ゼルダティアキンのラスボス戦がなぜ最高だったのかゲームデザインの観点で解説するよ
前置き
ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダムをクリアした。ラスボスとエンディングが非常に素晴らしかった。自分がこれまで遊んだゲームの中で、最上級と言えるようなゲーム体験がそこにあった。
グラフィック、展開、音楽、ストーリー、演出など全てが素晴らしかった。だがそれだけではない。最初は気付かなかったがしっかり観察していくとゲームデザイン面でも様々な工夫がされていることが分かった。
本記事では、私ニカイドウレンジがプレイして気付いたラスボスのゲームデザイン的工夫について解説していきたい。ゲームを理解することの助けや、ゲーム開発の助けになれば幸いだ。
逆にゲームデザイン以外についてはほとんど語らない。演出や展開や音楽などについて詳しく知りたければ、じーくどらむす氏の記事が詳しいのでこちらをお読み頂ければと。
まずは注意事項。
注意①:本記事はゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダムのラスボスについて盛大なネタバレをしています。未クリアの方は必ずクリアしてください。
注意②:「クリアした人だけ読んでください」じゃないです。「クリアしてください」です。最悪読まなくてもいいので、ラスボスを体験してください。エンディングを体験してください。ゼルダティアキンをちゃんと最後までクリアしてください。できればメインチャレンジを一通り消化した上でクリアしてください。
そんくらい、ゼルダティアキンのラストは素晴らしかったので。
注意③:これから解説する内容は手品のタネあかしに近い内容になってるので、夢が壊れるかもしれません。
問題ないですか? それではどうぞ!
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理想のラスボス戦
まず前提として、ラスボスではこのような体験ができると最も良いと考えている。
①その敵を倒すべき、倒したいと強く感じられている
②その敵がとても強い存在だと感じられる
③ピンチとチャンスが交互に発生する、ハラハラドキドキするバトル展開
④初見で一度もやられることなく倒せるとベスト(ゲームによるが)
⑤倒したときに強い達成感が感じられる
⑥物語を終わらせるための儀式として、強い感動を生む体験となっている
これに大きな異論がある人はいないはず。問題は、これをどうやったら実現できるか、だ。
①に関しては、竜の泪を中心とした物語で「ガノンを倒したい」「ゼルダを救いたい」と強く思えるようになっていたはず。②~⑥に関しては「初見で倒せて、でもちゃんと敵が強いと感じられる」と一見矛盾した事を言っているように見える。
自分的には、ゼルダティアキンのラスボスは理想的なラスボスだと思っている。後に続く展開と合わせ、最高の体験がそこにあった。その体験がどのように実現したか解説していきたい。
ガノンドロフ戦①:適切なバランスを保ち適切なゲーム体験を与える
人型のガノンドロフとのバトル。イベント戦ではなく、ちゃんとボスとして攻略する必要があるゲーム性が高いバトルだ。このバトルにはいくつかの見所がある。
自由度を奪うことで適切な体験を
ガノンドロフ戦は、事実上「マスターソードで戦う」一択となっている。選択の自由があるものの、実際は…
マスターソードの物語的重要性について十分に説明済み
マスターソードを取るチャレンジを発行し獲得することを推奨される
ガノンドロフ戦開始時、マスターソードを構える演出を行い、強制的にマスターソードを装備させる
ガノンドロフ戦では覚醒し最強の武器となる(耐久無限、攻撃力60)
という状況なので、マスターソード以外の選択肢は事実上ないと言える。これにはゲームデザイン上の大きな利点がある。
それは「プレイヤーの攻撃力をほぼ固定化できる」という点だ。
本作は自由度が高いゲームだ。メインチャレンジ直行して40時間程度の最低限の育成で挑むプレイヤーもいれば、散々遊び回って300時間みっちり育てたリンクで挑むプレイヤーもいる。そうしたときに「倒すのに1時間くらいかかってウンザリしたわ」となったらゲーム体験としてマズいし、逆に「一瞬で倒せちゃってあっけなさすぎた」となってしまったらそれはそれで困る。
