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RPAについて会計士協会に意見を送った(4:意見 その1)

長々と前記事までに書きました日本におけるRPAの状況を考えた上で、公認会計士協会に意見を送付しました。以下、草案を引用しながらコメントを付けていきます。あまりにも長いので何個かに分割して投稿します。
※送付した意見は硬い文章にしましたが、適宜柔らかくしています。


3.RPA の活用
(1) RPA の活用が会計業務へ与える影響
RPA とは、これまで人が行っていた作業を機械学習やAIを含むコンピュータによる認知技術の活用により、自動化することをいう。ある部分について人の労働がシステムに置き換わるため、デジタルレイバー(仮想知的労働者)とも呼ばれている。
RPA は、人の作業をサポートすることが主な役割であった従来のシステムとは異なり、システム自体が作業を担うことに大きな特徴がある。

→この部分、これまでシステムは作業を担っていなかったみたいな書きぶりにちょっと違和感が。例えばERPの自動仕訳機能は「作業を担う」わけじゃない??

おそらくなんですが、この「従来のシステム」ってEUCを念頭に置いているのかなとも思うんですよね。例の、私が勝手に当草案とリンクしてると妄想している記事を読むと。

※例の記事→「RPA導入でコンプライアンス違反になる恐れ、必要な対策」(https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/01267/)

そうであったとしても例えばExcelマクロでピンポイント作業の自動化は広く活用されてきたため、例の記事中の言葉を使えば
「人の作業をサポートすることが主な役割であった従来のシステムとは異なり、システム自体が業務プロセスの一部を担うことに大きな特徴がある」
のような表現がベターかと思います。

RPA の導入は、働き方や労働環境に大きな影響を与えると考えられる。例えば、人には労働時間に制約があるがデジタルレイバーは24 時間365 日の労働が可能である、人は集中力の低下などにより作業の質にばらつきが発生するがデジタルレイバーは常に与えられた指示の下同質の作業を実施できる、などである。一方で、デジタルレイバーは与えられた指示の中で判断することはできるが、あいまいな指示を自ら解釈して適切な判断基準を作成することはできない。そのためデジタルレイバーにいかに明確な指示(判断基準)を出すことができるかが、デジタルレイバーが有効に機能するために重要なこととなる。
したがって、デジタルレイバーが力を発揮するのは、明確な判断基準を作ることができる程度に過去の情報があり、また、過去と同様な事象が繰り返し発生し、将来にわたって判断基準が継続して適用することができる領域である。

→このあたりは結構違和感ありです。「過去の情報」を求めるのが謎。
過去データをAIで分析して、という話とごっちゃになってる?とも考えましたが、まさかこの報告書草案に限ってはRPAとAIを間違える訳ないと思います。

ともかく、RPAはロジックの積み上げで動作するため、必ずしも過去の情報やRPA化対象業務の手作業での実績が必要とは考えません。

またRPA導入企業は既存業務の置き換えだけでなく、
・24時間365日労働が可能な点を活かして手作業では不可能だった膨大な分析業務を行わせる
・AI分析用の大量のデータを収集させる
・導入を契機として抜本的に業務プロセスを見直し、新しい業務プロセスにRPAを組み込む
などRPAを活用して「新しい会社の姿」を実現することも期待しているでしょう。

このため、「デジタルレイバーが力を発揮するのは、明確な判断基準が作成可能で、事象が繰り返し発生し、将来にわたって判断基準が継続して適用することができる領域である。」などの方が良いかと思います。

この点で、伝票処理などの伝統的な会計業務はRPA との親和性が高いと考えられる。例えば、請求書について人がシステムに手入力していたものについて、請求書をスキャンした後はデジタルレイバーが請求書の内容を理解し、入力すべきデータを抽出し総勘定元帳などのシステムに登録、検証を行うようなケースが考えられる。
この場合、請求書は過去に膨大な量が存在するため、判断基準を作成するための過去の情報は十分に存在する。

→上に同じ。判断基準を作成するために過去の情報が必要とは限らない。

この例に乗っかって請求書業務ロボを作るための指示(判断基準)を考えてみると・・・
・請求書フォーマットの中で社名、金額、商品、支払期日、銀行口座など必要情報を識別し、文字情報を読み取る
・会計システム上の適切な入力箇所に転記する
・必要な情報の欠落もしくはデータ形式の齟齬があればエラーメッセージを出力する
などが「判断基準」もしくは「指示」となり、過去に作業実績が無くても作成可能だと思います。

また、請求書の内容は過去と大きな変更が発生することは少なく、過去の情報を基にした判断基準が継続して有効であることが多いと考えられる。このように伝統的な会計業務は、豊富な過去の情報が存在する点と取り扱う事象が反復的に発生するものであるため、過去の判断基準が継続的に有効である点で、デジタルレイバーが有効に機能する条件が揃っており、RPA が今後飛躍的に導入される分野であると考えられる。

→「過去」についての言及を削除しても良いんじゃないでしょうか。

「また、請求書の内容は大きな変更が発生することは少なく、判断基準が継続して有効であることが多いと考えられる。このように伝統的な会計業務は、取り扱う事象が反復的に発生するものであるため、判断基準が継続的に有効である点で、デジタルレイバーが有効に機能する条件が揃っており、RPA が今後飛躍的に導入される分野であると考えられる。」

また、RPA が拡大するということは、会計業務で取り扱うデータの標準化や定型化が進むことも意味する。これは、RPA が正しく判断し処理を行うためには、判断のための正しいロジックを与えるとともに、判断するデータにもある程度の均一性が必要となるからである。このことは、監査で活用することができる標準化されたデータが入手しやすくなることも意味する。

→社内にRPAを導入して得た実感として、データの標準化や定型化だけじゃなく、そのデータを生み出す業務プロセス自体も標準化や定型化が進むと感じています。

なぜなら、効率的に標準化・定型化されたデータを生み出すためには業務プロセス自体を見直して標準化・定型化する必要があって、その際は既存のRPAロボを活用しやすいようにRPA導入済みの類似の業務プロセスに寄せていくことが多いから。

これは内部統制評価および内部統制監査上も業務プロセスを理解・評価しやすくなるメリットがあると考えられます。

ただ一方で、業務プロセス変更によって既存のコントロールが消滅するリスクに注意する必要も出てくる。

RPA は、業務効率化に対する意識が高く、ビジネスプロセスのアウトソーシングが盛んな欧米で広まってきたが、近年、日本でも労働力不足問題の高まりとともに、大きな注目を集めるようになっている。


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