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kairi

死んでしまうぼくばかり
骨になる
骨になった
珈琲は淹れたばかり
でもきみは飲まない

肺を燃す蟠り
鉛色の塊
街路に射す灯りが
妙に貧しいや
火はもうつかない
きみはそれを知らないふり

透けてしまう嘘はなに
金になる
金になった
珈琲は冷めた愛
きみには飲めない

まるで意味を成さない
口だけの思い遣り
深夜のコンビニで
自由ごっこでもしようや
シンクの血溜まり
ぼくはそれを知らないふり

ただいま
おかえり
聞こえない東京

“愛してしまって”
いまにも融けそうな角砂糖で
頭は不安定
傘を差すまでもないけど
あした雨だって
偏頭痛の所為にすれば
耐えられるのかな
全部疑って
きみはきみをも蝕んで
消えたい
消えたいと
虚が宣っている
明け方の薄靄に重ねて

冷えきったカルボナーラに
翅が舞う
翅が舞った
珈琲は砂になり
死んだ

まるで海を持たない
土地で溺れるみたい
新宿の臭いに
群がるプロレタリア
駅のムラサキ
それだけが美しい顔をして

吐き気も
飢餓感も
忘れるほど

“kairi”が始まって
ぼくは皮膚できみを探した
都心に巣立って
失くしたものを蒐めた
“愛してしまって”
きみの言葉が頬を濡らした
孤独に似た部屋
全部辞めたって
きみはきみでもいいんだって
冷たい
冷たいと
骸が横たわっているだけなのに

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