そういった事態をマスターソードによって回避できる。40時間のプレイヤーも300時間のプレイヤーも攻撃力が一緒となる。スクラビルドや料理、服の効果で上乗せするにしても、そこまで大差は生まれない
プレイヤーが盾を使用するという前提で設計ができる
また、マスターソードは片手剣なのでバトル時は盾を構える。これも同様に「ほぼ全てのプレイヤーが盾を構える」ということが分かっている状態なので、それを前提に敵を設計することができる。
盾は事実上の無敵を与える道具なので、ガノンドロフ側はガンガン攻撃してしまっても問題ない。素早い攻撃を出しても良いし、初見では回避しづらいような攻撃を出しても大きなストレスにならない。強い攻撃を遠慮なく行えるのでラスボスならではの威圧感や緊張感を演出できる。
ガノンドロフの主導で間合いを管理し適切な体験を与える
ガノンドロフ戦は基本的に武器と武器でのチャンバラをする形となっている。このとき、概ね以下のような構図となる。
近距離=お互いに攻撃が当たり、リスクとリターンが高い状況
遠距離=リンクの攻撃が当てづらく、リスクもリターンも低い状況
ずっと近距離にいたら緊張感で疲れてしまうだろう。逆にプレイヤーが遠くに逃げて安全な時間を作ることができてしまっても緊張感が削がれてしまう。どちらか一辺倒だと、ボスとしての体験が悪くなってしまう。
ダークソウルのスタミナ要素やSEKIROの体幹ゲージのような概念があれば自然と近づいたり離れたり待ったりといった緩急が発生するが、ティアキンにはそのような仕組みはない。プレイヤーの自由にさせてしまうと極端な体験となってしまう可能性が高い。これをガノンドロフ側で「接近していたら適度にバックステップを行う」「離れすぎていたらダッシュ攻撃でしっかり追いつきプレッシャーを与える」といった行動をさせている。また、床に瘴気を出現させる攻撃でリンクが距離を取るように仕向ける場合もある。
例えばリンクが距離を取ろうとしたときはこうだ。すぐさま反応し、しっかり圧をかけてくる。これのおかげでしっかり緊張感が保たれる。
緊張と緩和をバランス良く与え、ちょうどいい体験になるように頑張ってくれているのだ。ガノンドロフさんが。
ここまで説明した内容について、「自由度を犠牲にしするのは、ティアキンのコンセプトから外れるのでは?」というのはあるかもしれない。が、今回のティアキンは「広がり」のゲームだと理解している。
ガノンドロフ戦②:手加減と感じさせない巧妙な手加減
3種類のダメージを織り交ぜ、威圧感を与えつつも難易度は減らす
ガノンドロフの攻撃には3種類のダメージタイプが存在する。これもボス体験を向上させる上で非常に面白い使い分けになっている。
瘴気ダメージ
ハートにヒビが入り回復に制限を与える。
ガノンドロフの近接攻撃がこれ。ハート砕きダメージ
ガノンドロフ専用の特殊なダメージ。ハートそのものを砕く。
ガノンドロフの飛び道具を喰らったときにこれが発生する。通常ダメージ
普通にハートが減るダメージ。
途中で出現するファントムガノンの攻撃を喰らった場合にこれ。
ハート砕きダメージはガノンドロフ特有のもので初見の驚きや特別感があり、最大値が削れていくという焦燥感が感じられること、それを回復する手段が存在しないこと、プレイヤーによってはオープニングでハートを減らされた記憶が蘇ってくるかもしれない。そういった要素によってとてもハラハラする体験になったかと思う。
しかし、実際は多くの状況では実質ノーダメージだ。
これらのダメージはそれぞれ全く別軸のダメージとなっているからだ。通常ダメージを受けた後に瘴気ダメージを受けても、既に減った部分にヒビが入っていくだけなので実質ノーダメージのようなもの。同様にハートにヒビが入っている状態であれば、それが砕かれたとしても同様に実質ノーダメージだ。
これによるメリットは、以下だ。
ガノンの攻撃を強くしてしまうことができる
ものすごく単純に考えれば3倍のダメージを与えてしまってよいということになるので、ガンガンプレイヤーを攻撃することができ、強い印象を与えることができる。リンクを殺さなくて済む
