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#5 一般化の問題点

【要約】
課題を一般化することはできない。観察力・内省力・表現力を高めることは指導者やアスリートにとって重要で、それが自分の競技力やキャリアに繋がっていく。



競歩で上半身の動作を考える際、主に2つの考え方があります。1つは腕を意識的に強く”引く”こと。もう1つは腕を前に"振り切る”ことです。この2つの考え方は相反すると思われていて、選手は上半身の指導を受けた後、「腕は強く引くのが良いのか」もしくは「腕は前に振り切るのが良いのか」のどちらかの気付きを得ます。


しかし、指導者の立場からすると、指導対象の選手の上半身の動きの中で、腕に力が入ってしまっていて前に振り切れていないから、前側の動作に言及したに過ぎなかったのかもしれません。腕振りの軌道を考えた時、前後でリズムが合っていないと適切に臀部を使って重心を前に運べないので、前後のバランスを整えることが意図であった可能性があります。


きちんと考えられる選手なら問題ないのですが、ただ指導者の言うことを鵜呑みにしている選手だったりすると、将来的に良くない影響があります。例えば「腕を前に振り切る」と言う動作を習得し、成功したとします。そしてそれが上半身の技術の最適解だと勘違いしてしてしまい、選手が指導やアドバイスをする立場になった時、腕を振り切ることが課題になってない選手に対してもさらにその動作を強調するような助言をしてしまうという事態に陥ってしまうのです。


最近、このように課題一般化してしまうというのは、どのような場合でもしない方が良いのだろうなと感じています。 自分が指導の現場に立ったりアドバイスをするようになった今だからこそ、ひしひしと感じている事柄です。一見当たり前のように感じるのですが、 「◯◯に難があるやつは大抵△△ができていない」みたいな決め付けにはかなり多くの場面で遭遇します。


誰かにアドバイス・指導をする時や自分に課題を感じたとき、一般化された解に縋るのではなくて、対象の動作を深く観察して、どこに問題があるのかを見極め(審美眼)、言葉で伝える(表現力)訓練をしなければならないと思い、最近力を入れています。


ちなみにこれ、選手としても重要な能力になります。私は縁あって今まで複数種目のトップ選手に会ってきましたが、自分の今の状態や動作への理解が深い選手は、どの種目であれ怪我も少ないし順調に成長している印象です。競技力を上げるためにも、引退してキャリアステップを歩む際にも大事なことなので、僕が指導に関わっている選手には全員に伝えています。"内省力"とでも言うのでしょうか。みなさん意識してみてください。

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