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「フリーランスはメンタルタフじゃないとやってけないっすよ!」と言い切ってる記事にモヤモヤした。

こういうテンポの早い、エネルギーに溢れた方の喋る様子を見ると、思わず手にぎゅっと力が入り、心臓がドキドキする。たとえそれが文章だとしても。

たった数秒前までどんなに「私は私らしくあろう」と考えていても、心臓のあたりから引っ張られてしまう感じがする。「ああ、私もこうあらなきゃ。テンポの速い、仕事のできる感じに。繊細な心など打ち捨てて、鈍感に。タフに。」

私が読んだのは、イラストレーターだったか画家だったか、とにかく絵描きの方の、インタビュー記事でした。

はじめにお断りしておきますと、私はタイトルのように言い切ってしまえる側の人と対話を望んでいるわけではありません。その記事を批判したいわけでもありません。ただ私と同じように、上記の言葉にモヤモヤする人や、繊細(HSPなどとも呼ばれる)であるがゆえに組織ではうまくゆかず、フリーランスを検討している人、または既になっている人などに届けばいいかなと思っています。

またもう一つお断りしておくと、私はフリーのイラストレーター的な立ち位置を目指していますが、まだフリーランスとして成功しているわけではありません。ゆえに、この文章は「メンタルタフじゃなくてもフリーランスできるよ」という断定的な結末ではなく、私が「こうあってほしい」と望む世界について語って締めくくられます。(もし既にフリーランスとしてやっていけている方で、繊細だからこそフリーの方が合ってたという方がいらしたら、ぜひコメントいただきたいです。)

また、この文章は「繊細=メンタルタフじゃない」という前提で話を進めます。本当は「=」で結べる簡単なものじゃないとは思いますが、記事から感じられたインタビュイーの雰囲気だったり、繊細な人で「自分はメンタルタフだ」と言える人は少ないんじゃないかという自分の仮定などから、便宜上そうしています。

前置きが長くなりましたが、本題に入ります。


今現在会社を辞めたいと思っている人の中で、繊細(HSP)な人、性格分析で少数派と出た人、あるいは今抑うつ状態やその他精神的な病にかかっている人、そうでなくてもとにかく疲れちゃっている人はそれなりに多いんじゃないかと思います。

その中で、組織に属することなく、家にいならが自分のできる範囲で、自分でやると決めた仕事ができれば(=フリーランス)なと希望を持っている方も一定数いると思います。

ただ、本当にそう思い始めたばかりなら、まだ何も具体的なことは考えられないと思います。そこで多分、色々検索したり、SNSで流れてきた興味を惹きつけられる記事を読んだりしますよね。例えばイラストレーターになりたい場合、「イラストレーター〇〇が、フリーランス〇ヶ月で月収〇万円稼いだ理由」というタイトルとかすごい興味が湧きますよね。読みますよね。

それで、そこに書いてあることですごく共感して救われたり、元気が出たり、身になることが得られたら、ラッキーですよね。でも逆に、自分の今の性質じゃダメだと強く思わされるような書き方を見つけたら…落ち込みませんか?

それを見て「よしっ自分を変えるぞ!」と前向きになれて、さらにその感じを成功するまで継続できたらいいんですが、多分これを見てくださっている方の大半は、今、疲れている方が多いんじゃないかな…?と思います。疲れているが故に、断定的な言葉に強く打ちのめされて、自分が当てはまらないと、落ち込んでしまう。これは本当にバカにしないでいただきたいんですが、元気な人が見たらバカにしたくなるくらい、自己肯定感ゼロで浅はかで短絡的な思考になります。「そうか。私にはフリーランスなど無理だ。この考えはただの甘えだったんだ。今の会社で頑張るしかないのかもしれない。でも苦しくてどうしようもない…。…死んだほうがいいのか?」

そんな状態、もしくはそれに近い状態の方にいちばんに言いたいことは、どうか真に受けないでほしいということです。もし一つでも身になることがあったら、その記事からそれだけもらっちゃえばいいのです。自分の気分が下がるようなことは、一切取り入れる必要はないです。

なぜなら、その記事はあなたのために書かれていないからです。大体は、インタビュイーや筆者の喋りたいことを書いてあるだけ。「私は成功した。それは私のこんな性格が役に立ったからだ。」これを強く印象付けるために「私は成功した。だからフリーランスは私のような性格でないと成功できない」と間違った言い換えをしてしまっているだけです。本当は前者=後者ではないはずです。しかも後者はもはや主語を「フリーランス」にしちゃってるので最悪です。

また、彼らが成功した要因を細かく分解すると、例えば経歴、仕事の取り方、取る仕事の種類、人脈、本人の性格、本人の家庭環境、貯金…何から何まで合わさって初めて成功したはずです。それも、「真に受けないでほしい」と言った理由です。あなたにはあなただけの上記事項があり、記事の向こうの相手とは比べることが無意味なほど別次元の話だと思っています。(これはレベルが違うという話ではないです。)

「その記事はあなたのために書かれていない」と言いましたが、インターネット上に限った話ではないです。良かれと思って「フリーランス…!?それは難しいんじゃない?」などと言ってくれる親や上司、友達など。多分本人に悪気は全くないです。でも、もしあなたが「あの人にあんな風に言われた…やっぱり自分はダメかも」と思ってしまうくらいなら、それは真に受けなくていい言葉だと思っています。