短期的に死に繋がるダメージはファントムガノンの攻撃による通常ダメージだけで、それ以外で死ぬとしたら完全にハートが壊死したときだ。少なくともグリオーグやライネルなどのように「何度も死んではリトライする」という状況は生まれないようになっている。料理による回復をある程度制限できる
プレイヤーが回復アイテムを大量に用意して挑んできた場合、無尽蔵に回復し続け緊張感を与えることができない可能性がある。瘴気ダメージを中心に与えることで通常回復アイテムを殺し、ハートを砕く攻撃を用意することで回復を制限できる。回復アイテムを無尽蔵に用意したプレイヤーでも緊張感を味わえるようになっている。
バトルの進行と共に主体となるダメージが変化するのがスゴイ
実はガノンドロフ戦ではバトルの進行とともに主体となるダメージが変化していく。これが今回しっかり検証してみて分かった、個人的にもっとも目から鱗が落ちたポイントだ。これほんとよく考えたな~! ってなった。
第一形態(タイマン)&第二形態(団体戦)
武器による攻撃が主体、多彩な技で攻撃してくる
第三形態(再びタイマン)
武器による攻撃は単純なものに絞られる
飛び道具による攻撃が複数種追加される
第一、第二形態では多彩な攻撃方法を使用してくる。剣は微妙にタイミングを遅らせたコンボ攻撃があるし、槍は連続付き攻撃、突進攻撃は3連打、棍棒は3way弾攻撃や広範囲への衝撃波など、多彩な攻撃を仕掛けてくる。
初見殺しな技もいくつかあり、前半戦は瘴気ダメージによって順調にハートにヒビが入っていく。プレイ状況によってはこの段階で十分なダメージを喰らい、ハートが残りわずかしかないような一触即発の状況になることだろう。
一方、第三形態では、武器による攻撃は単純なものばかりになる。かつ、それらは前半戦で十分に見た技なので、この時点では武器による攻撃はもうほとんど喰らうことがないはずだ。代わりに様々な飛び道具によるハート砕きダメージを頻繁に受けることになる。
つまりこういうことだ。まず第一第二形態でしっかり瘴気ダメージを与えてハートをしっかり削る。早い段階でプレイヤーに焦燥感を与え、ガノンが強い存在だと認識させておく。
そうした土壌を作った上での第三形態は、ほぼハート砕きダメージしか受けることがない。十分にヒビが入ったハートが蓄積されている状況なので、事実上ノーダメージ。これによって「ピンチだけどギリギリ耐えてる」状態を作り出し、もっとも熱い体験が得られる時間を長続きさせられる。
これ、実質的には「手加減」なのだけど、プレイヤーからするとまったくそうは感じられなかったはず。手加減だと感じさせない巧妙な手加減のやり方だ。
ガノンドロフ戦③:ガノンを「超える」ことで勝利を収める体験
ガノンドロフはジャスト回避を使用してくるが、第三形態ではリンクのジャスト回避ラッシュを回避してくる「ジャスト回避返し」を行ってくる。これを頻繁に使用してくるため、リンク側からも致命打を与えるのが難しくなってくる。
しかし、ガノンドロフが「ジャスト回避返し」をしたとき、かなりシンプルな単発の反撃行動を必ず行ってくる。これをジャスト回避して「ジャスト回避返し返し」をやることで、ラッシュを叩き込むことができる。
多くのプレイヤーはこの「ジャスト回避返し返し」を決めることでガノンドロフに大ダメージを与え、撃破することになる。
ポイントは以下だ。
これまでリンクが使ってきた戦法に上を行かれる驚きの展開
ジャスト回避の応酬は、チャンスとピンチが交互に発生する熱い瞬間である
ガノンが「ジャスト回避返し」後に必ず単純な攻撃をしかけてくることで、プレイヤーを「それをさらに回避したい」って思える作りになっており、誘導できている
しかし「ジャスト回避返し返し」は決めづらい
リンクが「ジャスト回避返し返し」を決めたら勝ちだが、ジャスト回避返し返しは、しばらくは成功しないはず。
それは、ガノンドロフが行ってくる「ジャスト回避返し」からの反撃行動は、これまで散々見せられた攻撃よりもかなり攻撃の出が速いものとなっているからだ。
このカラクリも、個人的にめちゃくちゃ目から鱗が落ちたポイントだ。
リンクの体力はのこりわずか、ガノンドロフもあと一歩で倒せる、コイツさえ倒せば全てが終わる! という、最高に熱い状況。その状況で、リンクの攻撃もほとんど通らない、ガノンドロフの攻撃もほとんど通らない、という状況を作り、膠着状態に陥らせる。
そして、そんな重要な重要なタイミングで「反復練習」が始まるのだ!
