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みっしりと部屋いっぱいにぞうの影

 現代川柳と400字雑文 その93

 長谷川さんがまだ実家に住んでいたころの話。昼間、2階にある自室でテレビを見ていると、突然窓の外が暗くなった。雲が日光を遮った、といったレベルではなく、完全に夜の暗さ。反射的に外を見ると、窓一面を覆いつくすほどの巨大な岩のようなものがゆっりく横切っていき、すぐにまた昼間の明るさに戻った。すぐに窓を開けベランダに出てあたりを見回したが、見慣れた住宅街が広がるばかり。変な話なんですけど、と長谷川さんは続ける。「あとになって思ったんですけど、あのときの岩、あれ岩じゃなくて、大きな灰色の、象だったかもしれないなって。そういえば窓を開けたとき、動物園みたいな匂いもしたし。いや、さすがにそんなに大きな象はいない、というか、そもそも住宅街にいきなり象なんておかしいんですけど、なんかそんな気がするんですよ。あれってやっぱり象だったよなって」長谷川さんは言葉の合間でアイスコーヒーのストローの強く噛んでボロボロにしていた。

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