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【種】 #626


悩みの種はそこら中に落ちている



何かを始めようとする時

「なぁどうしよう
皆んなにやるって言っちゃったけど
ホントは自信が無いんだ」

「それってさぁ
皆んなの為にやるわけ?
それとも
自分の為にやるわけ?」

「まぁ昔から挑戦してみたい事だったから
大きくは自分の為だな
でも
それを応援してくれたり
喜んでくれる皆んなの姿を想像すると
小さくは無いけど
皆んなの為にって思うところもあるよ」

「そんだけ考えれるんなら大丈夫だよ
きっと失敗したとしても
誰も笑わないし
失望したりしないし
何度でもチャンスは巡って来ると思うよ」



何かを始めた時

「俺ホンマにこんなんしたかったんやろか?」

相談相手が居ない
親や友達の反対押し切って
ここまで来ちゃったけど

お客さん全然けえへんし
言葉も殆ど分からんし
一応無収入でも
3年は生きていけるくらいの貯金はある
せやけどそれは自分の貯金の切り崩しであって
この状況に投資するほどの見合ったモノとちゃう

誰かに弱音を吐いたり
相談したり
励ましてもらったりしたい

けどこっちにも意地があるからなぁ

はぁ…
悩んでても腹は減るなぁ



何かにつまずいた時

「もうダメだ」

「どしたんや?」

「去年までは上手いこと行ってたんだよ」

「で?」

「それが今年になってから
パタッと業績が悪化して」

「そんなん想定内やろ?」

「いやっ
こんな早くこうなるとは予想してなかった
社畜をほぼ全部投資に回していた」

「なるほどな
読み間違えたっちゅう話やな
まだ立て直せそうな範囲なんか?
それともケツに火がついとんのか?」

「このままの状況だと
あと1年も持たない」

「それやったら
傷口大きゅうならん内に
財務整理して
倒産しまひょ
そーでないとえらい事になりまっせ」

「やっぱりそうですよね
分かりました
それで進めてみます

いつもホントにお世話になりまして
ありがとうございました」

「かまへん
かまへん
こんくらいの事

今っくらいの負債やったら
命は奪われへんわ
安心し

ほな!
わて行くで
また弁護士の方から電話さすよってに」

「ありがとうございました」



種から芽が出て育ち
やがて大きな花を咲かせ
気が付いたら一面お花畑になっていた

「ヤッさん
元気か?」

「ああ
まぁ何とかな」

「今年は暖冬だでええけど
ヤッさんももう年やし
いっつも来てくれる
あれなんやったっけ?
なんとかぁ言う団体があったろう
あそこの世話んなったらどうや」

「ダンちゃん
こんな生活
もう何十年もしとるから
人と合わせられんのや」

「でもええがなぁ
衣食住の心配もせんでええし
生活保護貰えるよう手続きもやってくれるらしいで」

「そんなんやったら
ダンちゃんが入ったらええがな」

「俺は大丈夫やて
まだカラダも丈夫やし
仕事もあるし」

「仕事ってあれか
何とかいう雑誌売るアレか
あんなもん大した収入ならへんやろ」

「そうでも無いで
しかもな何言うんかな
社会と繋がってる感じがするねんな

お金キッツい時はハンパで現場仕事行くけど
アレはクソッタレの集合体や
全然オモロ無い

せやねんけど
普通の人と関われるあの仕事は
気持ちを前向きにしてくれるんや

ヤッさんも元気やったらでけんのにな」


程なくして
このヤッさんはこの街から消えた
跡形も無く



種は何処にでも落ちている
拾わない事だな
もし
拾ってしまったとしても
水をやらない事だ

悩みが膨れ上がり
心配事の領域を超えて
実際の不幸な出来事を吸い寄せてしまう



死ぬ事は無い

無理に希望を見いだす必要も無い

きっと
大丈夫

当たり前過ぎるけどね






ほな!

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