ガノンドロフの攻撃を見て、試して、ミスって、再度タイミングを変えて試して…。ここでミスっても盾の耐久が削れるだけでダメージになることはほぼないので、リンクが死んでしまうことは少ない。盾が次々割れていく焦燥感で緊張感を味わわせつつも、ダメージを喰らうことがないので実際はかなりの猶予がある。(盾の耐久という4種類目のダメージだ!)
ガノンドロフはバトル中に成長し「ジャスト回避返し」を習得、リンクの上を行く。しかし対するリンクも戦いの中で成長、ガノンドロフの攻撃を見切る。そして、ガノンドロフを超えたとき、決着となる。
このバトルはガノンドロフのHPを削って倒すバトルではない。ガノンドロフの攻撃を見切り、制圧することで勝利となるような構造になっている。これにより、撃破時に強い達成感が感じられるようになっている。
「こいつ、戦いの中で成長している…!」みなさんの大好物じゃないでしょうか?
ガノンドロフ戦 まとめ
①その敵を倒すべき、倒したいと強く感じられている
龍の泪を中心とした物語で、十分に演出されている
②その敵がとても強い存在だと感じられる
マスターソードがある前提でHPを調整
盾がある前提で素早い攻撃、激しい攻撃を行わせる
3種類のダメージを用意し、分散させる代わりにダメージを増やす
③ピンチとチャンスが交互に発生する、ハラハラドキドキするバトル展開
ガノン主導で間合いを調整
新しい技を次々繰り出す。そしてそれをひとつひとつ攻略していく
「ジャスト回避返し」と「ジャスト回避返し返し」
④初見で一度もやられることなく倒せるとベスト
瘴気ダメージ主体でじわじわ削るのでパッとは死なない
第三形態では実質ハート砕きダメージのみ
⑤倒したときに強い達成感が感じられる
ピンチ感を演出しつつ、プレイヤーを殺さない
初見殺しだが2度目以降は回避できるような攻撃で「だんだん分かってくる」
「ジャスト回避返し返し」の会得で勝利となる
⑥物語を終わらせるための儀式として、強い感動を生む体験となっている
⑥に関しては、このあとの黒龍戦で達成されている。次は黒龍戦について語りたい。
黒龍戦①:演出に極振りした大胆な設計
ガノンドロフ戦では緊張感のあるバトルだったが、逆に黒龍戦はほぼイベント戦のような内容となっている。
まず、プレイヤーが死ぬ状況がほぼない。
地底から出るので瘴気ダメージが回復しており、これまで使えなかった通常回復アイテムが存分に使える
下に落ちても白龍が拾ってくれる
黒龍に勢いよく落ちても落下ダメージなし
黒龍の攻撃は魅せ弾ばかりでほぼ当たらない
また、黒龍の行動はほぼ変わらず、リンク側も同じ作業を行うのみとなっており、ゲーム性のようなものは皆無といっていい。
このよう作りになっている理由を推測すると、おそらく「初回のプレイヤー体験」を最も重視した結果ではないかと思う。
白龍がリンクを助けようと自発的に動くさま、それを受けてリンクも何をするべきか理解し、以心伝心による共闘を行う。その過程でリンクとゼルダは何度も何度も「別れ」「再会」を繰り返す。ラスボス戦ではあるが、立ち位置としてはリンクとゼルダの関係性を描くための演出の場としての方が重要なのだろう
このとき、プレイヤーは自発的に何をすべきか気付く必要がある。ゼルダの声で語りかけるたら興ざめだし、チューリやユン坊などがいても野暮の野暮である。また、プレイヤーが黒龍の倒し方が分からず試行錯誤してしまった場合や、黒龍の攻撃への対処方法について考えはじめてしまったら、ゼルダから意識が削がれてしまい感動が弱まってしまうだろう。
黒龍戦はあくまでも「ゼルダとリンクが共闘し、黒龍を撃破する」ということが重要である。なので、それを阻害する要素は全部取っ払った状態がこの黒龍戦なのだと思う
黒龍戦②:The Best of QTE
ラストにある2つのQTE。
黒龍にマスターソードを突き立てる、トドメのアクション
