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エンジニア組織のHRBPが行った「社内ラジオ」リニューアルPJTの具体的なプロセスと学び

この記事は、LITALICO Advent Calendar 2023 5日目の記事です。
昨日はSREグループマネージャー@tjinjinさんの「Terraform CI/CDの改善してみた」でした。(SREグループは積極採用中です!

毎年みんなの記事を読むのを楽しみにしつつ、1年の振り返りがてら書いているアドベントカレンダー。
2022年は中途入社のオンボーディングの考え方と作り方について、2021年は四半期ごとに行っている全体会の企画と設計について書きました。

今年も書きたいネタはたくさんあったのですが、2022年6月からスタートした「社内ラジオ」のリニューアルプロジェクトについて振り返りたいと思います。

最初にざっくり書くと、具体的にどんな課題があり、どんなことを考えたか。参加データの集計分析→他社事例リサーチ→目的や施策効果の見直し→コンテンツの再企画というリニューアルの具体的なプロセス、そしてリニューアルの結果についてまとめました。


いくつかの前提

①会社と組織について

  • LITALICOは「障害のない社会をつくる」をビジョンに、教育や障害福祉領域で事業展開をしている会社です。社員数は4,601名(2023/9時点)です

2023年3月期第2四半期決算説明資料より
  • 現在は事業部門と機能横断部門のマトリクス組織となっており、今回の記事の対象は、エンジニア/社内ITのメンバーが所属している機能横断組織であるエンジニアリング統括部となります

  • エンジニアリング統括部は現在約200名の組織で、2021年5月に複数の部が集まって組成されました

  • 私自身は、組織組成と同時に設立されたエンジニアリング統括部専任のHRを担当しています。動き方としてはいわゆるHRBPやDevHRのようなイメージです

②1年前、社内ラジオ開始時の組織の状況

  • 2020年の緊急事態宣言から在宅勤務がはじまり、エンジニアリング統括部は現在ほとんどの社員が在宅勤務を利用しながら働いています。2021年は潜在課題だった在宅勤務によるコミュニケーションや情報流通についての問題が2022年はすこしづつ顕在化してきていました

  • 組織が大きくなることで、CTOやVPoEとの距離を遠く感じている人たちが増えている状況もありました

  • うれしいことにLITALICOの理念やビジョンに共感して入社してくれる方が多いのですが、会社が拡大し事業や領域も増える中で、会社や組織の方向が見えにくくなっていたり、理念やビジョンを感じにくいという声も出てきていました

  • そこで、CTOとVPoEをメインパーソナリティーにした社内ラジオをはじめることにしました

③社内ラジオ「つなラジ」の概要

・頻度:毎週木曜日のお昼
・時間:各回30分 
・話し手:メインパーソナリティーのCTOとVPoE+ゲスト
・内容:リニューアル前は月2回のラジオ企画会議で各回の内容を検討。月に1~2回はゲストを呼ぶスタイル
・構成:CTO選曲の音楽を流してスタート~曲紹介→オープニングトーク→メイントーク→クロージングトーク→次回ラジオのお知らせ
・形式:Google meetでリアルタイム配信。アーカイブ視聴もできる
・参加方法:ラジオ用のslackチャンネルを作成し、リスナーは感想などの投稿をしながら参加可能。画面ON/OFFは自由で耳参加の人が多い

ことのはじまり

年度替わりのタイミングでもあった2022年の2月から4月にかけて、エンジニアリング統括部の2年目の組織の状態と課題について、CTOとVPoEとの議論を継続的に行っていました。

組織コンディションについての議論していた資料

その中で、組織が拡大しリモートワークなどの多様な働き方も進み、役割やミッションの分業化で組織拡大に対応してきた一方で、会社の大きな動きや横の動きを背景含めて知ることや、チームを越えた繋がりをつくることの難易度があがっていること。

結果として、LITALICO全体の目指す方向と自分のミッションとの繋がりが見えづらくなったり、チーム間連携や学び合いが生まれづらくなっているという課題が明確になってきました。

同時に組織内の会議体と情報流通についても議論しており、組織内の階層ごとにどんな情報が流通していていて、どんなことが足りていないのか。
これまでの全体会などのアンケートを踏まえてどんなことを知りたいニーズがあるのかの整理を進めていました。

