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ファイナンス(企業財務)の基本⑥:「DCF法」を、少し別の視点で考えてみる

前回は、投資の意思決定で使う「ディスカウンテッド・キャッシュフロー法(DCF法)」について書きました。
今回は、前回とは少し別の視点で、DCF法を考えてみたいと思います。

まずは簡単に、前回のおさらいです。

DCF法とは?(前回のおさらい)

DCF法とは「資産価値を、当該資産が生み出すキャッシュフローにもとづいて求める方法」です。DCF法では、すべての資産の貨幣的価値を、それが将来生み出すキャッシュフローの現在価値として計算します。

また、その際の必要情報は下記3点です。

  • 将来のキャッシュフロー

  • 期間

  • 割引率

DCF法で事業価値を評価する

前回ご紹介した例ですと「DCF法は、設備投資の判断で使うのかな?」のようなイメージを持たれた方もいるかと思います。たしかに、「設備投資の判断で使う」というのは、正しいです(詳細は、次回書いていきます)。

ただし、「設備投資の判断だけ」ではなく「事業価値を評価する(はかる)」という場面でも、DCF法は使われます。(それに紐づいて、M&Aなどの際にも、DCF法が使われます)

すなわち、事業価値も、その事業が将来生み出すキャッシュフローの現在価値として計算できます

たとえば、5 年間で終了する事業で、1 年目から5年目までのキャッシュフローが以下のように予測され、割引率10%という場合の事業価値は、以下のように計算できます。

事業価値の計算例

DCF法以外の事業価値算定方法

事業価値を評価する方法は、DCF法以外にもあります。
そこで、少し話は逸れますが、「DCF法以外の事業価値算定方法」も紹介したいと思います。(それぞれの方法の詳細は、また別途、書いていきます)

マーケットアプローチ
「その事業を市場に出せば、どのくらいの価格で取引されるだろうか」と推定する方法
です。実際に近い過去に取引事例があれば、それを参照します。

ない場合は、類似業種の取引事例に一定の係数をかける「マルチプル法」使われます。

「マルチプル法」は、まず算定しようとしている事業(企業)によく似た構造をしていて、かつ市場で価格がついている別の事業(企業)をベンチマークします。

次に、この比較対象事業(企業)の市場取引価格は、それらの事業(企業)の評価のベースとなる数値の何倍に相当するかを見ます。
このとき見る指標としては、売上や利益、資産額などがあります。株式時価の価値算定ならば、PER(株価収益率)や PBR(株価純資産倍率)などがよく使われます。

そして、算定対象事業(企業)のベースとなる数値に、上記倍率を掛けて、算定対象の事業(もしくは対象企業の株式)の時価を求めます。

コストアプローチ
「その事業を新たに作るとしたら、どのくらいのコストがかかるだろうか」と推定する方法
です。

事業に必要な固定資産や人的資源など、資産を個別に評価して足し合わせます。資産評価の仕方によって、さまざまな方式があります。

その事業を清算して各資産をバラバラに売却したらどのくらいの価値になるかという清算価値法も、各資産を個別に評価してその値を足し合わせるという意味では、この考え方と同様と言えます。

今回は、ここまでにします。
次回は、「投資の意思決定」について、もう少しテクニカルな内容を紹介していきたいと思います。

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