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妻と僕のPMDD生活5日目

妻は美しい。
きっとこれから先も。

✳︎

妻とショッピングモールへ行った時のこと。
皆が自分の目星の服やらを散策している中、
僕は妻の行方を1時間ほど捜索していた。

「迷子センターに連絡しよう」
そう思った矢先、立ちすくむ妻を見た。

なぜだが僕はその辺のモデル以上に
妻を美しく愛おしく感じた。

✳︎

その施設は関西圏では随一の広さを誇る。
僕たち夫婦は服が好きなので、
休日を合わせてその施設へ向かった。

自宅からはかなりの距離があるため、
朝早くに休憩を挟みながら車で移動した。

到着した時間はお昼前。
すでに沢山の人が買い物袋を片手に、
満足げにウキウキしている。

「先にお昼食べよか!まだ空いてるし」
僕は妻にそう提案したが、
妻は提案を却下した。
気分ではなかったらしい。
妻はお腹が空くと、イライラする。
僕はそれを見越して、提案したつもりだ。

2人で何店舗かウロウロと回り、
程よく疲れが溜まってきたので、
改めて「昼、食べようか」と提案した。
妻も了解した。

でも、時間はちょうどお昼。
どこのランチも行列をなしていた。
「アホやろ!先に食べたら良かったやん!」
妻は行列中に突然叫び出した。

うぇえええー!ウソやろ?
僕は最初に言ったやん。
でも、却下したやん。
と、僕は内心思っていた。

妻は僕の不満を表情で読み取ったのか、
どこか彼方へ走り去ってしまった。

✳︎

行列の中、残された僕。
周りの反応がツライ。
クスクス笑う声、
同情する声、
子どもをあやす親。

ウキウキした施設にはそぐわない負の状況に
僕はすぐにでもその場を去りたかった。

でも、トイレに行っただけという
可能性もゼロではない。
もしもただただトイレの場合、
「なんで並んでへんの?」と怒られる気もする。

でも、僕もこの場に居続けるのはツライ。
もうダメだー!
そう思い、僕は妻の捜索を開始した。

さっきまでは店舗を見ながらだから、
さして広さを感じなかった。
今はただただ広い空間と化した。

妻は車の鍵と財布を持っていた。
もしかしたら「帰ったのかも?」と思い、
駐車場まで戻ったが車はある。
電車か?
いや、妻は電車が嫌いだ。

再び広い空間をウロウロする。
そうだ!
妻は見た目こそ怖いがクレープが好きだ。
クレープ屋か?
違う。
ウロウロウロ。
見つからない。
ウロウロウロ。
見つからない。
今日は捜索だけの日になるかも。

もう、アカンわ。
30歳オーバーやけど、迷子センター行こ。
日本初の30歳オーバー迷子の誕生や。

そう思った矢先、
迷子センター前に立つ妻を見た。

ホッとしたのか、なんなのか、
妻にだけ後光が差している気がした。
「美しい」
他の言葉が思い当たらない程、
心の底からそう思った。

早足で妻に近付き、声を掛けた。
妻は「なんで迷子なってんの?」と、
不思議そうな表情。

それからは2人で改めてランチし、
午後からはショッピングを楽しんだ。

✳︎

これから2人は、
どんどん歳を重ね老けていく。

それでも妻は美しい。

おそらく僕はドMだと思うけれど、
迷子センターの前で見た妻に、
確信めいた「真の美」を感じた。

きっとそれは外見ではなく、
妻が放つオーラに美を感じるのだと思う。

オーラ?
美輪明宏さんみたいなこと言うな!

メガッパ

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