組織内の情報階層を整理し、階層ごとの会議体と情報流通の洗い出しをしたりしていた資料

社内ラジオはCTOやVPoEの人となりや組織の考え方を知れるとポジティブな声も多く、うまく継続ができてきていましたが、リアルタイムの視聴者数が減ってきてない?前に比べて感想のコメント少なくなってない?このままでいいのかな?という感覚をチームとしてもっていました。

そこで、上記議論を踏まえて、社内ラジオの役割としてどんな情報を補えるのか、どんな効果を狙って行っていくのがよいかを再度議論することにしました。

リニューアルの決定

議論をしていく中で、目的の見直しなども含めて全面的にリニューアルしようと決めて、リニューアル期間として社内ラジオを1ヶ月お休みすることにしました。
(毎週同じ曜日同じ時間にみんなが集まる習慣ができていたので、リニューアル期間中はラジオの時間をつかって各部の部長から今期方針を共有してもらう取り組みを行いました)

当時の課題感

  • リアルタイムの参加者や感想メールなどが減ってきていた

  • 社内ラジオの目的が広く、それによって企画会議で各回の企画を決めるのに必要以上に時間がかかってしまっていた

  • 動画のアーカイブはしていたが導線ができておらず、うまく資産化できていなかった

  • 定量/定性/感覚的な手応えとして、効果がでていると自信をもっていえない状態になっていた

リニューアルのゴール

リニューアルで目指すことは「施策としての効果性を最大化」すること。

具体的には
・リアルタイムの参加者数の増加
・ラジオの目的⇔各回の企画/内容⇔効果の接続の向上
・アーカイブ視聴ふくめた組織としての情報流通と情報の資産化
・効果測定と改善サイクルの設計
あたりを想定していました。

リニューアルで行ったこと

■設計面

①過去データ収集→分析→見える化
まずは現在地を確認するところから、ということで過去データを集めて定量的に把握することからはじめました。

これまではGoogle meetの出席データ機能でリアルタイムののべ参加人数をカウントしていましたが、統括部外からのリスナーも増えてきている点、組織自体も拡大している点から、
・事業部内/外のリアルタイム視聴人数を分けて取得
・参加人数ではなく参加率を算出
し、ウォッチしたほうが適切な振り返りができるようになるのではないかと考えました。

集計自体は難しくありませんが、毎月新しい社員が増えたり、定期的に組織変更があったりと人員変動があるため、出席率の母数となる各月ごとの人員データを集めたり、更新性を担保できる形で集計基盤を設計するのはちょっと手間がかかりました。
(現状いったんモニタリングできるところまで整備し、今後一定データが自動更新できるような設計に移行したいと思っています)

データ集計の頻度も約半年→毎週に変更し、その回の参加状況がすぐ見えるようにすることで、細かく改善サイクルが回せることを目指しました。

②過去アーカイブ動画の視聴促進

これまでラジオのアーカイブ動画は組織内の全員が閲覧できるGoogleドライブに格納していました。
とはいえ、毎週配信をしているとアーカイブも増えていくし、Googleドライブに格納しているだけだとファイル名がすべて表示できずファイルを開かないと内容がわからないので、アーカイブを聞こうと思っても興味のある回を探すのはちょっと大変な状態にありました。

社内ラジオのアーカイブは、CTOやVPoEの考え方を知れたり、統括部内のさまざまな人や取り組みを知れたり、組織の歴史を知ることができる貴重な資産です。

新入社員向けのコンテンツとしてもっとうまく活用したい気持ちもありましたし、みんながリアルタイムで視聴するわけではないので、アーカイブで聞いてくれる人が増えるとうれしいなと思っていました。

そこで、検索性を向上し、見たいコンテンツを見つけやすくするために社内ラジオのアーカイブ一覧をまとめたページ(スプレッドシート)を作成することにしました。

こんな感じで一覧化しました

各回のテーマやゲスト、ゲストの所属、かんたんなサマリなどがまとまっていることで気になる回を見つけてもらえるといいなと思っています。

今後はスプレッドシートからポータルサイト化して閲覧性の向上を目指したり、新入社員向けなど複数の切り口でおすすめのアーカイブまとめなどを作成したいと思っています。

また細かいですが、各回のラジオ終了後にアーカイブの動画リンクをslackのラジオチャンネルに投稿することで、「聞きたかったけど予定があって聞けなかった」「slackのコメントをみて興味もった」という人がアーカイブ視聴する導線をつくりました。

