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【ワンダーランド】 #644


あれは何かしら?

私は確か自分の部屋の中に居たはずなのに
ここは何処で
あれは何なのかしら

ゆっくりと近づいてみる

まぁ
えらく耳の大きな人ね

更に近づく

あらっ
小さいのね

「ねぇ
すみませんが
此処は何処なんでしょうか?」

「此処は此処であって
何処じゃないさ

私は急ぎますので
失礼致します
悪しからず」

「あっ
あのちょっと…」

行ってしまった

どうしましょう

仕方ないので
当てもなく
ブラブラ歩いていると
また何かが居た

あらっ
何かしらアレは

まぁ
大きなイモムシ?
怖いわぁ
どうしましょう

「お嬢ちゃん
どうしたの?」

「キャッ」

「キャッじゃないわよ
どうしたの?って聞いてるのよ」

イモムシが喋ってる

「あのぉ…
此処は何処なんでしょうか?」

「此処かい
此処は此処で
何処ではないわよ」

「あの人と同じ」

「あの人?
どの人だい」

「あの耳が大きな背の低い人」

「ああぁ
あれね」

「お知り合いですか?」

「知り合いってほどでもないわよ」

「そうですかぁ…」

「お嬢ちゃん」

「何ですか?」

「もうちょっと先に
小道が出てくるから
右の方へお行き

ひょっとしたら
お家に帰れるかもしれないわよ」

「ありがとうございます」

イモムシと別れ
言われた通り進むと
確かに小道が現れた

右の方に進むと
巨大なタマゴが横たわっていた

あらっタマゴ

よく見ると割れていて
中身は空だった

更に進むとオープンカフェがあった

ちょうど喉が渇いていたので
お茶を飲む事にした

「お嬢ちゃん
何しに来た」

「えっ
ここカフェでは無いのですか?」

「カフェ?
なんだいそれは」

「カフェはカフェなんだけど…
あっ
お茶を飲む所っていう意味です」

「確かに此処は
お茶を飲める
カフェは知らんが」

「あの
お茶頂いても良いかしら?」

「そうだなぁ
マッドに聞いてみると良い」

「マッド?
それはどの方ですか?
というか
此処にはアナタと私しか居ませんけど」

「マッドは俺だ」

「アナタがマッドなのね
でも先程から
私アナタに聞いてるじゃないですか」

「そうだな」

「お茶は頂けないのでしょうか?」

「今度来た時
飲ませてやるよ

今日は行きな」

「そうですか…」


仕方なく諦めて
歩き続けた

また誰かが居る

あっ
あの人
一番まともかもしれない

「すみません
ちょっと伺っても構いませんか?」

「やっと来たのね
随分と待たされたわ
王様はお怒りよ

さぁ急ぎましょ」

「えっえっえっ
王様?
どういうことですか?

此処は此処は一体何処なんです?」

「此処は此処に決まってるじゃない
とにかく早く歩きなさい」


腕を引っ張られ
グイグイと連れられて
着いた先は
普通サイズの家だった

お城じゃないの?

「さぁ着いたわよ
中へお入り」

「はぁ…」


中へ入ると
着物を着たおばさんが

「お帰りなさいまし
さっ
お父様がお待ちだから
急いでね」

お父様?
王様が?
なに?

部屋に通されると
ホントにお父さんが座っていた

「どこほっつき歩いとったんや
心配したがなぁ

さっ
早よトランプの続きやろ」

「えっ?
トランプ?」

「せやがなぁ
どないしたんや
オマエおかしいんとちゃうか?

もうええわ
部屋でちょっと休んどき」


私は自分の部屋へ行き
ベッドに倒れ込み
眠りに落ちた


どうやら
私はオーバードーズだったようで
二度と目覚める事は無かった

大好きだった
アリスの世界で終わりを迎える事ができた


現実の世界では
私は目を見開き
瞳孔が開き
最後はもがき苦しんだのか
喉の辺りが掻きむしられ

鼻水
ヨダレ
失禁

とても美しい光景とは言えない


遺体は1週間程経て発見されたようだ

中年男性の遺体は
孤独死として処理された




ほな!

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