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[短編小説]JC・JK淫行条例義務違反

なぁ、淫行条例義務違反って法律なかったっけ?」

深夜二時。大学時代の仲間たちと楽しく盛り上がった鍋パーティーは数時間前の終電をきっかけにお開きとなり、間接照明で薄暗くてらされた部屋には、この部屋の主で幼馴染でもある田中と私の二人だけが残っていた。すでに話すことも無くなっていたが、旧友との久しぶりの再開だ。このまま話を終わらせて眠ってしまうのも惜しい。田中もそんな空気を感じたのか、ソファに寝っ転がるような姿勢でゆっくりと話しだした。

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「なぁ、淫行条例義務違反って法律なかったっけ?」

「何だよそれ。それっぽい響きだけどそんな法律は無いだろ。」チューハイの缶の底に残った最後の一口を流し込みながら私は答えた。

「正式な名前は別にいいんだよ。法律だか条例だか忘れたけど、俺って昔から大人になる節目についてよく考えてたんだよ。」話の流れが見えない。

私が黙っていると田中は続けた。

「学校でさ、法律とか少し習うじゃん。青少年がどうとか。子供って大人になるのを楽しみにしてると思うんだよ。18歳になれば車も運転できるし、20歳になれば酒もタバコも自由にできる。早く18歳にならないかなって少なくとも俺は思ってたんだよ。」

「確かにそういうことはあったかもな。」乗り気でない私の返事が気に入らなかったのか、田中は少し体を起こした。

「それでな、13歳だったかな?あー、もうこれで人を殺せないな。って思ったことがあるんだよ。道徳の授業だったか、社会の授業だったか、それはもう覚えてない。だけど先生に言われたんだよ。"あなた達はもう大人です。大人の法律で裁かれます"ってな。」

なるほど、言われてみればそんなことがあったかもしれない。

「俺は怖かったね。何かの間違いで人を殺してしまうかもしれない。そこまでいかなくても、怪我をさせることはあるかもしれない。その時には刑務所行きかよって。ムカつくあいつを去年のうちに殺しておけばよかったな、とかさ。」クラスの中でそんな物騒なことを思っていたのかと、私はいささか驚いた。突然切れる子供ってのは田中みたいな奴のことかもしれない。

「さすがに本気で殺そうとは思わなかったけど、子供の頃の方が好き嫌いはハッキリしてただろ。大人になって感覚を忘れかけてるけど、あの頃は確かに強烈な好きと嫌いがあった。」

淡々と話す田中の思い出を聞いているうちに、私の目にも段々と懐かしいクラスの姿が蘇ってきた。

「その時俺は気がついたんだよ。人を殺すことは無い。それは別にいい。だけど、今しかできねぇことがあるんじゃないか、ってな。」

「…例えば?」

「女子中学生とSEXしたら捕まる。女子高生とSEXしても捕まる。コレは大人になったらもうできないことだ。一生の思い出を作るなら今しかねぇ。俺が中学生、高校生のうちに絶対にSEXするべきだって気がついたんだよ。」

なんて奴だ。俺も彼女は欲しかった。SEXもしたかった。だけどそんな決意は微塵もなかった。

「そういえば、田中は中学の頃から彼女いたもんな。」

何気なく思い出したように答えたが、実は田中の彼女のことはよく覚えている。田中は私の初恋の人であり学年のアイドルでもあった美穂ちゃんと付き合っていたのだ。

「そんでさ、美穂ともしたんだよね。SEX。」

なんてことだ。中学生の恋愛だぞ。手をつないだりキスくらいはするにしても、そこまでいっていたのか。

あぁ、体調不良で病院に行ったらガンを告知された人はこんな気持ちなのだろうか。

「…で、どうだったんだ。」

深く息を吸い、心を落ち着けながら尋ねた。

「うーん、正直あんまり覚えてない。最初の一回なんてそんなもんだろ?中学生がラブホに行けるわけないしな。親に見つからないように緊張ばっかりだったよ。」

聞きたくないような、もう少し聞きたいような。いや、男たるものこの話題を無視することは出来ない。

「…それで?」

「それでさ、美穂も恥ずかしがるわけよ。生まれついてエロい女もいるのかもしれないけど、最初はみんなそんなもんだろ。だけどこっちも初めてなわけさ。二人しておっかなびっくりなんだけど、中学生の男子なんて性欲の塊だろ。段々と俺の要求がエスカレートしていってSEXした感じだな。最初は手を握るだけでも飛び上がるほど嬉しかったし、髪の匂いがした時には気絶するかと思ったよ。抱きしめた時なんかは感動で息が止まったね。」