■企画・コンテンツ面

①過去コンテンツ整理→他社事例のリサーチ

過去の社内ラジオのコンテンツもカテゴリ分けして整理し、そのバランスや参加人数の変動などをざっと振り返りました。

同時に、VPoEと手分けして他社の社内ラジオのリサーチを行いました。採用広報としてpodcastなどの音声配信をしている事例や社内ラジオを行っている事例など、ここ数年とくにコロナ禍以降は音声コンテンツの取り組みを行っている企業も多く参考になりました。

企業ごとに、配信の目的/対象/コンテンツ企画の種類/配信時間/頻度/配信スタイル/運営方法/特徴などを整理しました。

こんな感じでまとめてました

②目的/コンセプトの再設定

他社事例のリサーチと別ラインで行っていた組織内の情報流通の設計とを踏まえて、社内ラジオの目的とコンセプトの見直しも行いました。

社内ラジオをはじめた当初は複数の仮説をもってスタートしたので、コンセプトも今よりすこしふわっとしており、より明確でシンプルな言葉に再定義をしました。これは1年継続してきたからこそできたアップデートだったと思います。

社内ラジオの最初にMCが話す紹介文章も合わせて変更をしました。

【リニューアル前】
このラジオは社内のコミュニケーションや情報共有がリモートワークで薄まったことでの、チーム間の連携しづらさや個人の孤独感への課題を感じ、そこを活性化させたいなという思いではじめました。毎週木曜日に、CTOとVPoEがゆるく話すラジオトーク番組です。

【リニューアル後】
このラジオは、エンジニアリング統括部を中心に様々な人や取り組みにスポットを当てることで、LITALICOの理念や人とのつながり、チーム同士のつながりを増やしたいと思ってやっているラジオ番組です。

社内ラジオ台本より

③目指す効果を明確化してシリーズ企画をつくる

②の目的とコンセプトの見直しの議論の中で大きなポイントになったのは社内ラジオ全体の目的は置いた上で、社内ラジオで目指す効果は1つではなく複数設定するということでした。

社内ラジオスタート時は手探りだったので、様々なテーマで企画をしていました。
1年やってみた上で、どういったコンテンツが社内ラジオとして効果がでやすいか、逆にラジオ以外の全員が参加する機会に扱ったほうが効果ができるのではなど、ラジオのテーマとして扱うコンテンツの整理をまず行いました。

その上で、社内ラジオだからできるコンテンツを明確にして、目指したい効果を言語化していき、その目指す効果ごとに「シリーズ企画」というWEBメディアでいう連載のような企画群を立ち上げることにしました。

最終的に8つのシリーズ企画を行うことにして、シリーズごとにシリーズ名/フォーカスする対象/狙い/ゲスト選出の方針/構成/頻度などを決めました。

決定したシリーズの企画

これによってコンテンツの切り口がシャープになり、当日の内容もより深掘りがしやすくなったことはもちろん、月に数回必要だった企画会議が月1回でいい感じに企画が決まるサイクルになりました。

より聞いてみたくなるように、シリーズ名+各回の「タイトル」をしっかりつけることで、各回の内容がイメージしやすくなるように工夫しています。

■オペレーション面

施策の効果を最大化するためには日々の運用も大切です。
ということで、リニューアルにあわせてオペレーションも見直し、現在もこまかく改善を続けています。

いくつか例をあげるとこんな感じです。

・ラジオの告知
 ー頻度:前日のみ→前の週のラジオ終了後+前日
 ー方法:テキストのみ→シリーズ名/タイトル/ゲストのアイコンをいれた画像を投稿
 ー内容:前日告知では事前に作成した台本からフックになりそうな要素を抽出して中身をチラ見せ
・ラジオ終了後の案内
 ー毎回終了後にアーカイブ動画のリンクを共有
 ーゲストに興味をもったひとが”つながる”きっかけとして、ゲストの分報チャンネル(slack)を紹介
・企画会議
 ーブレストシートを作成し、事前に全員が1つ以上企画を記入した状態で企画会議をすることに

リニューアルによる結果

リニューアルから4ヶ月時点のデータでは以下のような状態です。

■ 社員のリアルタイム参加人数:約1.6倍
■ 社員のリアルタイム参加率:約1.3倍

また、まだデータが少ないのですが「シリーズ」という概念をつくったことで今後どのシリーズの視聴が多いかなどコンテンツ面での振り返りもしやすくなるのでうまくデータを活用しながら改善をしていきたいと思います。

