見出し画像

【私の右足を知りませんか?】 #936


私は中学生の頃
そこそこモテた
他所の中学からも見にきたりしてた
自分じゃ無いと思ってたんだけど
友達が教えてくれた

しかし私の人生は高校生になって一転した

交通事故にあったのだ
高齢の男性が運転していて
いわゆるニュースなんかでよく言うブレーキとアクセルを間違えて
私と友達が巻き込まれた

意識が戻った時にはもう私の右足の一部は無くなっていた
顔にも大きな傷が出来てしまい
包帯でグリグリ巻になっていた

私はまだ生きていたが道路側を歩いていた友達は即死だったらしい

私は毎日毎日泣いた
泣いても泣いても
涙は後から後から溢れ出てくる

私をひいた犯人の娘さんが見舞いに来たらしいのだが
お母さんが話をして帰ってもらった

数週間したら
もう涙は出なくなった
その代わり私は貝のように
閉じこもってしまった

誰にも会いたく無い
誰とも話をしたく無い

唯一話すのはお母さんだけ

お父さんや弟にすら会いたく無いし
話したく無い

数ヶ月して私の顔の包帯は取れ
リハビリが始まった
ずっと寝ていたからカラダが石のように重く固まっているみたいだった

最初は寝たままの状態でリハビリの先生がマッサージしながら
私の足の関節を曲げ伸ばしした
とても痛かった

痛いなら痛いと言えば良いのに
その痛いが言えなかった
誰かと話すのが怖くなっている

数週間したら今度は歩行訓練が始まった
上手くバランスが取れない
立っていられない
立ち上がれない

私の魂が右足の切れた所から流れ出している感じがした

ダメだ死ぬ

でも死なないのだ


最低限のリハビリが終わり
今後は通院でのリハビリになる為
私は病院を退院した

家に帰ると私の部屋が2階から1階に変わっていた
わざわざ私のためにリフォームしてくれていた

お父さんと弟とは上手くコミュニケーションがまだ取れない
でも2人はいつも以上に優しかった

寝る前に鏡を見た

ブラック・ジャックみたいだ

先生は落ち着いたら美容整形で傷を消して貰えば良いよと背中を押してくれたけど
そんなのでこの顔の傷は本当に消えるのかしら?

リハビリを繰り返して1年
今度は義足を作る事になった
費用は加害者家族が負担してくれる
因みに病院代もリフォーム代も全てあちら持ちだ
まぁ当然だと思う

義足は最初慣れるまでは物凄く痛い
車椅子の方がマシだと心が何度折れそうになった事か
それでも家族の励ましもあって一所懸命に取り組んだ

顔も美容整形で何とか元通りとまでは行かないけど
普通の人の顔にはなった

この頃になると少しずつ前向きに生活ができるようになりだした
でもそれはまだ家の中での話
外へ出ると怖いしクルマの音を聞くだけで立ち止まってしまう
車量が多い道路なんかは耳を両手で塞いでしまう事もあった

克服しないといけない事が山積みだ


休んでいた高校は通信に切り替えて卒業した
これからどうするのか
スゴく悩んだ

普通に大学受験して大学に通うのか
それとも今まで通りの通信制の大学を受験するのか
大学には進学しないで専門学校に通うのか
ちょっと冒険で海外に留学するのか

でもその先の進路は?
私ってばいったい何になりたいの?

普通のOL?
怪我や病気を治してもらったから医療関係へ進む?

どちらも自分には現実味が無い

お父さんもお母さんも無理に急ぐ必要は無いって言ってくれる
焦ってる訳じゃ無いんだけど
毎日ダラダラ家に居るのも何だか違う気がする

こんなカラダだからアルバイトも多分採用してくれないだろうし


でもまぁお父さんもお母さんもそう言ってくれているなら
何か目標が決まるまではダラダラしてよう
でヒマだったんで何となくYouTubeに投稿してみた
ただダラダラと喋っただけだったんだけど
数人のいいねとコメントがあった
可愛いって書いてくれた人も居た
また何となく喋ったのをあげてみた
そしたら前回よりも増えた
ちょっとだけ面白くなってきたから
ちゃんとコンセントを決めて
ちゃんと編集とかもしようって決めた

で正直な自分を発信しつつ色んな事に挑戦する番組にしようと思った

仕切り直して第一回目は今までの事を話してみた
中学時代にモテた事
その後交通事故に遭い右足の一部を失った事
顔が傷だらけになった事
家族の支えがあった事
前を向く事
トラウトがある事
これから夢を見つける事
挑戦する事

尺が長かったので3回に分けて投稿した

1回目はまだ少なかったのに
3回目を終わる頃にはフォロワーが100人を超えていた
ビックリしたけど手応えも感じた
中には私と同じように義足や義手で生活する人も居た

回を重ねる毎に楽しくなってきた
最初は簡単な挑戦からスタートした

反響も多くもらえた
自信に繋がった
でも観る人が増えた分
ヘイトな書き込みの人もチラホラ出てきた
ヘコむけどこれは仕方無いと諦めたし無視をした
フォロワーさんにも無視してねってお願いした
変に反論するとややこしいから


私は気が付いたらユーチューバーになっていた
今ではプロダクションにも所属し
スタッフが出来て外での撮影などとてもスムーズに行ったし
もしトラブルになってもキチンと彼らが対応してくれた

地上波では無いけれどネットの番組でも取り上げてもらった
その後取材も受けた

沢山のネットワークも出来てきた
中には怪しい組織からの勧誘もあったりしたがそれは丁寧にお断りした

すっかりYouTubeで普通のOLさんより稼ぐようになってしまった

知らない内に性格も明るくなっていた

お父さんもお母さんも弟も応援してくれている
そして何と彼氏もできました

一時期は死ぬ事ばかり考えていた私が今はこんなに笑ってる


昔お母さんが
「一休さんってお坊さん居てたでしょ
あのお坊さんは実在する人でね
良い言葉を残してくれてるのよ

大丈夫なんとかなる

今はショックでそんな事考えられないだろうけど
必ずこの言葉の意味がわかる時が来るから
それまでは決して死のうとかは思わないでね」

涙しながらそう言っていたお母さん

今は分かるよ
その意味が




ほな!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?