HUNTER×HUNTER考察 クロロ・ルシルフルについての考察

はじめに

念とは心から生み出されるものである。一方的にボコって勝つために生み出された能力もあれば、こんな能力あったら便利だろうな程度で道具として生み出された能力。占い師に憧れて生み出された占い能力に、自分がもうひとりいれば最強じゃんと単純に自分を二倍にした能力。
さて、クロロの念能力である盗賊の極意(スキルハンター)とはどういった心から生み出された能力なのかをここでは語りたい。

幻影旅団

クロロたち幻影旅団を語る上で「始めはただ欲しかった」というセリフにビデオテープを投げ合うシーンは印象的だろう。
のちにこのビデオテープは、クロロたちの住んでいる流星街に捨てられたヒーロー番組の録画だと判明した。
これが彼らにとって唯一の娯楽であり、これをアテレコすることでクロロは流星街の子供たちに娯楽を拡散させたのだ。
そして仲間たちとともに、劇団をつくり世界を周ることがいつしか、彼の、彼らの夢となっていったわけである。

それが歪んだのが、クロロたちの仲間であったサラサの誘拐と惨殺である。
恐らくは人狩りに襲われ、死に絶えるまでを無惨にも撮影されたと見られる(これもまた、きっかけとしてビデオテープがかけてある)。
彼らが自己顕示欲からそれを世の中に晒すはずだと考えたクロロは、自らを蜘蛛とし蜘蛛の巣というダークウェブの網を張り巡らせることにした。
こうして生まれたのが、ありし日の幻影を追い求める堕ちた旅団である。

盗むということ

幻影旅団は盗賊として名が知れている。だが、実際の旅団の活動は、略奪の他にごく稀に慈善活動も行っている。これまでは「始めはただ欲しかった」から、盗賊になったと思われていたが、実際の目的は仲間の復讐である。だから、盗んだものに執着はしない。ただ、盗むという行為が、彼らの裏の活動目的を隠していたわけだ。
では何故、クロロは盗賊の極意(スキルハンター)という能力を発現したのだろうか。
おそらくこの謎を解くヒントが、「動機の言語化か......余り好きじゃないしな。しかし案外...いや やはりというべきか 自分を掴むカギはそこにあるか………」というセリフにある。

このセリフが発せられた時点では、何言ってるんだこいつというセリフになってしまうが、幻影旅団の目的を知った後では、別の意味が見えてくるだろう。すなわち、復讐の是非である。
盗られたものを盗りかえすために盗賊となり、復讐する。その目的のためであれば、例え無関係の人間であろうと虐殺する。
シーラを除く旅団メンバーはこれを受け入れ、自ら悪の道に堕ちていく。諦めと怒りが彼らの原動力となったのだ。
一方でシーラは夢を追いかけ、ハンターを目指した。
クロロからすると復讐のために相手と同じことをする自己矛盾。聡明なクロロだからこそ、復讐が何も生まないなんてことは気づいている。
それでも彼は彼の守りたいもののために悪を貫くことを決めたし、自分の心を殺してでもその生き方に人生を捧げたのだ。
一方で、「なぜ関係ない人を殺せるの?」というゴンの問いかけには、「なぜだろうな。関係ないからじゃないか?」と答えている。
その言葉は、サラサを誘拐し惨殺した連中と同じ考えであり、ここにクロロの心の闇をみることができる。
人間の闇に触れた結果、自らも闇に堕ちたクロロ。彼は誰よりも他人の心を知りたいと思っている。それは他人の心の闇を知ることで、自分の心の闇を肯定したいのかもしれないし、他人の心の光を知ることで、自身の行動を否定したいのかもしれない。
人の心。すなわち念である。彼の念を盗んで集めるという行為は、人の心を知る、集める行為の現れなのだ。
人の心を知り、相手の心に思いを馳せ、自らと同じ闇をそこに見る。そうして自分のものにしていくこと。それが盗賊の極意の醍醐味なのだと彼自信が語っている。

クラピカとヒソカへの扱いの違い

クラピカが鎖野郎として、現在あまり旅団が復讐に挑んでない理由。
表向きはクラピカの死後強まる念を警戒してのことだが、実際は相手が自分らと同じ復讐を動機としている点にあると思っている。
最初はマフィアに殺されたウボォーの敵討として、クラピカを探し回っていた旅団だったが、その目的が身内の復讐であり、自分の仲間のために最大のチャンスを捨てたとして、旅団から共感を受けたのである。
おそらく彼らはもう、クラピカが自分で襲いかかってこない限りは放置することに決めたはずだ。
それに対して、ヒソカは自らの戦闘欲求のためにクロロと戦うことを望み、あまつさえ仲間の不意をついて虐殺した。
ヒソカ同様、クロロももはやヒソカを完全に殺すだけの目標としているのだ。天空闘技場の際は、まだヒソカに満足してもらう目的もあったが、もはやクロロにとってヒソカは元仲間でなく殺し切るべき敵となったのだ。

おわりに

盗賊となったから盗賊の極意が発動したのではないと予想。相手の心を知るために、心=念として発動した結果が盗賊の極意と思われる。
だからこそ、案外この能力が発現したから、盗賊になったのかもしれない。
そうでなければ、暗殺集団でもテロリストでも何でも良かっただろう。やっていることは変わらないだろうし。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?