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ファイナンス(企業財務)の基本⑭:「事業価値評価」について、ここまでを一旦、まとめてみた

前回は、「資本コスト」に関連して「デットとエクイティ」についてまとめました。
今回は、ここまでにご紹介した「事業(企業)価値評価」について、一旦、まとめてみたいと思います。

まずは、前回のおさらいです。

デットとエクイティの特徴(前回のおさらい)

  • デット:銀行借入などローリスク・ローリターンの資金

  • エクイティ:株主資本などハイリスク・ハイリターンの資金

経営者から見たデットによる調達と、エクイティによる調達のメリット・デメリットは、下表のようになります。

デットとエクイティのメリット・デメリット

今回は、上の内容も含め、ここまでにご紹介した「事業(企業)価値評価」に関する考え方をまとめてみます。

事業(企業)価値評価のまとめ

まず、事業価値評価は、下記のステップでおこないます。

事業価値評価の5ステップ

各ステップについての詳細は、過去記事を引用します。
(お時間のある方だけ、リンク先をご覧いただければと思います)

ステップ1について

ステップ2について

ステップ3について

ステップ4について

ステップ5について

過去記事の内容をまとめると、DCF法による事業価値は、次のように数式で表すことができます。

事業価値評価の数式

上記数式からも明らかなとおり、以下の関係が成り立ちます。

  • 将来発生するCFが増加する:事業価値増加

  • 将来発生するCFが減少する:事業価値減少

  • 割引率が増加:事業価値減少

  • 割引率が減少:事業価値増加

事業価値評価の枠組みは、「単に対象事業の価格の目安を求める」だけでなく、「事業価値が将来変動し得る幅の予測や、事業価値を高めていくにはどうすればよいか」といった戦略策定にも活用できます。

具体的には、「事業価値評価」の考え方に基づいて下記のような議論が可能です。

  • いくらキャッシュフローが増減したら、いくら事業価値が増減するか?そのために、どのような戦略をとるべきか?

  • いくらリスクが増減したら、いくら事業価値が増減するか?そのために、どのような戦略をとるべきか?

また、上記のような議論をするためには、単にDCF法で事業価値を記述するだけではなく、下記のような手法を用いることが多いです。

感度分析
「事業価値に影響を与える変数をいくつか取り出し、それを通常の見込み数値から上下何%か変動させて、結果にどの程度影響を与えるかみる」
というものです。

例えば、ある事業の将来の見込みキャッシュフローに影響を与える変数として、「平均客単価」「客数」「粗利率」の三要素を取り出 し、客単価は仮に上下 20%、客数は上下10%、粗利率は上下5%変動するとみて、ベストケース・ ワーストケースをそれぞれ計算する、といった形で行います。

自分の経験としては、こちらの「変動幅がどれだけリアルか」という点が、分析の良し悪しに効いてきます

図としては「トルネード・チャート」などで表現されることが多いです。

シナリオ分析
「定性的に将来起こりうるシナリオを何通りか想定して、その場合に変数はいくらになるかを見込み、結果を計算する」
というものです。

例えば、「強い競合が現れて売上が頭打ちになったケース」 や「人気化し増産のためX年後に設備投資したケース」といった具合です。

また、上記の感度分析と区別せず、ベストケースを「楽観シナリオ」、ワーストケースを「悲観シナリオ」とみることもあります。

今回は、ここまでにします。
次回、「リスクの定量化」について、書いていきたいと思います。

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