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【映画】変人と天才は紙一重【イミテーションゲーム/エニグマと天才数学者の秘密】

馬鹿と天才は紙一重。よく聞くこの言葉ですが、個人的なニュアンスとして馬鹿=変人、変わり者というイメージの方が強いんですよね。“馬鹿”の言葉だけを聞いてしまうと、どうしても頭が悪い人みたいなイメージが強くなってしまう。だから自分としては、“馬鹿”ではなく“変人”や“狂人”と天才は紙一重、の方がしっくりきます。

さて、なぜこんな話をしたかと言うと、今回紹介する映画「イミテーションゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」に出てくる主人公アラン・チューリングは、まさに変人であり天才でもある人物でした。

同性愛者の顔と天才数学者の顔を持つチューリング。そんな両方の顔を持つ人物なのですが、実はこの方、自分はその辺の見識が薄くて知りませんでしたが、コンビューターの基礎を作った人物と言われています。

そうです。この映画は実話を基にした作品なのです。第二次世界大戦下のイギリスで、ヒトラーを率いるドイツ軍との戦いに終止符を打った一人の男の物語。今回はそんな作品を紹介していきます。

■変人、狂人は、何事にも努力を続けられるから天才になれる

本作は、実在したイギリス人の天才数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)を主人公に、第二次世界大戦中にドイツ軍の暗号“エニグマ”を解読するために奮闘する人々のドラマを描いている。

チューリングは天才数学者だった。ただ、数学的には異彩を放つ天才ではあったが、周りと違うことが好きな彼は人との付き合いが上手いわけではなかった。そのためエニグマの解読を担うプロジェクトメンバーの面々と、チームで行動しなければいけないことに苦労を重ねることとなる。結果、一人でいろいろと動くものだから、周りのメンバーからは呆れられてしまう。

会社に例えてみるとわかりやすい。同じプロジェクトの一員なのだけど、自分は頭がいいからと規律を乱して一人で行動に移してしまう。そこで成果が出るならまだしも、出ないなら周りから悪態をつかれてしまうのも無理はないだろう。

それでもチューリングは諦める男ではなかった。彼は、わざと彼らと接しないわけではなく、人付き合いがわからないだけ。その方法を教えてくれる人物さえいれば、チームワークが大事なことはわかっているのだ。

一人の女性と出会い、周りとの関係性を修復していき、成果が出なくても自分の頭の中に出来上がっているものを完成させようと努力を続けた。その甲斐もあってエニグマを解読する機械、現代の人工知能の末端のようなものを作り上げる。出来上がる頃には周りのメンバーも、彼が一途に何かを成し遂げようとしている思いに突き動かされていたのだった。

「時として誰も想像しないような人物が想像できない偉業を成し遂げる」

作品の中でチューリングが発した言葉に深さを感じた。

誤解してはいけないのは、変人だからOKという話ではない。忘れてはいけないのは、それを成し遂げるには努力を続ける必要があるということ。新しい時代を切り開いてきた人々は、必ずしも世間とうまく付き合ってきた人物ばかりではない。変人も多かったと聞く。ただ、彼らはみな大きな夢を抱き、努力を続けた。だからこそ何かを成し遂げることができたのだ。

あなたが、あなたの隣にいる人が何かすごい偉業を達成するかもしれない。それが変わり者であっても、だ。誰にだって可能性はあるのだから、どんな人でもまずは理解する努力をしないといけない。そう伝えているような気がした。

■時代背景が物語るマイノリティーであるがゆえの苦しみ

もう一つ記したいことがある。それはチューリングが同性愛者であるがゆえに難しい立場にあったことだ。

当時のイギリスは、同性愛者を迫害する思想を持っていた。そのためエニグマを解読する機械を作って対独戦争に終止符を打ち、後にコンピューターの基礎を作った人物ではあるが、世間一般の前で称賛されることはなかった。(チューリングの生誕100年あたりから、業績を正当に評価しようとする動きが本格化したため本作が製作されたとのこと)

マイノリティーであることは罪なのか。人とは違う思想を持ち、人とは違う感性を持つ。現代では、そういう人物はしっかりと認められない限り批判されることが多い。それがもし正解であっても、「大多数の人はそう思わないから、あなたは間違っている」なんて発言が正当化されてしまう。SNS一つとっても、マイノリティーであるがゆえの苦労を抱えている人は多いだろう。

チューリングは最終的に自分で死ぬことを選んだとされる。もし彼が生きていたなら、現代のコンピューターはもっと違った形になっていた可能性もある。「マイノリティーは罪である」としてしまったがために、いろいろなものが失われてきたことを忘れてはならない。

何が正解か、何が不正解か。そうやって分類してしまうのではなく、その人を理解することから始める。彼の生涯を知ることで、多種多様な現代だからこそ、改めていろいろと考えるべきだと言われた気がした。

■編集後記

想像以上に興味深い作品でした。

本当はもっと言いたいことがあります。エニグマ解読の機械の名前をあれにしたのは、人工知能を宿したあの人を生き返らせたかったからだろうなとか。「神じゃないのに生死の決定はできない」と言ったところとかとか。結構、語りがいのある作品だったなと思いますね。

エニグマの機械ができた時のゾワゾワっとした感じ、そしてそこからの流れ。主演のベネディクト・カンバーバッチさんの演技を含めて、素晴らしい映画だったと思います。気になった方は是非一度見ることをお勧めします。

では、今回はこの辺で。


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