追記:肉を食べたい人ほど、昆虫食を推進するべきだという話など

前回のNOTEを書いてから沢山のご意見をいただきました。中には興味深いものもあるので、ご紹介させていただきます。

肉を食べたい人ほど昆虫食を薦めるべきでは?

この意見は非常に面白かったです。矛盾するようですが、昆虫食なんて絶対にヤダ!!!みたいな人ほど熱心に昆虫食を推奨したほうがいいんですよね。

なぜなら、今まで書いてきたことからも分かるように、嗜好品である肉の値段は上がっていくことが予想されているわけです。ということは、誰かが昆虫食を選択してくれれば、その分自分の取り分が増えるということです。

となると、虫が嫌いだから昆虫食反対!という人は、戦略的に間違っているってことなんですよね。正しい戦略があるとしたら、「昆虫食を広げましょう(でも私は食べないけど)」なんですよね。昆虫食に挑戦している企業を叩くなんてもってのほか。その企業は貴方の取り分を増やしてくれるのです!

でも、全員がこういう戦略を取ると、お互いの腹を探り合うことになって、お互いにギスギスしがちなもの。やっぱり、なんでも美味しくたべられる方が、人間幸せですね。

農地の拡大は限界なのか?

「農地の拡大はもう限界だから、作物を増やす方法は無理筋だ」という意見を見ました。

結論から言えば、限界ではないです。ただし、変な話ですが、私は限界であって欲しいと思っています。なぜならその分森林が保護されるから。

世界には森林がまだ40億haほどあるそうです。大抵は山とかで農業には適さないものの、切り開ける場所はまだまだあります。北海道だって、道東の方では平地を森が覆っているような地域がまだありますからね。

でも、森林の伐採は環境破壊に繋がりますので、できるならやって欲しくない。(土壌が流出したりして、大変なことになる可能性大です)

この件に関しては、どうやら、こちらのページを元に「もう限界に達した」と考えている人もいるっぽいんですが、

私なりにちまちま読んでみたところ、このページで指摘されているのは、「人類が使える土地がもうない」ではなく「(まだ切り開ける場所が残っているのに)農地の拡大が止まった」ってことなんですよね。本文中でも「人類と地球との関係における歴史的瞬間(自然破壊が止まった)」なので、どちらかというとプラスの評価なんですよね。(間違っていたらすみません!)

なぜこんなことになっているのか、おそらくは経済的な理由によるものでしょうと。農地を拡大するより、今ある農地に肥料を投入して収穫を上げた方が早いから。広く浅く農業をするより、肥料を投下して、狭い土地で収量をあげたほうが管理もしやすい。

もっとも、本文中でも言われていますが「先進国で農地が減少しているのに、発展途上国では増えている」という状況があるそうです。つまり、これも経済的理由によるもの。先進国で農業をやるより、発展途上国から買い上げるほうが安いから。でもこれって、お金で発展途上国の自然環境を破壊しているようなもので、かなりどうかと思いますが……

我々はどうなのかというと、農林水産省が統計を出しているんですが

https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/10.html  より

荒廃農地だけで28万haもあって椅子から転げ落ちるかと思いました。マジで??そんなに??札幌市二つ分の土地が??にわかには信じられませんが、統計的にはそうなっている。また再生可能(年々この値が減っているということは、自然に戻ってしまった土地があると言うことでしょうが)に限ると、9万ha。大体広島市と同じぐらいです。

グーグルマップで広島市で検索

結構でかいな!ってことは、日本全国にコストは掛かるものの、直そうと考えれば、これだけの土地が確保できるということです。考えてみれば、北海道の山奥とか集落がまるごと消えてしまった土地とかありますもんね。そういう数字が全部足されているのと考えると、納得もできます。

ということで、農地の拡大は限界になっていません。むしろ日本の場合減少すらしています。発展途上国の森林を切り開いて環境破壊するより、自国の農地を復活させたほうが良いように思えますが……。この歪な状況、なんとかしたいものですね。

サハラ砂漠に入植だ!

