#3 平常心はどこからくるか

リラックスはとても大事(眞庭選手 九州大)

アスリートとして生きてると、"ここは絶対に決めなければいけない"という場面が必然的に多くなります。普通に生活しててもそういうタイミングはやってくるものですが、"ここ1番"という瞬間があるからこその競技スポーツですから、受験や面接などのライフステージに関わるもの以外にも緊張状態に陥る機会が多いはずです。

"ここ1番"を乗り越えるためには、いかにいつも通りの力を発揮出来るかが肝要です。試合が終わった後の選手のインタビューを観ていると「自分の力を出し切れなかった」とか「緊張して動きが固くなってしまった」とか、普段と違う状況に呑み込まれてしまった結果、上手くいかなかったというような言葉をよく聞きます。揺るがない平常心はこれらの課題を解決するので、ときどき議論の的にされます。

スポーツ心理学の世界では、これらの課題を「ルーティン」の方面から解決しようと考えます。試合前の食事には必ずカステラを食べる,ルービックキューブを完成させる、などの儀式のような捉え方をするものがあれば、「フォーカルポイント」という日常決まったものを視覚的に見ることで気分を和らげようとするものもあります。"自律訓練法"のような、心身ともにリラックスさせる手法を日常的に身に付けさせる手法もあります。これらはどれも、極限状態の選手を普段の心理状態に近づけるためのものです。

このように世の選手たちの注目は平常心へと向かっている中、それと矛盾した行動を取ってる選手が多々見られます。試合の◯日前からは大好きなチョコレートを我慢する,禁酒する,突然ストレッチする機会を増やす,極力外出しなくなる、等々。個々にそれらしい理由を付けられていることが多い(レース前は練習量が減るから摂取カロリーを減らさなければいけない,ウイルスをもらってきたらいけない等)からこそあまり話題にはなりませんが、平常心を求める選手たちの目線からすると、これは矛盾した行動となってしまっています。

摂取カロリーを気を付けているのであれば試合前だけでなく試合の準備期間(半年間~1年,レベルによっては2年以上)から日常的にチョコレートを我慢しなければなりませんし、飲み会を断らなければいけないはずです。そうしなければ試合に特別感が出過ぎてしまい、平常心から遠ざかってしまいます。

アスリートであれば特に特別なことをしなくても、試合に向けてトレーニングを組んで日々淡々と過ごしているはずなので、自然と緊張感は生まれてくるはずだし、気持ちは盛り上がるはずです。だから無理に自分から追い込む必要はないです。微妙に真面目な人ほど自分のことをそういう風に追い詰めていくし、それが善だと思っている節があるので、もっとリラックスして"ここ1番"を迎えられると楽になれると思います。

平常心は大事って誰もが言うのに、試合前に特別なことをしようとする矛盾した風潮は全然かっこよくないです。試合前にチョコレートを食べるのやめたからって急に調子はよくなりません。そう思えるようになってから、僕自身は非常に楽になりました。皆さんもっと気持ちを楽に持ってアスリート生活を送ってください。

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