落下するゼルダに手を伸ばし、手を掴むアクション
どちらもゲーム体験をストップ高まで高めてくれる、ゲーム史上最高のQTEだったと思う。
QTEとはクイックタイムイベントの略で「ボタンを押せ!」と表示されたボタンを押すことでムービーの続きが再生される演出手法だ。が、ゲーマーの間では否定的な意見が多く見られる要素でもある。
ただ、自分は「QTEは取扱注意だが使い方次第では効果的」だと理解しており、今回のティアキンのQTEはものすごい良い効果を発揮していると思う。このQTEの何がどうよかったかについて解説したい。
良いQTEとは
自分は、以下が適切に満たせている場合、良いQTEになることが多いと考えている。
①ボタンを押した後、何が行われるのかが予測できること
②その操作をプレイヤーが「やりたい!」と思えること
③プレイヤーがやりたい内容と操作する内容が一致していること
④予測した通りの結果が得られること
例えば「ゾンビが迫ってきた! ボタンを押せ!」
これだけだと、ゾンビの攻撃を回避するのか、それとも武器でゾンビを攻撃するのかプレイヤー側では判断できない。
例えば「ゾンビが掴みかかってくるぞ! レバー右に入れて避けろ!」となったとき、プレイヤーがゾンビを攻撃したい気持ちになっていた場合、プレイヤーとしては期待と違うことをやらされるので、面白くない。
例えば「ゾンビが掴みかかってくる! コイツは妹を殺した殺人鬼がゾンビ化した憎い敵だ! あなたは銃を構えてるぞ! Aボタンを押して銃をぶっ放せ!」となったら良さそうだ。が、Aボタンであることに深い意味がなかった場合、プレイヤーの「ボタンを押す」という行動に意味がないため、ゲーム画面との一体感が生まれない。これがもしTPSだとしたらRトリガーに割り当てられているとよいだろう。
ティアキンのQTEではどうなっていただろうか
説明するまでもなく、完璧だろう。
黒龍へのトドメは、事前にプレイヤーが自分の操作で叩いているので、何をするかが明確に分かる。これは誰がどう考えてもとどめの一撃だ。かつ、心から強く倒したいと思っている存在なので、とどめを刺したいと思っているはず。Yボタンは剣を振るためのボタンとして散々使っているので、この場面でもプレイヤーは剣を振るという意識をYボタンに込める。
ゼルダに手を伸ばす動作はもはや説明不要だろう。ここで「掴みたくない」と思うプレイヤーはいないはずだ。オープニングと同じ構図を作ることでプレイヤーが何をすべきか即座に理解できるようになっているのも素敵。
ゼルダの手を掴むために使用するAボタンは「アイテムを拾う」「馬に乗る」「人と会話する」「ウルトラハンドでモノを掴む」といった、繋がるための動作をまとめたボタンなので、Aボタンを掴むボタンに割り当てられているのはしっくりくる。
このように「プレイヤーがやりたいこと」と「ゲーム側でやらせること」がちゃんと一致しているなら、QTEというものは正しく機能するのだ。そしてそれがしっかり一致するように、事前に丁寧なお膳立てがされている。
黒龍戦 まとめ
⑥物語を終わらせるための儀式として、強い感動を生む体験となっている
黒龍戦は、ゲーム要素をバッサリ捨ててしまうことで演出として強い効果を発揮させることに成功していると思う。そこにQTEをうまく取り入れ、感動をさらに高める事に成功している。
完璧。しかしそれでもなお伸びしろだらけ
ガノンドロフ戦~エンディングまでの体験は凄まじいものがあると思ったし、点数で言うなら100満点だと思っているが、改めてもう何戦かしてみたら、結構アラが感じられてしまったので、せっかくなのでマイナスポイントについて語りたい。
ガノンドロフ戦
ファントムガノンが出てきた後仲間が来るの早くない? 「ガノンを同時に何匹も相手にしなきゃいけないのか…! これは苦しい!」という気持ちになる前にチューリの声が聞こえてきちゃった。せめてあと5秒くらい待っても良かったのでは?