環境破壊をせずに、単純に農地を拡大したい!というのでしたら、私が期待しているのが、海水淡水化によるサハラ砂漠の灌漑農業です。サハラ砂漠に工場のような農業プラントを作り、そこで、海水を淡水化した水をパイプラインで送り込み農業を行う。実は既にイスラエルやアラビア半島の諸国では取り組まれている方法だったりします。

海水を淡水化するためには結構なエネルギーが必要なんですが、サハラ砂漠は雨がふらないので、一年中ピーカン照り。もしここに、太陽光パネルを設置すれば人類が消費する何倍ものエネルギーが手に入ります。もっともサハラを全部覆うなんてかなり無理がある想定なんですが、その一部だけでも莫大なエネルギー。雨がなければ曇りもないので、日光は常にバリバリの100%、植物も元気に育つ。元々何にもなくて使えない土地なので、環境破壊の問題も出てこないのも良いところです。遺伝子組み換えみたいなヤバい系の植物を育てても、だだっ広い砂漠が障壁になって外には漏れ出さないぞ!害虫だってだいぶ減るはず。フハハ、害虫どもめ。不毛の砂漠を何千キロも飛んでこれるなら来るが良い!!え?サバクトビバッタ!?そんなぁ……。たすけてバッタ博士!!

個人的な思いですが、イーロン・マスクは、火星に入植する前に、一回サハラに入植してみてはどうでしょう?何しろ、空気も重力もあって、水はパイプラインで手に入れられるし、太陽光エネルギーだって数倍の密度で手に入ります。
火星に入植する技術があるんだったら、サハラだって余裕のはず。案外快適で動きたくなくなるかも?

問題があるとすると、コスト。食べ物が高騰してもそんな未来的な生産方法に見合うだけのコストが実現できるかは謎だからです。これは技術革新に期待ですね。全自動にして、ある程度の規模を用意すれば、どこかでコストがペイされる時が来る?

肥料が枯渇するのでは?

「農地が広がっても肥料が枯渇するから意味がない」という意見もいただきました。これはマジでその通り。なんですが、肥料なしでも収量が悪くなるだけで作物は取れるので、残念ながら結局農地は拡大するでしょう。

植物が必要とするのは、大きく窒素、カリ、リン。このうち、窒素は空気中から窒素固定で回収できますが、リンとカリは鉱石から抽出しています。この二つは枯渇が心配されていて、結構な問題になっています。特にリンの方の枯渇が早い。

リンは私達が食べた後、排泄物として出てきます。昔みたいに肥溜めで肥料として戻せば良いんですけれども、今はそうしないんで、リンはそのまま下水処理場を経由して海に流れていってしまいます。流れたリンは植物性プランクトンの大量発生なんかを誘発して環境問題になっているぐらいです。

流石にこれはまずいだろう。ということで、最近下水からリンを回収する試みが出てきました。

実は、この回収技術って結構昔から言われてたんですよ。というか、リンが枯渇するなんてことは、もうずっと前から解っていたことですし……で、なんでそれがもっと早めに行われなかったのかというと、また経済的な話になるんですが、結局コストが割に合わないんですよね。

ということで、肥料が枯渇する日はやってくるんですけれども、そうなれば、それに見合った分だけ値上がりし、そうなると回収技術もペイできるようになるので、肥料がある日突然なくなる!というシナリオは多分こないでしょう。今みたいな安価な生産は難しくなるかもしれませんが、ある程度時間の猶予は生まれるはず。

私個人としては、リンの回収技術に注力した方が今後有利になりますので、リンの輸入に関税をかけて、国内でのリン循環を進めたほうが良いのでは?なんて、素人考えを持っていますが、でもやろうとしたら色々と難しいんでしょうね……。

いくら穀物を作っても、肉に変えられてしまうから無駄では?

