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さよなら、一目惚れのひと

これまでの記事で分かる通り、
私は動物が好きなのだ。

国立公園に遊びにいくようになってから、
いろいろな種類の動物を見れる機会が増え、
自然動物に興味をもつようになった。

私のお気に入りはグレイシャー国立公園で出会ったマウンテンゴート。
彼らの美しさや愛らしさ・強さに惹かれ大好きになった。
現地でマウンテンゴート写真集を発見し、
今でもそれをよく眺めている。


マウンテンゴートを題材にした過去の作品↓


今回の狙いはバイソンとムース。
だがまだ雄のムースにお目にかかれていない。
”Moose Ponds"(ムースポンド)で見れるかもしれない。
という情報を得た私たちは、早朝ムースポンドに出向くことにした。

兎アート

狸と雑談をしながらムースポンドトレイルを歩いていると、
ガサガサっという音が聞こえたので前方に目をやった。
すると2頭の雄シカが葉っぱを食べている。
人間に慣れているのか逃げようとしない。
シカもかわいいけど今回のお目当てはムース様だ。

更に奥に進んでいくと他のハイカー達が興奮した様子で
「ムースポンドにムースがいたよ!」と、
情報を共有してくれた。
私たちは彼女らにお礼を言って先をいそいだ。

ムースポンドが遠くに見えた時、
沼の中で何か動いているものが見えた。

雄のムースだ!!

私の顔はあからさまにニヤついていたに違いない。
遠く向こうではあるが、雄ムースにお目にかかれたのだ。
だが後ろ姿なのでまだ顔が見えない。
私たちは彼に近づこうと静かにトレイルを進んだ。

しかし彼は水浴びを終えていたようで、
沼から抜け出し森に入って行ってしまったのだ。
もう彼の姿は見えない。

後ろ姿の写メは撮れたけど…
なんだか悔しくなった。
あともう少し早く着いていたら、
もっとじっくり観察できたのに…

肩を落とした私だが、
まぁしょうがないか。と歩き出した。
とぼとぼと歩いていると野生動物の臭いがした。
さっきのムース、この辺でトイレでも済ませたのかな?


突然狸が立ち止まった。
トレイル前方を見ると、雄のムースが静かに葉っぱを食べている。
その距離10メートルほど。
私はゴクリと唾をのみ込んだ。
スマホを取り出し写真と動画を撮り始めた。
怖がらせたり興奮させてはいけない。
十分な距離をとりつつ観察を続けた。

興奮している私たちに気が付いたのか、
彼は私たちの方を見つめた。
私は彼と目があったような気がした。

つぶらな瞳。
丸みのある鼻に笑ったような口元。
編み込んだだようなあご髭。
大きな角に肉付きの良い体。

電撃が体に走った。
そうだ、思い出した。
これは私がマウンテンゴートに出会った時と同じ感覚だ。

一目惚れ…

人生の伴侶となった狸が目の前にいながら、
私は他の男性に惹かれてしまったのだ。

彼が森の奥へ消えていくのを私たちは見送った。
さよなら、一目惚れのひと。

その後何もなかったかのように、
狸と手をつなぎ駐車場までのハイキングを楽しんだ。

初夏の甘酸っぱい恋心の思い出。

※上記のリンクにある写真集を古本屋で見つけ即購入。
星野道夫さんという方の写真集でとてもお勧めの一冊です。


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