【セミナーレポート】バーティカルSaaSにおけるパートナーセールス実践事例(2024/05/28開催)
皆さん、こんばんは。
パートナーセールスの葛西です。
パートナーセールス研究会を設立以降、下記の計3本のパートナービジネスセミナーを開催してきました。
今週は、先週5/28(火)に開催させていただいた「バーティカルSaaSにおけるパートナーセールス実践事例」のセミナーレポートを書かせていただきます!
※長文となるため、要点だけ知りたい方は上述の本noteの要約をご参照いただくか、目次から興味のある質問項目だけ選択してお読みください。
※お話した内容を全て書き起こすと膨大な文字数になってしまうため、今回のセミナーレポートから発言内容の要約でまとめさせていただきます。
バーティカルSaaSにおけるパートナーセールス実践事例
登壇者紹介
株式会社助太刀 アライアンスグループ
桑原 裕 氏
株式会社カミナシ パートナービジネス責任者
石川 聡 氏
2社のパートナープログラム紹介
Q1. ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSのパートナー戦略の大きな違いは?
石川氏:
結論、パートナーの選択が非常に難しいと感じています。
まず、前提として、カミナシは業界ごとの課題に深く入り込んでいく『マルチバーティカル戦略』をとっています。その前提のもとで、バーティカルSaaSとホリゾンタルSaaSの違いですが、下記のスライドにある通り、バーティカルSaaSは特定の業界やニッチな分野をターゲットにし、ホリゾンタルSaaSは幅広い業界に対応しています。そのため、ディストリビューターに展開しても幅広い業界に対応しているホリゾンタルSaaSではないため、販売ハードルが高かったりするためなかなか支援が得られなかったりします。また、商談相手がオフィスワーカーやバックオフィスのような方々ではなく、工場の現場責任者やノンデスクワーカーとなるため、これもどのパートナーと組むべきかを選定する上での難しさの一因となっています。
また、ホリゾンタルSaaSでは多くのサービスが比較対象として存在する一方で、バーティカルSaaSになるとそもそもの比較対象となるサービスが少ないためというところもバーティカルSaaSにおけるパートナービジネスの難しさの1つです。現在は金融機関を中心にチャレンジを続けていますが、まだまだ試行錯誤の途中です。
桑原氏:
石川さんがまとめてくださった通りですが、パートナーにとってバーティカルSaaSは業界の基礎知識がないと理解されにくいというのが大きな問題です。ただ、弊社の場合は少し特殊で、一見バーティカルSaaS領域ではありますが、HR Tech領域のSaaSではあるのでホリゾンタルSaaSのような位置付けもでき、パートナー企業には「建設系の人材不足を解消するサービス」として理解されています。
石川さんとは違い、商談相手も人事部や経営者となり、建設現場の社員さんとかではないため、バーティカルSaaSだからという理由での課題はあまり起こりにくいです。ただ、今回のセミナーの機会を通じて、自社の商材を再度理解し、整理する必要があると感じました。自社の特徴を把握することで、課題を打破できる可能性があると改めて思いました。
Q2. 重点支援パートナーの選定条件は?
石川氏:
最初に数多くのパートナー候補の企業様と面談を重ね、まずは全国に拠点展開している規模で顧客との親和性が高いパートナーという基準で、食品機械メーカーを選びました。このような特定の業界に強い企業を弊社では「ドメインパートナー」と呼んでいます。しかし、このドメインパートナーとの取り組みは、結果としてはうまくいかなった。
理由としては大きく3つありました。1つ目が、営業担当者の年齢層が高く、ITに対するリテラシーが低かったため、サービスをインストールしてもらうことに非常に苦労しました。2つ目が、受注した際にお支払いするfeeの動機付けがどうしても普段取り扱っている食品機械の単価に比べるとどうしても低くなってしまい、力学として弱かったことです。3つ目が、IT商材の販売経験がなく、パートナー制度の理解が不足していたことです。そのパートナー企業さんではIT商材をそもそも取り扱ったことがなかったので、そのパートナー企業を独占できるかなと考えて選定したが、 結果的にはその社内に仕組みも浸透していなければ、カミナシを販売してfeeを得ることで評価につながるみたいなものは全くありませんでしたので、うまくいきませんでした。
