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【私の時間】 #536



いつものように目覚めた

テレビのスイッチを入れた
アニメが映し出された

なんでこんな朝から?

チャンネルを変えてみた
ニュースをやっている

政治家の汚職のニュース

興味ない

テレビはそのままにして
朝食の準備をした

テレビは天気予報になっていた
予報士は明日の予報ばかり話す
今日はまだ始まったばかりなのだから
明日では無くて今日の天気を予報してほしい

朝食を食べながら更にテレビを観ていると
バラエティー番組が始まった

何じゃこりゃ?
これじゃまるで朝夕逆転したみたいじゃないか

気にはなったが
急ぐので
そんな事には構っていられない

身支度をし
急いで家を出た

いつものバスに乗るため
小走りでバス停に向かった

大通りまで出た時
目を疑う光景がそこにはあった

クルマが右側通行をしている
なんだ?なんだ?
これじゃまるでアメリカじゃないか
ここは日本だぞ
どうなっているんだ?

当然ながらバス停も駅へ向かうのは
いつもと反対側

バス停には
人が居ない
いつのこの時間だったら
10人は待っているのに

何もかもおかしい

バスの時間もやや違う時間に来た
単なる遅延だと思っていた

駅に到着し
発着の電光掲示板を確認した

おやっ!これもおかしい
まぁ遅刻する事は無いから
いつもとは違う発車時間の電車に乗った

電車の中の風景が違う

学生がほぼ見当たらない
今日は休みなのか?
それから
どう見ても酔ってるサラリーマンが
数名いる

会社の最寄り駅前で下車し
会社へと向かった

到着しビルへ入ろうとしたら
入口の自動ドアが開かない
おかしい
壊れているのか
色々カラダを動かしたりして
センサーが反応するか試してみた
しかし虚しくも
入口ドアは無反応であった

途方に暮れていると
ビルの守衛さんが現れ
中から
入るのか?と身振りで聞かれた
だから私は大きく頷いた


やっと入れた
守衛さんにお礼を言って
エレベーターに乗ろうとしたら
守衛さんに止められた


「ちょっとちょっと
今の時間に入るんだったら
ここに時間と会社名と氏名を書いてくれなきゃ困る」


「えっ
いつからそんな風になったんですか?」


「いつからって
もうこのビルできてからずっとだよ
アンタはこのビルに入ってる会社の人だって事は分かってる
分かってるけど
この時間にビルに入るには
入館手続きが必要なんだよ」


「この時間ったって
朝の8時前ですよ
これから会社始まるじゃないですか」


「なぁーにを寝ぼけた事を言うてるんだアンタは
アンタの会社はもうとっくに終わって
皆んな帰っちまってるよ」


「帰った?
いつ?」


「そうだなぁ詳しい時間は見てなかったけど
7時前には皆んな帰っとったよ
アンタの姿も見たぞ」


「えっ?
そんな筈はない
その時間だとさっきまだ家に居た」


「おかしなこと言うなぁ
まぁとりあえず
ビルに入るなら
この入館手続きはしてもらわなくっちゃならん」


「ホントにもう
今日は会社
終わっちゃってるんですね」


「私が嘘ついても何の得にもならん
終わってるよ
また明日の晩においで」


「晩?
どうして晩なんだよ」


「あたりめぇだろ
お天道さんが沈んだら
仕事の始まりじゃねぇか」


「日が沈んだら仕事開始?」


「そうだ
当たり前の事を聞きなさんな
でっどうすんの?
ビルに入るの?
それとも入らないの?」


「あっ
ごめんなさい
では晩に出直します」


「そうですな
それが普通だ
せっかく出てきたんだし
どっかで引っかけて
帰るのもいいんじゃないですか

あと
犯罪者じゃ無いんだから
『ごめんなさい』は止めなよ
それは犯罪者が使う言葉よ」



『ごめんなさい』は犯罪者の言葉

疑問に思ったが
もう何もかもがおかし過ぎるし
面倒なので
守衛さんに聞くのはやめた

トボトボと駅へと向かった

途中に公園があったので
立ち寄りベンチに腰掛けた

時計を見ると
8時13分
朝は朝だけれど
僕のしっている朝では無くて
恐らく12時間のズレがあるので
今は夜の8時13分をイメージすれば良いのか

難しいなぁ

じゃあなんだ?
日が暮れてから起きれば良いのか

今のところ時間が逆さまと
車線が反対なのと
『ごめんなさい』は犯罪者の言葉
この3つは違うというのは理解した

さぁて
これから帰って
明日の夜中に眠らないよう
無理矢理もう一回寝て
夕方に起きれば良いのか


夕方
結局ベッドには入っていたが
元々起きている時間帯だし
カーテン閉めても明るいし
頭が混乱しているから
結局眠れなかった

しかし
今から出勤なので
急いで身支度をし
軽く夕食を取り
準備しバス停へと向かった

ホントにこんな時間から
仕事なのかなぁ…

駅に着き
電車に乗り
会社の最寄り駅に到着し
会社のビルの前まで来た


さぁ
ビルの入口自動ドアは開くのか

開かない

どうしてよ

守衛さんの言ったとおりにしたのに

入口でジタバタしていると
守衛さんが現れた

さっきの人とはまた違う人だ

入口を開けてもらった


「守衛さん
今からビルの中に入ろうと思ったら
入館手続きが必要だったりします?」


「そうですね
夜の7時以降は
入館用のカードを提示してもらうか
入館手続きが必要となりますね」


「あの私
3Fのアルファという会社の者なのですが
うちの社員は今は居てますかねぇ?」


「アルファさんだったら
もう皆さんお帰りになられましたよ」


「そうですかぁ…」


「入館はどうされますか?」


「いや
結構です
ありがとうございました」


「あのぉ
そう言えば…」


「なっ何でしょう?」


「今来られる前に
18時過ぎかなぁ
一度もお話した事なかったんですが
そのぉ
何か今日で退社されるとかで
私にお礼を言われてましたけど
覚えていらっしゃらないですか?

先程の
『ありがとう』で思い出したんですが」


「私が
18時過ぎにここを通って
挨拶したと?

その時間だと家にいたのに」


「はぁ
詳しくは分かりませんが
会社の方と出ていかれましたよ
分からないですけれど
送別会とかされているのかと…

でも今
いらっしゃいますものねぇ…」


「分かりました
一旦帰ります」


「はい
お気をつけて」


一体これは何なのだ
全然会社に出勤できないじゃ無いか
しかも退社って
そんな事した覚えないぞ

諦めて
トボトボと家に帰った

リビングのローテーブルの上に
花束と紙袋があった

退社したんだぁ…


もう訳が分からない

休もうとにかく



目覚めた
朝なのか夜なのか分からない

窓の方を見る

日がさしている

じゃあ
朝か昼間なんだろう

起き上がると
部屋の中の物が無くなっている
他の部屋も見た
トイレも風呂もキッチンも

何も無いじゃないか

私はどうなっているのだ

私は存在しているのか

生きているのか

死んでいるのか



遠くから話し声が
聞こえたような気がする



ありがとう





ほな!

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