見出し画像

ピアノは語る

あるピアノ演奏会

今年2月、大阪で行われたピアニストトリフォノフの演奏会。ぎりぎり最後列のチケットを購入できたのだが、当日近くになって体調を崩し、行けなくなってしまった。数年前、来日予定だったトリフォノフの演奏会が中止になったこともあり 今回とても楽しみにしていたのだ。トリフォノフの生の音は聴いたことはないのだが、彼の音源で聴く曲の解釈・選曲のセンスがとても好みだ。今回取り上げられたプログラムも珍しい「フーガの技法」。今の年齢の彼がどのようにこの曲を演奏するのかとても興味があったので、行けなくなった事はとても残念だった。正直、大阪のたこ焼きも食べたかった。結局このチケットを無駄にしたくなく、関西にお住いの大学の先輩に差し上げることにした。

一枚のCD

先月ある一枚のCDが届いた。
2月のチケットのお礼にと、東京音楽大学先輩 大竹道也(大阪音楽大学講師)さん自身のリサイタルCD(1997年)を送ってくださったのだ。
そのCDは、会場の拍手・平均律クラヴィーア曲集第1巻1番から始まりゴールドベルグ変奏曲終曲アリア・会場拍手で終わる、オールバッハ・ライブ録音だった。凄い、凄い、・・・夢中になって一気に最後まで聴いた。
そして、今も毎日聴いている。凄すぎる。私は、バッハ20曲をここまで極めたピアニストへの尊敬の念と称賛の気持ちで胸が一杯になった。そしてこの一枚のCDに出会えたことを神に感謝した。ピアノ作品に向かう心の原点を教えてくれる演奏だったから。


ブリュートナーピアノの音

このリサイタルで用いられたピアノは、ドイツライプツィヒで製造されたブリュートナーだった。優しく厳かな今まで聴いたことのないピアノの音色。作曲家ドビュッシーもこのピアノを愛用し、日本ではピアノの大家である安川加寿子さんも使用していた。このピアノの特徴である高音部の一音につき4本張られている(通常3本)弦の共鳴音がピアノの本来の音を覆って不思議な伝統を感じさせるの音色を演出しているように聴こえてくる。

大竹道哉さんの奏でられたバッハの世界はブリュートナーピアノの音と共に自然でリアルな会場の空気と一緒に伝えてくれる素敵なCDでした。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?