なので、結果的に、途中から銀行に重点支援パートナーをシフトしました。銀行では既に多様な商材の取り扱いをしていますし、ビジネスマッチングの仕組みがあるため、初動で早期に成果を出すためにパートナーの仕組みが初めから整備されている企業さんの方が成果としてすぐに立ち上がりやすいのではないかと考え、金融機関に注力することにしました。一方で、カミナシのサービスの理解という点では銀行は取り扱い商材が多く、だいたい200商材から多い銀行ですと500商材ぐらい のパートナーの商材を担いでいるので、その中でカミナシのサービスをどう理解してもらうか、どう優先順位を高くしてもらうかというのが難しいというデメリットはありますが、それ以上に販売の動機付け・評価だとかロイヤリティを感じていただきやすいというメリットの方が大きいと考えました。
現在は銀行さんが重点支援パートナーとなっていますが、今改めてドメインパートナーというところに再度チャレンジをしています。次回の成功事例としてまた報告できるといいなと考えています。
桑原氏:
弊社も成果が継続的に上がり続けてるのは金融機関さんですね。前提として、弊社のアライアンスチームの構成をご説明すると、金融機関を担当するチームとIT商社やOA機器メーカーを担当するチームに分かれており、私は後者の担当をしています。
カミナシさんのドメインパートナーと同様、弊社も建材商社との新たなパートナーシップを模索しています。建材商社の中にはIT商材を売ったことがないところも多いため動機付けが難しく、営業マンに還元される仕組みがないため、誰を動機付ければいいのかも不明確であり、現場の営業マンに動いてもらうのは難しいと判断しました。なので、弊社では建材商社さんは「展示会」に焦点を絞り、展示会への集客にご協力いただく「展示会パートナー」という形で、パートナー契約を締結しています。
元の質問に戻ると、弊社では重点支援パートナーの選定条件というものは明確になく、結局は対人コミュニケーションが非常に重要であると考えています。今のTOPパートナーさんは、実は最初先方からお声がけをいただけました。商材数でいうとおそらく1万商材という数を取り扱うパートナーさんなのですが、建設DXはなかなか難しい領域で、且つ建設業界の人材問題を解決するサービスは日本でも数少ないということもあり、ありがたいことに先方からお声がけいただけました。ですので、弊社に声がけしてきてくれたパートナーを大切にしていきたいと考えています。
石川氏:
建設領域のHR Techサービスなので、求人広告代理店さんとかも相性が良さそうだなーと思ったのですが、なぜそういった求人広告代理店さんは重点支援パートナーにされてないんですか?
桑原氏:
パートナーさんの中に求人広告代理店さんもありますが、まだスケールできていないというのが正直なところです。建設領域は非常に専門的で、建設の従事者のような方もどういう職能を持ってるかでも非常に細かくセグメント分けできてしまうため、一般的な経理を採用したいとか営業を採用したいとかと違い求める要件がニッチすぎるので、求人広告代理店さんの営業マンに建設業界の専門知識をインプットしていただくことが難しく、なかなか進んでいないといった状況です。ただ、これからパートナービジネスをスケールさせる上で、現在のTOPパートナーの次は求人広告代理店さんや人材紹介会社さんなのかなとは思っています。
Q3. パートナーセールスの採用基準と社内抜擢の基準は?
石川氏:
これまで1人でパートナーセールスをやってきましたが、今月からは2人体制になり、7月からは3人体制になります。外部採用と社内抜擢の両方で経験者を採用しましたが、特に外部採用は難しかったです。カミナシのことを知らない人にパートナーセールスの魅力を伝えるのは非常に大変でした。
そこで、対外的なメディアを使ってカミナシの魅力を伝えることにしました。アドベントカレンダー執筆の機会をいただき、カミナシの魅力とパートナーセールスの難しさをnoteに書きました。この記事を読んだ方々からは「読みました、良かったです」と言ってもらえ、結果的にカジュアル面談での魅力付けが成功し、選考意思をほぼ100%いただけるようになりました。
社内の抜擢については、別の領域で経験のある方に異動を打診し、タイミングが合って異動してもらいました。1人でやっているため、教える時間が取れないので、経験者採用に絞ったのです。
桑原氏:
弊社も経験者を募集しています。人事からの募集要件は、石川さんのところとほぼ同じです。個人的には、パーソナリティが重要であって特定のスペシャリティは必要ないと思っています。平均点以上で、誰からも嫌われないタイプの人が向いていると思います。外部からそのような人をどうやって採用するかは難しいですが、チーム全体のバランスを考え、自分で考え行動できる人材が必要です。また、フレームワークなしで考える力や中小企業の理解力も重要です。社内抜擢については、ちょうど今月からジョブポスティング制度が導入されたので、今後活発になっていくのかなと思います。
葛西:
パートナーセールスの経験者募集で、必須要件に「パートナーセールスの経験」を入れてますが、必須要件に入れて募集集まりましたか?
