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パニック発作:高速道路

目的地に着くまで
下道だと1時間
高速だと25分で到着する場所に行く予定があった。
普段なら迷わず下道で行くところだけど
その日は高速で行こうと決めていた。

新幹線も急行電車も高速道路も
不安が強くなる原因は同じ。
すぐ止まれる場所にいない事が怖い。
自分の意思や都合で止まれない状況になることが怖くなる。
もし発作が出たらどうしよう。
こうなったらああなったらどうしようと
キリが無いほど考えてしまう。
予期不安
発作が出た後どうするかよりも
発作が誘発される可能性のある場面が次々浮かんで恐ろしくなる。
この思考は簡単にコントロール出来ない。

高速は次のインターまで走ればいつでも降りられる。
次のインターまで数分の距離。
大丈夫だったと成功体験を作れば
怖くなくなるはず。
負けたくない。

高速に入った。
3つのインターを通り越すことが出来た。
15分くらい走り続けられてる。
後10分程で高速が終わる。
大丈夫、このまま行けそう。

カーブを曲がってトンネルに入ったところで
車列が重なってるのが見えた。
前方のテールランプが連なってる。
渋滞?
事故かな?
速度が落ちる。
低速で少しずつしか進まない。
カーブの先が見えた。
真っ暗なトンネルの中で赤いテールランプが
二車線に渡って何十台と続いてる。

それを見た瞬間
頭の中が恐怖で占領された。
だめだ、怖い。
もう少しなのにこんな所で詰まるなんて。
ここで発作が出たら大変な事になる。
渋滞に次ぐ渋滞。
それだけは絶対に避けないと。
動悸が激しくなる。
その鼓動が恐怖を煽る。
嫌だ、我慢して。
呼吸を、深呼吸を。
息が吸えない。
息がたくさん吐けない。
死んでしまうかもしれないが止まらない。
隣の車に視線を向ける。
気が散らない。
携帯を触る気にならない。
手が震えてすぐそこにある携帯を取る事が出来ない。
やばい。
どうにかしないと。
意識が飛ばないように何とかしないと。
酸素を、身体に酸素を。
窓を開ける。
外の空気を浴びて、
空気がたくさんある事を自分に言い聞かせる。
車は停まってない、少しずつ進んでる。
前の車のテールランプだけ見てればいい。
ずっと先は見ない様にしよう。
わかってる、わかってるけど、
やっぱり怖い。
お願い、早く進んで。

普通なら1分程で通過出来るトンネル。
この時は事故渋滞で10分程掛かった。
トンネルを抜けてすぐインターを降りて
近くのコンビニに車を停めた。

極度の緊張とパニック発作の疲労で
動けなかった。
シートを倒す力も出ず
全身脱力した状態で外の景色をじっと見ていた。

高速よりも渋滞が怖いことを知った。
新幹線も急行電車も渋滞も
私には同じレベルのトラウマになった。
ショックで涙も出なかった。






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