ユング心理学・箱庭療法から考察する」ということで、宮崎駿の個人的なものの分析とか、象徴的なものの考察とかをやってる記事。

 
↓2回観たらしい人の記事。
強いメッセージを感じたらしくて好意的な感想だった。

 
↓いいね数がトップだった記事。7000以上だと・・・!?
読み応えある文章で、特にアニメ作りに関して触れていた。

 
↓これまた文章の上手そうな人の考察。
夢分析的な読み方がなかなか的確って感じがあって良かった。

 
↓自分がちょっと触れた宮崎駿の両親についてちゃんと調べられていた記事。ありがたい。父親についても結構いろいろと書いてあったが・・・はたして良い父親なのか?な感じはあったけどなるほどって感じでもあった。

余談3 山田玲司さんの考察

山田玲司氏の『君たちはどう生きるか』評が・・・
相変わらずめちゃくちゃ良かったのでオススメです。
宮崎駿の境遇とか心境とかをよく調べつくされているし、この記事で考察した所と被っている所もある。

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