それは、本当にあなたに向けられた言葉ではない可能性が高いからです。色々な可能性が考えられます。子の収入が不安定になって、経済的に頼られるようになったら困るという親の気持ちがあるかもしれない。業界のことを知っているのは明らかに自分の方だと主張するために、部下の世間知らずを自覚させたいという気持ちがあるかもしれない。自分も本当はフリーランスになりたかったのに、まさか友達が先になるなんてという嫉妬のような気持ちがあるかもしれない。そういう気持ちが100パーセントではなく、どこかに本人を本気で心配する気持ちがあったとしても、それがどこまでの割合なのかは、あなたがどう感じるかでわかるはずです。あなたを本気で心配する気持ちの割合が少なければ少ないほど、その言葉は真に受けなくていいです。

私がどうしてそう思えるのか。もし私が友人に「絵はこれから始めるんだけど明日からフリーのイラストレーターになって1ヶ月で100万稼いで世界一周の旅に出る」と真剣な顔で言われたら、一瞬動揺しますが、本当に本人のことを思うなら、まずバカにはしないはずです。正直いうと、まず始めに自分の方が恥ずかしくなってしまうような感情が湧きますが、それをストレートに伝えるだけで終わることは全く本人のためではないと考えます。本人のその目標は、本人が幸せになる手段であって、最終目的ではないはずです。本人がそれを達成できるかどうかという結果がどうであれ、目標に向かう過程やその結果が出た瞬間、そしてその先、本人が幸せであれるように願い、見守り、できることがあるなら適度に手助けするのが自分の役目だと思います。本当にその人のことを思うなら。

だから、逆に一言で否定してしまうような言葉は、真に受ける価値が一切ないと思うんです。

あと、記事でも言える話ですが、誰だって、人の人生の責任は取りたくないです。だから、「その道は厳しい」とあえていう人は多いです。だけどこれも、本当に自分のために言われているのか見分けることが大事です。

ポイントは、ただひたすらに、自分のための言葉であるか。繊細な性格や精神的な病で毛羽立った自分の心を穏やかにしてくれるものか。自分を落ち込ませないものか、といったことだと思います。

確かに会社勤めで得られる恩恵がいくつかなくなるのは現実です。そこで、本当にフリーランスを目指して、自分は幸せになれるか?ということを考える必要が出てきますが、それは上記のことが満たされてから考えてもいいと思います。その時、何をどう考えるのか。人に言われたことを元に考えるのではありません。まずは自分が幸せになっている姿を描き、それに沿うのか、自分基準で考えるのが一番いいと思っています。

そうして考えたり、実際にやってみたりした結果、「やっぱりフリーランスじゃない方がいいかも」と思ったら、それはそれでいいと思います。それは「失敗」じゃないと思います。「自分の幸せな姿」に近づくために軌道修正しているだけです。だって自分が幸せになることが目的ですから。周りから「ほら、だから言ったんだよ。」などと言われる筋合いはありません。自分で近づいて、考えて、納得することが大事だと思います。どんな結果であれ、最初にフリーランスを検討した自分は決してバカにされるべきものではありません。

記事の話からだいぶ話が膨らみましたが、私が本当に言いたかったことは上記のようなことでした。


さいごに

最近、繊細さん(HSP)の知名度が上がってきているように思います。このことについては、マジョリティである非HSPにHSPの認知をさせたという点よりは、HSPの方自身が自らの特性を自覚し、より無理をしない方向へ考えをシフトさせる人が増えたことの方が意義があると思っています。

そんな流れの中で、より自分に合う働き方を求めて、マジョリティである会社勤めからフリーランスに転向する動きも出てくるのではないかと思っています。

記事を批判したいわけじゃないと言っておいてあれなんですが、そんな時代の流れの中で、主語を「フリーランス」にして強気で人の性質を限定するようなことを言い放ってしまうのは、ちょっと時代にそぐわないかな…とは感じました。

私個人の願いは、多くの繊細な方や、今の働き方が合わないと思っている人たちが、もっと気軽に自分に合う働き方を選択していける世の中になることです。それは、制度やサービスが充実するという意味でも、認知が高まって誤解や偏見がなくなるという意味でも、個々の頭の中の縛りを解くという意味でも。

もっと前向きなことを言うと、繊細さんのような感受性豊かな方々みんなが、無駄な刺激から逃れて、のびのびとクリエイティブな仕事をしたり、心に余裕ができることで周りの人に優しさをどんどん振りまくような、そんな世界を早く見てみたいです。

そういう世界に、早くなってほしいです。

おしまい。



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2023.5.31追記

「フリーランス」と言っていますが、私がフリーランスを選択したのは、最も自分の時間を大切にでき、自分らしい生活を送ることを目的としてのものでした。

そして何より「本来の自分を取り戻す」ということ。
そのため、会社員→フリーランスの間に、無職期間も挟んでいます。

私がそのようにして会社を辞めるときに読みたかったなと思えるものを、作りました。

この記事を読んで共感された方、
「今仕事が辛くて、どうしたらいいかわからない。」という方に
ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。


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