ガノンドロフの飛び道具は実はマスターソードの斬りで跳ね返すことができる! (アンケートを取ってみたら8割以上の人が気付いてなかった)
これ、自力で気付けたときにめちゃめちゃ驚いたし、反射するの超楽しいので、裏技的な立ち位置ではなく攻略の本筋に組み込むような作り方をしてほしかったところ
途中でリンクの周囲を囲むように動かない炎を出して「出られない~」って状況を作って気付かせるとか?
明確に体験をデザインされているにもかかわらず、相変わらずの自由度があるせいでいろんな攻略ができてしまい、その結果体験が落ちてしまう状況がありえるのはやっぱり悲しい。
特に弓矢に対して弱いというのがつらい。第三形態では矢を弾くようになるけど、ライネルの弓だと残り2本が普通に刺さっちゃう。ジャスト回避返し返しをやらずに倒せちゃうのはもったいなさ過ぎる
黒龍戦
動的に動くダイナミックな空中戦を実現してくれたというだけで相当大変だったろう、という前置きはしつつ…
黒龍から殺意が全然感じられない。派手な弾幕を途中でとめてちょろちょろ弾を撃つだけになったり、明後日を向いていたりすることが多かった
特に理由なく動いてた黒龍が、リンクのために空中でピタッと静止してくれちゃうもさすがに違和感が強い
単純に攻撃が弱い印象
空中で何度か被弾したってすぐに立て直せるのだから、多少被弾させるくらいしっかり狙ってくれても良かったのでは。
あるいは「不思議な光の力で黒龍からの全ての攻撃は弾かれます」ということにして、その分アホみたいに強い攻撃を仕掛けてきて欲しかった。黒龍のレーザーブレスを割りながら頭に突っ込んでいくリンク君とかやりたくない?
やっぱり「イボを潰していく」くだりがいらないのでは
額だけを狙っていく方式にすれば、バトル開始直後に目を狙いに行って「なんも起こらんな」ってなるくだりをなくせる。
額を狙いにいく場合、攻撃してくる口と近いので「攻撃をかいくぐりながら降りていく」という濃い体験ができる。イボだと攻撃一切来ないから退屈。
額を狙う場合、黒龍が静止していてもそこまで違和感はないはず。リンクにブレスを浴びせようとしているから、と言えるので。
最後に白龍との関わりを出すことはできなかっただろうか? ただリンクを上に運ぶだけの運転手だけに成り下がってしまうのはちょっと悲しいかも。
たとえば最後、黒龍が避けられないような極太ブレスを放ってきて、それを白龍が身を挺してかばってくれる、とか。
以上です。
お読み頂きありがとうございました!
ゼルダティアキンに関しては語りたいこと他にも沢山あるんですが、旬を逃してしまったところもあり、書かなくていいかな…みたいな感じになちゃってますが、この記事の評判が良かったら次記事も書くかもしれません。
それではまたどこかで。
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