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逃げる、から始まっていた



大人になって、特にここ数年で顕著に低くなっていったのは、「行動力」の壁だった。

仕事を変えたのも一つ大きかったし、在宅ワークがゆえに、広がらず深まらずな人間関係をどうにかしたくてSNSで新たなコミュニティを見つけたのも、些細かもしれないけれど何かが変わるきっかけになった。そう思っている。


誰ひとりとしてその人の背景がわからない場所に飛び込んでみるのは、簡単なことではなかった。飲んでみなければ、天然水か泥水かはわからない。やっぱりそれなりにリスクはある。

周りにはいない種類の人たちと関わることもあるわけだから、それは面白くもあって、普段なら取っておけるエネルギーを使うことにもなるのだった。


けれど、そうした場に出向くことを繰り返すうちに、少しずつ自分の世界が広がっていくようでうれしかった。



最初に自ら環境を変えたのは、高校だった。

中学はどうも馴染めなくて、自分の居場所はここには無いような気がしていた。

電車の空いている席に座った時、隣の人がわたしから遠ざかるように、お尻の位置を少しズラす。この「調整」行為に特別深い意味は無いと思っているが、針を軽く刺されたみたいに僅かに傷む。
そういうことが、毎日少しずつあった。


できることなら、誰も知らない場所に行きたい。

向き合う強さがなかったから。
わたしは「逃げる」を選んだんだった。


「逃げる」ということは、新たに「探す」ことでもあって、それはいつしか自分で自分を慰めてやれる手段になった。

今後、ステージをがらりと変えたくても簡単には変えられない状況に出会うかもしれない。一度耐えてみて、それでもダメだったらまた探せばいい。

大人になるということは、抜け道を選びやすくなる、ということだと思うから。

よくよく考えてみると、RPGには必ず『逃げる』ってコマンドがあるだろ。どんな勇者でも、逃げていいんだよ
『明け方の若者たち』カツセマサヒコ


探す手間や時間がかかるだけで、息がしやすい場所はきっとある。

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