石川氏:
最初は苦戦しました。が、ビズリーチのスカウトを活用したり、カミナシのビジョンやパートナーセールスの戦略を記事化したりした結果、興味を持ってもらえる方が増えまして、エージェントの力も借りて経験者を採用できました。
桑原氏:
会社の求人票の要件としてはパートナーセールス経験者って書いてますが、私個人としては別に経験者じゃなくていいと思ってます。先ほどお伝えしたように、パーソナリティの要件の方がめちゃめちゃでかいと思っているので、その方が絶対レバレッジも効くと考えています。
参加者からの質疑応答
質問①:金融機関が魅力的だと思う手数料の下限はいくらぐらいかと思いますか?
石川氏:
結論、金融機関の評価基準はそれぞれ異なります。例えば、その商材を販売した金額がそのまま動機付けにつながる場合もあれば、その金融機関内でのポイント換算で評価されるケースもあります。金融機関は半年ごとの目標設定をしており、営業マン1名あたり数千万〜数億円の目標を持つことが多いですが、SaaS商材を販売しても金額の評価自体は微々たるものです。各銀行ごとに評価制度が異なるため、まずは事前にその評価基準を確認することが重要です。確認後、例えばキャンペーンを設定してそれそ少し上回る金額を設定したりというような工夫しながら、金融機関側が紹介がしやすいように調整しています。
桑原氏:
石川さんの話の通り、金融機関は聞いてみたら素直に答えてくれることが多いです。弊社もいくつかの金融機関に確認し、平均的な評価基準を把握しています。評価基準には金額や件数、紹介履歴などが含まれ、個々の銀行員に対してどう還元されるかを事前に確認します。手数料については金融機関によってまちまちです。
石川氏:
ちなみに、弊社のパートナー制度は紹介代理店のみで行っており、どの金融機関も手数料は一律にしています。一律の基準を設けることで、管理が簡単で、必要に応じて後から変更可能だからです。基本契約以外の部分ではキャンペーンを実施し、期間を区切って対応しています。これにより、金融機関の評価基準に合わせた柔軟な対応が可能となります。
また、キャンペーンを実施する際は少なくとも半年間の期間を設定し、四半期ごとの目標設定に合わせて実施しています。あまりに期間が短すぎると、キャンペーンの効果が薄いことが多いため、半年間くらいの期間は設けた方が良いかと思います。
質問②:どのように金融機関とのパートナー契約を開拓していったのか?
石川氏:
最初に金融機関のアライアンスパートナーを始めた時の話ですが、先駆者の方に「Googleで『銀行名』と『コンサルティング営業部』等でキーワード検索して、アウトバウンドで架電すると良い」と教えてもらいました。また、トークスクリプトも教えてもらいましたが、インサイドセールスが下手だったのか、一向に取り次いでもらえず、全然成果が上がりませんでした。そこで、会社として取引のある金融機関やVCから紹介で1行ずつパートナーとしての取引を広げていくことにしました。
現在は、金融機関同士が横で繋がっているため、1つの金融機関と繋がると、その金融機関から他の金融機関にも広がることも多いです。例えば、日本政策金融公庫から資金提供を受けていると、全国の銀行と繋がることができます。また、証券会社がスタートアップ支援を行い、IPOを目指すスタートアップにビジネスマッチングを提供するケースもあり、これらを活用してリファラルでの紹介をメインに進めています。
桑原氏:
弊社もほぼ同じ方法で進めています。資本を入れてくれているところからのリファラルがやはり1番動きやすいです。また、地道に検索してアプローチする方法やマーケティング代行サービス、アウトバウンドサービス、CXOレターなども活用していますね。これらの方法は、活用方法次第で大いに可能性があるかと思います。
質問③:(カミナシ様への質問)パートナー個社ごとの対応で、効率的だが成果が出た・うまくいった取組みがあれば教えてください
石川氏:
まず、私が1人でパートナーセールスを担当しているため、個別のカスタマイズには限界があります。各社ごとに対応するのは難しいため、1つの要望を全体に横展開して、どの会社にも喜ばれるように工夫しています。しかし、金融機関相手のフォローはテックタッチで行うのが非常に難しいです。例えば、パートナーのページを作成するなどの取り組みをしても、金融機関は外部URLのクリックを許可しない場合が多いです。そのため、効率的なフォロー方法を模索しています。現在、動画やセミナーの動画を活用したテックタッチによる理解促進を試みていますが、まだ効果的な方法は見つかっていません。さらに、メガバンクと地方銀行ではコンプライアンスの違いがあり、できることが異なります。このため、法務やコンプライアンスに関する提案を銀行側に行い、どこまで調整可能かをチャレンジしています。
質問④:他商材とのセット販売は取り組まれていますか?