一瞬こんなことも思ったんですけれど、日本という例外があるんですよね。我々は世界でもかなり裕福な部類です(もっとも、かつては……で語られる方が多いですが。せ、切ない!)なのに、肉類の消費は大したことがない。

https://www.asahi.com/sdgs/article/14407143  より再び引用

ちょっとまって? 一人当たりのGDPだと日本は裕福ではないぞ?というのも確かにそのとおりです。でもそうなると、中国がおかしい。一人当たりGDPだと日本より遥かに下なのに、日本より肉を食べている。

2019年のデータだと、ノルウェーはアメリカより、一人あたりのGDPが高いのに、肉を食べていないです。

ここから分かることなんですが、「裕福さと肉の消費量の比例はどこかで頭打ちになる」ということではないでしょうか? つまり、最初は収入と比例して肉の消費量が上がっていきますが、どこかでブレーキがかかる。おそらく文化的な影響が強いのだと思いますけど……。

なので、穀物を作っても作っても、肉に変わってしまう!という状況は、永遠には続かない。どこかで歯止めがかかるはず。
もっともそれがいつなのかはわかりませんが……(なんと、困ったことにアメリカがいつ肉に満足するのか、私たちはまだ知らないのです……)

しかし、こうしてグラフを見てみると、文化的な影響でこれだけ差が出るってのはなかなか面白いことですよね。必死に生産を増やすより、例えば、日本的な食生活を先進諸国がするだけで結構な削減ができるわけです。いや、その日本でも世界平均より多くの肉をたべているわけで、もっと減らせるかもしれない。

ここらへん、盲目的なナショナリズムになってしまうと困るので、単純に日本をAGEる気にはなれないんですけれども、同じ先進国という枠組みで見るなら、やはり日本との比較が的確だと思います。数字を見る限り「同じぐらいに豊かなのに、どうして違いが生まれるの?」というのは単純な疑問なんですよね。意識改革や教育でどうにかなるんだったら、これは素晴らしいことですよ。

なお、数字を見る限りは日本は良いスコアを出しているんですが、これが最強かというとそんなことはないです。数字を見る限り、インドの肉の消費量の少なさがとにかくすごい。むしろ皆インドになるべきかもしれない。ただし、前にも書きましたが、単純に全員の所得が低いだけの可能性がありますので、ちょっと保留させてください。

それはともかく、インドの食事には大変興味が湧いてきました。頂いたコメントだと、豆を沢山食べるのだとか。うーむ、ぜひ取り入れたいものです。

日本人は魚を食べるからその分を考えないといけないのでは?

「日本人は魚を食べるから、その量を考えなければならないのでは? 養殖魚も結構環境負荷が高い」

おお!! 確かに、いい指摘です! ということで、早速日本人はどの程度魚を食べるのかが気になってきました。そこで、ちょっと調べてみたところ、なんと、厚生労働省が日本人の食生活について報告している資料が出てきました。

こんなことやってたんだ……めちゃくちゃ役立つやんけ!!ありがとう厚生労働省!

調査方法も面白いです。予め決めた調査日にその日一日食べたものを、秤をを用いて記入させる。外食とか給食も全部だそうです。

どうせならこういうの、抜きうちでやって欲しいですよね。「動くな!食卓調査だ!!」みたいに黒ずくめの男たちがドカドカ乗り込んできて、食材を秤で測って嵐の様に去っていって欲しい。

と、まあそんな話はさておき、結果です。

令和元年国民健康・栄養調査報告 第 1 部 栄養素等摂取状況調査の結果 より

単位はグラム数だそうです。標準偏差が荒ぶってますけれど、これは前述した調査方法によるものでしょう。つまり調査した日にたまたま食べていたものだけが結果として現れるから、ばらつきが異常に大きい。こんな調査方法で大丈夫なのか?と一瞬思ったんですが、沢山の家庭を調査すれば、なんとなくどんな食品が多く食べられているのかは分かるわけで、問題ないのかも。

んで、これを見ると、我々日本人は平均して一日に魚介類を64.1g、肉類を103.0g取っていることがわかりました。大体、1.6倍ぐらい肉の方を多く突堤ます。

なんと!日本人は魚をよく食べる。というのはもう既に過去の話だったんですね。今の私たちは、肉の方を1.6倍食べる。

ってことは、以前説明したグラフに照らし合わせても、日本人の肉+魚よりも多くの肉をアメリカ人が消費しているわけで、やっぱアメリカがなんかおかしい。アメリカの何処かにめちゃくちゃ肉を食う人がいて平均値を押し上げているのか???

