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【考えてみた】なぜパリはどこにいてもインスタ映えする都市なのか?【おうちで勉強しよう】

なぜこのテーマにしたか

ぼくは大学時代、自分の学部の卒業単位を取得しながら副専攻として「フランスの文化と社会」でゼミを受講、卒業論文を制作しました。自分の学部の方は卒論が必修ではないのですが、「副専攻制度」を利用して関連する授業を卒業単位に充当することができたわけです。
そこでぼくが卒論のテーマにしたのが「パリの都市論:「中心」と「周辺」から考える」というパリという都市の変遷を文学史や建築史の観点から論じるという一見壮大なものでした。中身についてはいつか触れることにしましょう。
パリへ街並みや建築を見に行きました。実際に自分の目でみることや身体で体験することは非常に重要です。そこで思ったことは、「パリってどこにいてもインスタ映えするなあ」ということです。インスタ映えというのは捨象しすぎた表現かもしれませんが、自分が「映画や文学の主人公になったような気分になれる」という表現がしっくりくるかもしれません。ぼくの場合は、「かつてパリで生活していた有名な作家や芸術家はこの街並みで何を考え、何を感じながら生活していたのか」ということを考えながら観光していました。変人ですね笑

なぜパリはインスタ映えする都市なのか?という問い

世界の中でも先進国という位置付けの中にあるフランスの首都であり国内最大の人口を抱えるパリという都市の街並みは、同じ先進国である日本や東京のような都市とはかなり様相が異なります。
パリという都市の特徴は、
・セーヌ川を中心とした生活風景
・19世紀から変わらない街並みとファサード
・明瞭な都市計画による大通りと放射状に広がる通り
にあるといえるでしょう(※主観に基づく見解です)。
先進国であるにも関わらず(?)、建造物は19世紀の香りを残したまま。エッフェル塔やモンパルナスタワーを除けば高層ビルもありません。パリ市内が世界遺産に登録されているゆえに景観保護の側面から高層ビルの建設は法律で制限されているほど。一見すると京都と似た雰囲気がします。

では、この美しい街並みはどのように整備されたのでしょうか。
時は遡ること1850年代、日本は幕末の動乱期。フランスはナポレオン3世が国を治めていた「第二帝政期」と呼ばれる政治体制の頃でした。パリの生活環境は極めて悪く、通りが狭くて暗く、風通しが悪いという状況でした。セーヌ川って綺麗な川のイメージあるじゃないですか、全然そんなことはなくって例えばトイレから出たものはセーヌ川にポーイっでしたからね。衛生面も最悪な状況でした。そこで頭像するのがセーヌ県(パリがあるところ)の知事、ジョルジュ・オスマンでした。「オスマン改造」と呼ばれる大規模な都市計画によって、パリには幅の広い大通りが建設され、光と風を取り込むことで明るく綺麗な街に変化していくのでした。上下水道が整備され、公園や病院などが作られ、公衆衛生の向上に大きく寄与したわけです。
また、パリは建物が全て6階建て(日本式だと7階建て)と高さに統一感があるのも綺麗な街並みの秘訣と言えるでしょう。現在の街並みはこの第二帝政期の頃に原型ができあがったといえます。
政治的には細く入り組んだ通りによってクーデターの終息が難しかったのですが、これにより早期解決が可能になりました。
ヨーロッパは全体的にそうですが、どんな細く小さな通りにも全て名前がつけられているのも東京などとの違いだと思います。
このようにして、東京のような「人通りが多く、高層ビルが雑に建てられている」都市とは異なり、パリのように石造りの高さの揃った建物と放射状にのびる通りによって綺麗な街並みが整備されたのでした。

日本人の感じる「近代的な」建物って?

話は変わって、近代建築、いわゆる「モダンな」建物ってどんな特徴があるのでしょうか?

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なんとなく白くてごちゃごちゃ装飾のないシンプルな外観、大きな窓がある明るくクリーンな印象というイメージがあるのかなと思います。
20世紀に入って、近代的な建築には共通点があると主張した建築家がいました。それがル・コルビュジエです。
彼はその著作の中で、「近代建築五原則」というのを発表します。

【ル・コルビュジエの「近代建築五原則」】
 ・ピロティ
   ┗「支柱」の意。1階部分を浮かせることで宙に浮いた箱を作る
 ・屋上庭園
   ┗平らな屋根には庭園を配置。白と緑のコントラストを強調。
 ・自由な平面
   ┗壁によって縛られない広々とした間取り。インテリアについても言及。
 ・水平横長の窓
   ┗光を取り入れるための連続した横長の窓。
 ・自由なファサード
   ┗正面や側面といった概念をなくし、どの方角から見てもバランスのとれた景観。

今までの装飾を「過剰に」施した芸術的建築物の時代は終わり、無駄な装飾を排除し、機能性を重視したシンプルなつくりと、オスマン改造のような光と風を取り入れる新たな建造物の概念を提唱した。構造物を骨格に見立て、それぞれの部屋を器官、廊下や階段は血管と機能性により分けることで住居が身体であるとした。それゆえ空気と光を取り入れることが必要であった。

そして、この五原則を忠実に再現した建築物が「サヴォア邸」です。

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そもそもインスタ映えするとは?

今回は、モダンかどうかではなくインスタ映えするかということがテーマですので、本題に戻りましょう。
インスタは特にすごい写真を上げているわけではないのであまり詳しいことは言えませんが、なぜすごい写真に心が動かされるかというと、
・非日常の空間を疑似体験することができるから。
・なかなか見ることができない貴重なものだから。
・カラフルで目を引くものだから。
・映画や絵画の舞台となっている場所だから。
・流行りのものだから。
などが挙げられるでしょう。文学や絵画などの芸術作品が生まれたのも、非日常の疑似体験をするためではないでしょうか。
そもそも海外に旅行する、今いる場所から遠い場所に行くという行為そのものが非日常の体験なわけなのです。実際に行く場合、疑似ではなく本物の体験ということになりますが。
そして日本の文化にはあまりなじみのない、高さの揃った石造りの建物や高層ビルがほとんど建っていない景観保護が進んでいる街並みというのは憧憬の念を抱いて当然とも言えるでしょう。

「[・・・]自分のそれまでの概念を超えるような風景に出会うと、感動を覚える。さらに自分の概念をはるかに超えた美しい風景に出会うと、今度は「筆舌に尽くしがたい」になる。
 絵や写真の中では、見たことのない景色、見たことのない生き物や食べ物、見たことのない美しい服をまとった異国の人物に出会うことができる。[・・・]しかも絵は、現実の風景そのままではなく、いらないものを排除し、足りないものを付け加えることができる。そうすることで、自然の美しさをより際立たせることができる。」
齋藤亜矢『ヒトはなぜ絵を描くのか』より

そして日本人の美意識はフランス人の美意識とよく似ていると思われます。
19世紀後半に日本の浮世絵がフランスの画画たちの影響を受けたのは聞いたことがあるでしょうか?いわゆる「印象派」と呼ばれるものです。
そして日本人は印象派の絵画が好きなものなのです。定期的に印象派の美術展が日本で開催されるのもその要因が大きいでしょう。浮世絵と印象派の話はいつかすることにしましょう。
そしてモダニスム建築についても、フランス語圏出身のコルビュジエともある種似ているところがあるのかもしれません。

そういったある種共通の美意識というのも日本人がパリという都市に憧れる理由なのかもしれませんね。
パリへの憧れや美意識について気になる方は映画『アメリ』がオススメです。この話もまたいつか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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