田中がビールで喉を潤す。

「初めてキスをしたときは、唇ってなんだかイカみたいな感触だなって思った。」

私は美穂ちゃんの薄い唇を思い出す。

「初めてフェラをしてもらったときは、自分の手とこんなにも違うのかって衝撃を受けたね。美容院で頭を洗ってもらうのと、自分で頭を洗うのくらい違う。これわかる?」

私は美穂ちゃんのエクボを思い出す。

「それでさ、初めてのセックスは、まぁ微妙だった。やっぱり女は一回目から気持ちよくなれないだろ?血も出るしな。ぶっちゃけ辛いだけだと思うよ。だけど今でも強烈に覚えていることがある。俺の実家と違ってフカフカした美穂のベッドの上で、美穂がスカートとブラジャーをまくりあげて横たわってるんだよ。少し血も出たから制服を汚さないように気をつけていた。その時、一発やって急に冷静になって親が来ないか心配している俺と違って、美穂はちょっと笑ってたんだよな。涙目だけど落ち着いて笑ってる。」

時計の音が静かに響く。

「ありがとうって美穂が言うんだよ。あの優しいような、悲しいような、どこか運命を受け入れたような笑顔は、ちょっとそれまで見たことねぇな。急に美穂が大人に見えたよ。まだ胸だって大きくないし、顔だって今見りゃ子供だと思う。だけど、あれは大人の女の顔だったな。そんな瞬間に立ち会えたのが最高に嬉しかった。これが男の喜びなんだと感じたね。」田中は徐々に熱っぽく語っていた。

一方で私の初体験はどうだったか。大学生の頃に初めての彼女と自分の部屋で済ませたが、AVの知識がありすぎたせいか少し小さめの胸にがっかりしたことを覚えている。なんて差だ。

「これも今だからわかるんだけど、女子中学生の体って硬いんだよ。高校生もそうだった。俺の感覚だと、女の体ってのは大学を卒業したあたりから急に柔らかくなる。これはこれでいいもんだけど、あの硬さは今思うと特別なものだったな。」

私には無い体験だ。ただ若い女性が「青い果実」に例えられることを考えれば、田中の言っていることは正しいのかもしれない。

「それでさ、ある日俺たち急に怖くなったんだよね。これってひょっとしたら警察に捕まるんじゃないかって。コンドームをこっそり買う時に通報されるかもしれないし、もしかしたら家に入るところを近所の人に見られているかもしれない。そんで調べたわけよ。淫行条例義務違反みたいなやつを。」

田中が悪ガキのように笑った。

「結果はよくわからなかったな。うん。子供同士でも多分ダメなんだろうけど、大人と子供は絶対ダメだ。ならまぁいいかって。」

田中がニヤついている。

「淫行条例義務違反でもいい!それでも俺の性欲は止められない!あの時の俺に感謝!」

田中は勢いよくビールを飲み干し、空き缶握りつぶした。

「話はこれで終わりだ。だけど、あの時にSEXしておいたのは大正解だったな。JCやJKと愛のこもったSEXをする経験なんて、いくら金を積んでも買えないぜ。」

昔話を終えて満足したのか、田中は眠たげにあくびをした。

「さてと、そろそろ寝るか。お前は明日どうする?別に何時までいてもいいぞ。」

田中が歯ブラシを握りながら尋ねた。

「9時頃には家に帰るよ。明日は家族サービスもしないと。あ、ところでさ、美穂ちゃんとはその後どうなったんだ。」

「聞きたいか。また次に遊びに来た時に教えてやるよ。」

田中がニヤつく。

私は学んだ。人生には今しか出来ないことがある。後戻りは出来ないし、過去は変えられない。そして、今しかできないことがあるのだ。

田中が洗面所に歯を磨きに行った隙に携帯電話からLINEを開く。

「深夜にごめん。今週の水曜日ってまだ空いてる?なんとか出張ってことにして泊まりに行けそう。」

夜中にも関わらず、すぐに返信が来た。

「空いてるよ〜。同窓会はどうだった?さすがに美穂と浮気してるとか言ってないよねwww?」

今度の水曜日はいつにも増して楽しみだ。

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