結論としては、魚介類の消費も考えなければいけないのは確かですが、それでもアメリカの肉の量が多いということでした。

ジャック・アタリ氏の発言って酷いよな……

そういえば、NHKの年始の番組で、ジャック・アタリ氏が昆虫食に対して言ってて、批判されてたなぁと思って発言を探してみたんですが、思った以上にひどかった。

その上で農業政策を大幅に見直すことです。より多くの土地を農業に使えるよう長期的な政策を考え、食生活を変化させ、別の食材に切り替えること。例えば、昆虫や雑草などです。日本には優れた調理人がいるので、うまく調理できるはずです。これはやらねばならないことであり、やればできることなのです。昆虫、雑草などを取り入れ、牛肉を食べることを極端に減らせば、日本の自給率は大幅に高まります

ジャック・アタリ氏の発言から

これまで読んでくれた人は理解していると思いますが、とんでもない見当違いな発言です。まず昆虫食は飢餓には役に立ちません。山から取ってくるなら別ですけれども、それって結構コストがかかりますよね(北海道の場合はシカを狩った方が早い)あと料理人の話がでてくるのも意味不明です。

雑草に関しては、そもそも食べられないから雑草なんですよ。人間にとって利用価値が高ければ、別の名前がついている。もしくは、もう栽培されている。利用価値がないからこそ、その扱いなんです。そして、そんな雑草が生えている土地があったら、農地にして別の作物を植えた方がいい。(または北海道みたいに牛を飼う)

「山からの恵みで生きていけばいいだろう」みたいな考え方は、結局狩猟採集民族の生活をする。ということなんですが、ここらへん人類OTAKUならピンとくると思いますが、狩猟採集民族の生活ってものすごい土地が必要なんですよね。我々の人口密度ではとてもじゃないけれど、支えきれません。

どれだけの土地が必要か……は算定によって異なりますが、

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscfh/28/0/28_47/_pdf

こちらのPDFによると、狩猟採集民族の人口密度は0.04(人/Km^2) ~ 1.0(人/Km^2)程度だそうです。つまり、一人当たり、1平方キロメートルから、25平方キロメートル。ちなみに我々は一人当たり0.003平方キロメートルの土地しかありません。

こういうので、やっぱり腹が立つのが農業への軽視だってことですよ。人類は何千年もかけて農業というテクノロジーを進化させてきました。その土地ごとに膨大な試行錯誤の積み重ねで最適化してきたわけです。その結果、これほどにまで密集して住むことが可能になった。それを無視して「そこらへんの草を食えばいいじゃん」と言うのは、人類が築き上げてきた歴史と文化に対する侮辱ではないでしょうか。

ジャック・アタリ氏は農業は専門ではないのかもしれませんが、それにしたってこのレベルの認識の人を「知識人」という枠組みで呼んでくるのがそもそもの間違いでしょう……。

なお、農林水産省は「日本の農地を全て食料生産に割り振った場合、国民の食を守れるのか?」という試算を出しているんですが、「ほとんどが芋になるものの、可能」という結論を出しています(肥料が入ってくる前提というので、ちょっと無理がありますけど!)虫とか雑草とか全く関係ありません。農業が専門の農林水産省の官僚と、フランスの経済に詳しい人、どちらの意見が正確なのか?と言われるともう決まってますよね。

以上、いくつかの補足に関してでした。

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