各回だけでな1ヶ月単位の参加人数/参加率なども集計しています

やってみての学び

ほかにも複数のプロジェクトを抱えている状態で進行した社内ラジオリニューアルプロジェクトだったので、まだやりたいことが全部できているわけではないのが正直なところですが、学んだことは以下です。

①社内ラジオを継続することの意味
組織が拡大したりリモートワークが増える中で社内の情報流通やインナーコミュニケーションに課題を感じる組織は多いと思います。
理念やビジョンについて、組織について、事業について、どれだけ丁寧に説明をしたとしても一度に知識や理解として持ち帰れる量というのには限りがあります。

社内ラジオをやりながら思うのは、1つのことをとっても捉え方は見る角度や話す人によって変わるからこそ、会社と組織に関わるテーマでさまざまな角度からさまざまな人の語りを聞き、それが積み重なっていったときに、その人なりの会社や組織の理解がうまれるのではないかということ。

さまざまなゲストの話を聞くというのは、その人たちが会社や事業やプロダクトや仕事をどう捉えて、どう見ているかを知ることでもあり、みんながまったく同じではなく、でもなんとなく共通しているところもあるな、そう感じるところにきっと組織の文化があるのだと思います。

だから社内ラジオは今すぐ必要な情報だけを発信するのだけなく、組織の中に種まきをするような気持ちで続けることで意味や価値が大きくなると感じます。

②施策の相乗効果
人と組織の問題は1つの施策で特効薬的に効くということがなかなかありません。「発生した問題←解決する施策」のように施策を立ち上げがちですがそうするとどんどん施策が増えて運用コストがふくらんだり、問題のもぐらたたき状態になります。(これはつらい)

問題を組織課題として整理/定義することはもちろん、各施策が単発ではなく生態系のようにうまく接続したり循環していくような全体デザインが大切だというのがHRとして2年半やってみての実感です。

社内ラジオだけで組織のすべての課題を解決できるわけではなく、課題に対してこの部分はAの施策、この部分は社内ラジオが効きそうだというように設計をしたり、例えば社内のコミュニケーションを増やすために分報を活性化したいという取り組みに対して社内ラジオでゲストの分報を紹介するというように施策を接続をさせていくと、施策の相乗効果が生まれやすくなっていきます。

③多様な経験が活きる
社内ラジオのリニューアルプロジェクトは、総務/労務時代のデータや関数の扱い方のスキル、編集者時代の企画を考えコンテンツをつくり読者に届ける経験、高校時代から個人的に学び続けている組織開発の学び、ここ数年の音声コンテンツのインプットなど、これまでの経験があったからできたことも多かったなと思います。

社内異動で異なる職種や異なる経験をすることや個人的な興味関心で学び続けることは、すぐになにかにつながらなくても、中長期的に活かせる場面があると実感をもつことができました。

社内ラジオの今後

より社内ラジオのアーカイブ動画を視聴しやすくなるような社内ラジオのポータルサイト化や、現状取得できていないアーカイブ視聴数の把握あたりは、今後もうすこしチームとしてキャパが増えたらやりたい気持ちがあります。

あとは「このプロジェクト取り上げて!」とか「この人の話を聞いてみたい」とか、そんな風にリクエストがたくさんきたり、気軽にリクエストしてもらえるような距離感や存在の社内ラジオになっていけたらいいなーと思ったり、その先に一緒に社内ラジオをつくりたい人たちが出てきてくれたりしてHR主導ではなく有志で社内ラジオの運営チームができちゃったりしたらそれもすごくおもしろそうだなーなんて妄想しています。

社内ラジオのリニューアルにあたって、いろんな企業の音声コンテンツや社内ラジオの取り組みを参考にさせてもらったので、書ける範囲で具体的にリニューアルのプロセスを書いてみました。

組織の情報流通に悩んでいる人や、社内ラジオやりたいな、ちょっと見直したいなと思っている方の参考になったらうれしいです。

来年もよりよい組織づくりを目指して、楽しく仕事をしていけたらいいなと思います。

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LITALICO Advent Calendar 2023 明日は23新卒エンジニア @k_orita さんの「一年目の新人こそ、チーム1厳しいレビュワーになろう!」です。お楽しみに。

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