桑原氏:
今まさに模索中ですが、ドアノック商材として使ってくださいという伝え方に今は行き着きました。具体的には、建設業でHRに特化しているという簡単な説明だけで、商材の詳細な理解は不要という形で、初期はこの方法でバンバンやっていました。
担当しているOA機器のパートナー企業は、プリンターや複合機が主力商材で、彼らの提案先は総務や情シスでした。しかし、人事関係では経営者が人事を見られたりもするので、新しい部門・窓口が開拓できますよ、というのが非常に魅力的に感じてもらえました。
その後、昨期途中くらいから、セットで提案する商材を増やしていこうという話をまさに始めています。ご存知の方も多いかと思いますが、各IT商社さんがそれぞれ独自のパッケージングモデルを活用し、営業マンにとってもポイントやボーナスの査定に影響があるようにしています。ようやくIT商社内のそのような仕組みが理解できてきたので、今後、それこそ採用やタレントマネジメント、労務関係のシステムなどとのセットプランは作れないかというような議論をしている最中です。
石川氏:
現状、まだ具体的な成果は出ていませんが、先ほどの失敗したドメインパートナーについて話します。彼らは業務サービスの理解が非常に深いため、彼らのサービスとセットで売れるプロフェッショナルサービスを一緒に構築できないかまさに相談中です。具体的には、プロフェッショナルサーチやコンサル領域、分析サービスを付加して、一緒に提供する計画です。現状ではまだ構築中ですが、今後はこれを進めていきたいと考えています。
質問⑤:パートナーとの予実のforecastをどんだけ精緻化できるかというノウハウが知りたい
石川氏:
正直に言うと、弊社はパートナービジネスが立ち上がって1年半でようやく成果が出始めたところです。そのため、精密なforecastを組むのは非常に難しいです。立てた計画がうまくいかないことの方が多く、再現性を持って進められるかが課題です。特に金融機関は定期的に人事異動があり、組織がガラリと変わるため、順調に進んでいたプロジェクトもトップが変わると推進力が一気に落ちることがあります。これをどうやってうまく進めるかが重要です。
桑原氏:
当社でも高い精度なものは出せてないですが、作り続けることが必要だとは感じています。パートナーシップには多くの変数があり、どの要因がどの成果に結びついているのかという因果関係を導き出すことは非常に難しいですが、forecastとbackcastを繰り返して徐々に精度を高めていくことは続けていきたいと考えています。
セミナー後の懇親会の様子
当日は生憎にも雨風が強い悪天候でしたが、セミナー後の懇親会は非常に熱気に満ちた会となりました!
4/11に開催したセミナーでは1時間程しか懇親会の時間がなかった反省を踏まえ、今回は1時間半の懇親会TIMEを設けましたが、それでも時間が足りないほど参加者の皆さんが多くの一次情報を取得しようと積極的に多くのパートナーセールスの方々と交流されているのが非常に印象的でした!
(そして皆さん、本当に話し込んでいて、軽食とお酒ダダ残りww)
当初は20時半まで懇親会の予定でしたが、皆さん非常に話し込んでいたため、助太刀様のご厚意もあり21時半くらいまで懇親会を延長させていただくほどでした。
そして今回のパートナービジネスセミナーは初めてパートナーセールス研究会のセミナー・イベントに参加いただいた方が多かったのと、パートナー界隈のイベントとしては珍しく女性比率の高い会となりました!
第4回目となった今回のパートナービジネスセミナーも非常に多くのパートナーセールスの方々にご参加いただき、本当に感謝!
ご参加いただいた皆様、足元の悪い中、当日はご参加いただきありがとうございました!
そしてオフィスを貸してくださった助太刀様、本当にありがとうございました!!
次回は6/25(火)、おそらくパートナービジネス界隈「初」となる大阪でのパートナービジネスセミナーを開催させていただく予定です!(オフライン・オンラインのハイブリッド形式の予定)
皆様次回のセミナーもお楽しみに!