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灰色の中学生③

修学旅行の災難

3年生の春、奈良京都に2泊3日で修学旅行に行きました。
1日目は法隆寺を見て、東大寺から奈良公園を班別で歩いて回りました。
2日目は京都に移動し、三十三間堂を見た後、班別で東山を歩いて見学して回りました。

この2日目の班別散策が最悪でした。
三十三間堂から清水寺を見て、八坂神社や知恩院、平安神宮などまで、地図を見ながら生徒だけで歩いて回り、最終的には錦市場近くの旅館まで行かなければなりませんでした。

これが思いのほかハードで、距離はあるし、道に迷うし、坂はあるし、暑いし、八坂神社を超えたあたりですでにみんな疲れてしまい、だんだんイライラしてきました。
前日の奈良公園で結構歩かされていたのもあったと思います。
班の中は徐々に険悪になり、予定からだいぶ遅れていた私たちは、集合時間に間に合うように最後の見学地をカットし、旅館に向かうことにしました。

楽しいはずの修学旅行なのに、なぜこんなに疲れて、険悪にならなければならないのか。
その時はわかりませんでしたが、教師となって修学旅行を計画する側になった今ならわかります。

これは先生たちによる先生たちのための、くだらない策略だったのです。

修学旅行となれば、子どもたちのテンションは上がります。
特に夜は盛り上がって、遅くまで騒いだり、とかく問題を起こしがちです。
先生としては、夜はおとなしく寝て欲しいもの。
だから、昼間死ぬほど歩かせて疲れさせ、夜はぐったり寝かせてしまおうという魂胆です。

子どもの学びや健康、楽しめるかどうかなどはどうでもいいという、先生本位の考え方。
おまけに、生徒を歩かせている最中、先生たちは引率もせず、どこかでのんびり観光か休憩をしていたはずです。

ろくでもない連中です。


そんな先生たちにバチが当たります。

が、よりにもよって私たちにもとばっちりがきて、ひどい目にあいました。

夜、旅館の部屋でくつろいでいると、他のクラスの男子がベランダを走ってきました。
その男子はリーゼントに短ランボンタンを決め込んだ、学年一のヤンキーでした。

私たちの部屋は3階の角部屋でしたが、そのベランダに来て何か外の様子をうかがっています。
私たちもベランダに出て、なにしてるのか聞きました。

「そこの駐車場に暴走族が集まって集会やってんだよ」

指さされた方を見ると、となりの駐車場に特攻服を着た十数人と、改造バイクが何台か停まっていました。
地元では見ない、絵にかいたような暴走族がそこにいました。

すると突然、うちの学校のヤンキーが、

「うるせえぞバカ野郎!」

と暴走族に向かって怒鳴ると、ダッシュでベランダを逃げていきました。

・・・ウソだろっ!

取り残された私たちを暴走族が見上げています。

あわてて私たちは部屋に引っ込みましたが、外では暴走族が何か叫んでいるようでした。

「これ、やばくねえか」と話していると、同じクラスの友達が部屋に駆け込んできました。

「お前らなにやらかしたんだ⁉ロビーに暴走族が押し寄せてきて、3階の角部屋にいるガキども出せ!ぶっ殺してやる!とか騒いでるぞ!」

おいおいおいおいおい!
冗談じゃないぞ!
とんだとばっちりの濡れ衣だよ!
なにしてくれてんだよ、あのヤンキー!

「おれたちじゃねえって!やべぇ!ここまで来るかな?」
「今旅館の人と先生たちが必死で押さえている。警察呼ぶとか言ってたけど、間に合うかわかんねえから、とりあえずこの部屋出た方がいいよ」

私たちは慌てて部屋を出て、別の階に逃げようとしました。その時、吹き抜けからちらっと見えたロビーでは、特攻服の集団と先生たちがもみ合っていました。

結局警察が来て暴走族は逃げていきましたが、私たちは先生たちに呼び出され、説教されるはめになりました。

無駄に疲れて緊張した修学旅行でした。



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