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どこかの神様に見放されたときのお話し

誤解のないように言っておくが
自分では何か変なオーラを出しているつもりは一切ない
自然にでているのかどうかは よくわからない
出てたらごめんねとしか言いようがない

もう20年以上前の私が妊婦さんだった時代の話
もう臨月だという時期に
私は「妊娠中毒症」という病気になった
予定日まであと3週間ぐらいで
体重が増えすぎないようにマタニティビクスに行ったり
味しねーじゃんというような塩分制限の食事をして
気を付けていたのに
赤さんが成長するスピードには勝てず
生まれる前にのんびりしょーと思っていた矢先に
「今から入院ね。家に戻らないで、入院して。入院セットは
ご家族に持ってきてもらって」
と言われ 急に入院することになった
結局出産まで入院しそのまま赤子と帰ることになる

急な入院だったため
最初の部屋は2人部屋だったのだけれども
隣のベットの妊婦さんがかなりのクレージーっぷりで
場末のスナックのママみたいな風貌
点滴しながら煙草を吸う
夜中にぎやぁぁぁぁと叫ぶなどの奇行があり
泣きながら看護師さんに頼みこんで大部屋に変えてもらった

そしてその大部屋で私はどこかの神様に見捨てられたのだ

大部屋は6人部屋だった
婦人科病棟だったため 妊婦ではない婦人科の病気の人もいて
今考えれば、酷な部屋だったなと思う

6人部屋には、もうすでに4人が入院していて
私が入って5人になった
私のお隣のAさんはすごくいい人で優しくて
お腹の大きい私にとても良くしてくれた
向かい側の3人は今の私ぐらいだったか
マダムたちで
あまり会話もしていないのでよく覚えていない
私は初めての出産の不安と味のしない食事と
ツンデレの担当医にむすむすしながら入院生活を送っていた

Aさんは私より7歳ぐらい上で
ほんわかなタイプで旦那さんがよくお見舞いにきていて
仲良しだった
子供をかなり欲しがっていたけれど
Aさんは婦人科系の病気を持っていて
子供を諦めないといけないと思うと私に話してくれた

そんな心境の中で
妊婦の私にとても親切にしてくれたのだ

最初はわからなかったけど
入院しているうちに
私がトイレから帰ってくると
Aさんの周りにマダム3名が集まっていることを
目にすることが多くなってきた

最初は皆仲が良いんだな~ぐらいにしか思ってなかったけど
私が帰ってくるとてんでバラバラに解散するので
あ”わしの悪口かい?と思っていた

そんなことが何回か続き
たまたまマダム達が検査だったり、診察だったりで不在で
病室に私とAさんだけの時があった
いつものようにほんわかAさんと話していて
何気なく
「あ、Aさんはマダム達と仲良いですよね?」と聞いたら
Aさんは困った顔して
「んー仲良くはないんだよ。誘われているんだ」
と小さい声で言った
「え?何?サークル?」
アホな私は無邪気に聞いた
「ううん、ほら、ね、神様」
ああ!勧誘されてたのか!
「私、病気繰り返してるからさ」
ぼそぼそ話すAさんを見て
何だか無性にマダム達に腹が立ち
弱みにつけこんでんじゃねーぞとイライラしてきた
「自由だけど、嫌なら断った方がいいですよ」
とAさんに話した
するとAさんが頷きながら
「らいまるちゃんは誘われない?」
と聞いてきたので
「全然ですね。近づいてもこないしあんまり話してもないです」
「今度聞いてみようかな、なんでらいまるちゃんに声かけないのか」

え、なんで?聞く?

別に聞かなくてもいいけどと思ったが
ま、聞かれるぐらいいいかと思い
もうその話すら忘れて
看護師さんに担当医の愚痴を言ったり
忍者のように隠れて売店に行って怒られたり
切迫で入った6人目の妊婦さんとAさんと3人で楽しく過ごした

出産予定日が過ぎたあたり
マダム達が次々と退院し
ある日 Aさんが
「あのね、あの人達にさ、なんでらいまるちゃんを誘わないんですか?って聞いたの」
「お!?なんて言ってました?」
と私は聞いた
Aさんは少し言いにくそうに
「んと、んと、あの人は

「邪悪だから」

って」

フォ!!??

意外な言葉に変な声が出た

6人目の妊婦さんはそれを聞いて腹を抱えて爆笑している

邪悪・・・・(遠い目)

私は邪悪・・・・(遠い目)

一応妊婦さんなんだぜ
電車で席譲ってもらえる妊婦さんなんだぜ
一般的には清らかなイメージなんだぜ

私は遠い目をしたまま
「そっか 確かに」とAさんに答えた

あれから20年 Aさんは元気にしているだろうか
もしかして あれはAさんのいじわるだったのかなぁ



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