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【僕とお母さん】 #717


「お母さん今度こそ運動会には来てね」

「行けたら行くわ」

「お母さん今度こそ授業参観には来てね」

「いつ?」

「来週の火曜日の2時間目」

「行けたら行くわ」


結局お母さんは小学生の時
一度も行事には来てくれなかった


中学生になりお弁当だったのだが僕はもう最初から諦めていたのでお弁当は自分で作った

高校生になってもお弁当は自分で作った
家に帰ると千円がテーブルに置いてある
晩ご飯は出来るだけ節約して残りのお金は貯金した
この千円には次の日のお弁当のおかず代金も含まれている
だから僕はいつもお腹が空いていてガリガリのカラダだった

高校を卒業して専門学校に上がった
この専門学校は奨学金制度もあったのでそれを使った
学校の課題よりバイトを優先していたら先生にめちゃくちゃ怒られた
やる気が無いなら辞めなさいと
でも途中で辞めてしまうと今までの授業料を一括で返さないといけなかったのでバイトしながら必死に課題もこなした
お陰でいつも頭はクラクラだった

何とか専門学校も卒業して社会人となった
結局進みたかった世界には行けず不動産会社に就職した

お母さんは家にお金を入れるよう言ってきた
僕は家にお金を入れ奨学金の返済をしたら手元には殆どお金が残らなかった

それでも必死に働いた

僕が27歳の時にお母さんは勤めていたスナックで倒れ救急車で運ばれた

お母さんは癌でステージ4だった
保険に加入していなかったので手術代と入院費がかさんだ

僕は子供の頃からの貯金とボーナスをかき集め費用にした

お母さんは半年後に亡くなった
僕の事なんて無関心だったお母さんは最後にタンスの中に貯金通帳があるから何かの足しにしなさいと言った

僕はお母さんのお葬式を済ました後にタンスの引き出しを開けて貯金通帳を見た
貯金通帳の名義は僕になっていてお金が五千万円あった
お母さんが倒れる前の月までずっとお金を入金していた

きっと僕が社会人になってから渡していたお金も全部入れていたに違いない
毎月の入金金額は僕が渡したお金に数万円上乗せした金額が入っていた

お葬式では泣かなかったけど通帳を見て涙が出てきた
そして腹が立った

ホントはこんなお金より
運動会や
授業参観や
お弁当が良かった
分かってないよお母さん

なのに涙は止まらなかった






ほな!

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