何が変わった?「次世代の監査への展望と課題」 その1

2019年1月31日、個人的に待望だった、

日本公認会計士協会
IT委員会研究報告第52号「次世代の監査への展望と課題」

が公表されました。

60ページにわたる中身は、
・AIが会計や監査に及ぼす影響
・20年来の「監査人の見果てぬ夢」であるCA(Continuous Auditing)
・2030年頃の公認会計士像
などなど、会計・監査の視点以外にも、最新テクノロジーが社会にどのように浸透していくかという視点でも楽しめる読み物となっています。

で、その中に4ページほどRPA関連の部分があります。
2018年10月に公開された草案については私も協会にコメントを送り、その内容はこちらのnoteでも紹介してきました。

RPAについて会計士協会に意見を送った(4:意見 その1)
RPAについて会計士協会に意見を送った(5:意見 その2)
RPAについて会計士協会に意見を送った(6:意見 その3)

では公表された最終版はどうなったかと言うと・・・・

「めっちゃ反映されとる!!!」


ここまで真剣にご検討いただけるとは感動いたしました。

という訳でこの感動の勢いに乗って、

・草案からどこが変わっているのか?
・それが意味することは?

以下解説いたします!


修正(1)

草案:RPAは、人の作業をサポートすることが主な役割であった従来のシステムとは異なり、システム自体が作業を担うことに大きな特徴がある。
最終:RPA は、人の作業をサポートすることが主な役割であった従来のシステムとは異なり、システム自体が業務プロセスの一部を担うことに大きな特徴がある

作業の自動化はこれまでエクセルマクロなど活用されてきました。その上でRPAがバズワードになった理由の1つは、複数アプリケーションをまたいで業務プロセス(の一部)を丸ごと自動化できることが挙げられます。
この点を反映した文章に変わっていますね。


修正(2)

草案:したがって、デジタルレイバーが力を発揮するのは、明確な判断基準を作ることができる程度に過去の情報があり、また、過去と同様な事象が繰り返し発生し、将来にわたって判断基準が継続して適用することができる領域である。
最終:したがって、デジタルレイバーが力を発揮するのは、明確な判断基準を作ることができる程度に過去の情報等があり、また、将来にわたって発生する取引等の性質が従来と同様であることにより判断基準が継続して適用することができる領域である。

分かりにくいですが、以下が変わっています。
「過去の情報があり」→「過去の情報等があり」

「過去と同様な事象が繰り返し発生し」→削除

「将来にわたって判断基準が継続して適用することができる領域」
→「将来にわたって発生する取引等の性質が従来と同様であることにより判断基準が継続して適用することができる領域」

RPAは所詮ルールベースの処理の塊なので、同じ前提で同じ仕事しか出来ません。
なので、多くのケースでは過去やってきて固まったプロセスを自動化することになりますが、必ずしも過去の仕事だけが対象ではない。

せっかく24時間365日働いてくれるロボットなんですから、
・手作業では不可能だった膨大な分析業務を行わせる
・AIに食わせるためのデータを延々と収集させる
とかロボ特有の仕事が出てくると面白いんじゃないかなと思っています。

このため、「過去」に焦点を置いていた草案から変更されていて嬉しいところです。


修正(3)

草案:RPA が拡大するということは、会計業務で取り扱うデータの標準化や定型化が進むことも意味する。(中略)このことは、監査で活用することができる標準化されたデータが入手しやすくなることも意味する。
最終:RPA が拡大するということは、会計業務で取り扱うデータの標準化や定型化が進むことも意味する。(中略)このことは、監査で活用することができる標準化されたデータが入手しやすくなることも意味する。さらに、より標準化された業務であるほど、人の労働からRPA への置き換えが容易であるため、RPA 導入を促進するために業務プロセス自体の標準化、定型化が進むことも考えられる。

良く混同されており、私自身も混じって使ってしまう言葉なのですが、
「RPA」と「ロボ」の違いを認識することは実は重要だと考えています。

「RPA」とは、業務プロセスを見直して効率化・自動化すること。
「ロボ」は、自動化のためのツール。

なので、
「RPA」での効率化 = 業務プロセス見直しによる効率化 + 「ロボ」による自動化
と言いたい。

そして実際にRPAを進めてみると、
「ロボ」による自動化よりも、業務プロセス見直しによる効率化の方が効果が大きかったりします。

良く「RPAはシステム部門主導じゃなくて経営企画や現場部門が主導すべき」と言われますが、その心はこういうこと。

草案の文章に業務プロセスの標準化を加えたことで、よりRPAの幅広さに対応したリーチの広い報告に出来たんじゃないかと思います。

長くなったので続きは別記事で!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?