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かくしてインターネットで知り合った赤の他人(同性)と2人で暮らすことになったのだ

学生時代からずるずると住み続けて5年になる、セキュリティのセの字もない郊外のアパートからついに出ようとしたのが1年前。私は見事に引っ越しに挫折した。

大学の合格発表から入学までの限られた時間の中で混乱したまま決めた一人暮らしの部屋は、とてもじゃないが住み良いとは言えなかった。「壁が薄い」が国民の共通認識となっている不動産屋が管理するアパートだ。噂に違わない嘘みたいな通音性(今考えた防音性の反対語)であった。隣人のいびきも聞こえるし、隣人のBluetoothイヤホンも接続できる。

それでも引っ越しに踏ん切りがつかなかったのは生まれ持っての怠惰(片付けられない・部屋を探す気力がない)と貧乏性(まとまったお金を払いたくない)によるものとしか言いようがない。この部屋から出るためには、もはや「今より暮らしを快適にしたい」という欲望だけでは足りなかった。

とはいえ私は一人暮らしに完全に飽きていた。客用布団を1枚広げるだけでギリギリの広さだったから頻繁に人を呼ぶ気は起きなかったし、そもそも私は掃除が苦手すぎる。自分のためにはこれ以上何も頑張れない。自分のために掃除機をかけるのも嫌だし、自分のために窓を拭くのも嫌だ。

なら人と住めばいいのではないか?

「誰かのためなら頑張れる」というと聞こえがいいが、どちらかというと「人に迷惑をかけないための最低限の努力であればギリギリできるかも」というネガティブなものである。自分の生活のセーフティネットとして、私に必要なものは「他人」だと思った。

そういうわけで、私は毎日のようにツイッターで「誰か一緒に住んでくれ〜」と喚き散らかすようになった。当初の理想としてはでっけー家を借りて何人かで住むみたいな、いわゆる「オタクでシェアハウスしてみたw」的なやつ。ただ、そううまくはいかない。

一般的な会社員としてフルタイムで働いている友達数人と住もうとするのはどうしても難しい。各々の職場の規定などの条件もあるし、あちらを立てればこちらも立たない。そんな中、唯一条件が合ったのが現在の同居人である。仮にAとする。

Aは私と同じく(いや具体的に説明するといろいろ違うんだけど割愛すると)正社員ではなかったので、条件的な融通が利いた。あと、Aの旧居には何回か泊まりに行っているのだが、私と同レベルで片付けられないので「一緒に住めるわ」と思った。洗った皿の上で洗ったメガネ乾かしてるの見てから信用している。掃除ができない人が2人で暮らすなんて無理だと思われるかもしれないが、綺麗好きな人こそ私やAのような人間と住んだらストレスで血管が切れると思う。

その時は冗談混じりだったかもしれないが、最初に「短期解約の違約金払わなくていい月になったら引っ越してもいいよ〜」って言われたのは確か去年の秋頃。そこから私が仕事辞めたりまた始めたり一悶着あって、Aが「Hey!Say!JUMPのツアー決まったから(※金がない)待って」とか言い出したりして、なんやかんや「年始、試しに不動産屋でも行ってみますか」ということになった。

不動産屋を2軒ハシゴして3つの部屋を見せてもらい、不動産屋の兄ちゃんの感触が微妙だったから、私もAも「審査落ちそうだな〜」とうっすら思いながら契約書を書いた。

不動産屋の兄ちゃん「失礼ですがご関係は……」
私「友人です」
不「職場のお友達ですか?」
私「いえ、趣味の友人……?です」
不「なるほど(険しい顔)」

というやりとりを経て、「ご友人との同居は嫌がる管理人さんも多い」「喧嘩ですぐに出ていかれるのを嫌がる」との説明。大人の友情を舐めすぎではないだろうか。ハタチ超えてそう簡単に喧嘩とかしますか?加えて私もAも職歴がボロボロである。社会的に全く信用のない女2人。安心してほしい。2人とも短期解約の違約金が払えないので喧嘩してもすぐに出て行くことはありません。やったね!

結果として審査は通った。拍子抜けだ。驚くほどその場のノリで事が進んでしまった。そうして私はこの2月から新居に住んでいる。Aは旧居を引き払うタイミングの問題でまだ越してきていないが、今月中には来るみたいだ。ちなみに、2人ともアホだったので内見の時にあらゆる幅を測ってくることを失念し、契約の際にもう一度立ち入らせてもらった。

私とAは、お互いにBase Ball Bearというバンドが好きで知り合った。「インターネットで知り合った」と言いつつ、もともとツイッターのフォロワーだったのか、ライブ会場で知り合ってツイッターを交換したのか順序が定かではない。でも圧倒的にツイッターでやりとりしていた時間が長いので、なんとなく「インターネットの中の友達」という印象のままでいる。

Base Ball Bearが好きなこと以外でAとの共通点はほとんどない。2人とも他に好きなバンドはいくつかあるけれど微妙に守備範囲が違う。あとAはジャニヲタ(※伊野尾慧くん担当)だけど私は生身のイケメンコンテンツにほとんど興味がない。どちらかというと二次元オタクだし、あとお笑いオタクだ。人類は必ずハイキューを読むように。オタク趣味以外の部分で考えても、結構美容に凝ってるAに対して私はガチのすっぴんで飲みに行くタイプだし、あんまり性格も似てないなと思う。

これまで特別に仲が良かったかと言われると、そういうわけでもない。共通の友人がいる飲みやご飯の会は頻繁にやっていたけど、休日にAと2人で出かけたことは一度もない(例外として、2人でBase Ball Bearのライブを見に日帰りで広島まで行ったことはある)。

書類に同居人の情報を書いたとき初めて、Aの本名の漢字表記も電話番号も知らないことに気がついた。今も私はAのことをハンドルネームで呼んでいる。名前も知らなかった女と、私はこれから一緒に生活するのである。どうやら伊野尾慧くんの誕生日を私も一緒に祝うことになるらしい。ルール的なことはほとんど決めていない。家賃の割合と、諸々のレシート取っといて月イチで精算しよう、くらい。ズボラ2人なので、おいおい整備していけばいいでしょう。

引っ越しのタイミングがズレたこともあり、まだ家具がほとんど揃っていない。私の部屋だけがどんどん完成していく。私の両親がお古のテレビを持ってきてくれたので、現在ダイニングは机もないのにテレビだけが床置きされている奇妙な景観となっている。どうぶつの森の起動1日目かな?
ついでに両親は23歳の娘がいきなり知らん女と住むことについて何も文句を言っていない。言わないだけで思うところはあるかもしれないけど、言わないでくれているので本当にいい親です。

一人暮らしの時の癖がまだ抜けておらずドアストッパーをつけていてAを締め出したりもしたが、なんかそれなりにやっていけるんじゃないかと思う。というか、やっていけないと困る。やっていく、暮らしを。

ってなんでこんなところにAmazonほしい物リストが!?

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