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終わりのサイン問題

トレーニングの最後「トレーニングおしま~い・終了!」のサイン、皆さん使ってますか?
問題発生してませんか?

終わりのサインを出すと・・・・
 ・ブリーチジャンプ、テールスラップ
 ・ステージへの乗り上がり
 ・ゲートや壁面への突進
 ・餌遊び、嘔吐
 ・他個体への威嚇、攻撃
 ・ゲストやトレーナーへの威嚇、攻撃

困ったなー、対策しなきゃなー、でも毎回出るわけでもないし、どうしようかなー。
そんなこんなで、ぐずぐずしているうちに、加速度的に問題が大きくなってから、ようやく対策を始めるわけですが・・・。

対策① 終わりのサインを出した直後にトレーニング再開する。
対策② 終わりのサインを出した直後に餌をあげる、時にはサインをだしたりもする。

効果があるのは最初だけで、あっという間に元通りなので、終わりのサインが問題なので、
「終わりのサイン出さなきゃいいんじゃね」的思考の結果・・・。

対策③ 終わりのサインを出さない
対策④ トレーニング終了を明確にせず、いつ終わったのかわからなくする。

実は、どれもトレーニング終了のタイミングをぼやかしてるという意味では同じ対策です。
対策の効果については、問題行動が減る時もあるのですが、なんとも言えないです。逆に問題行動の頻度増加、過激度上昇、問題発生のタイミングも徐々に前倒しになって、トレーニングの中盤でも発生するようになったりと、微妙。
問題解決の目途が立たないと、トレーニング終了をわからなくする為にさらに高度なテクニックが必要となってきます。出来るトレーナーと出来ないトレーナーの差が開いて、トレーニング終了をぼやかす事の出来ないトレーナーに対して問題が集中的に発生するようになり、出来るトレーナーは出来ないトレーナーに対して「何でできないの!」とチーム内の不協和音に発展。

問題解決への対策が、イルカとトレーナーの騙しあいに変り、出来る人と出来ない人の差が大きくなって人間関係を悪化させ、結局どうにもできずに、ごまかすことがうまい人が担当して問題解決、これで良いのか?

そもそも、なぜ終わりのサインを出すと問題が発生するのか?
原因は、何だと思いますか?
楽しいトレーニングの時間が終了してしまう、餌の時間おしまい、大好きなものが取り上げられる事に対する抵抗と思っていました。突然トレーニングを終了することが問題で、少しづつクールダウンして、遊びの時間に「なだらか」に移行することが必要だと。これがうまく出来ないから、問題が起きるんだと思い込んでました。でも、最近はいろんな原因がありそうだ、と思うようになりました。

原因その1:般化?、消去抵抗?
ジャンプ系の種目のトレーニングを集中的に行った後で突然終了すると、直前まで行っていた種目に似たジャンプを激しく行うことがあります。これは終了前にクールダウンの時間(イルカとトレーナー両方とも落ち着いてゆっくり動く)を設けることで問題解決することが多いです。クールダウンの時に、トレーナーは変な気配や空気を出さない事も重要です(今にもサインが出そうな雰囲気、トレーナーが体を動かす準備をすると、イルカも次に起きる事への準備を始めるためクールダウンにはなりません)。

原因その2:拘束からの解放
トレーニング終了直前に、イルカに緊張を限界まで求めていると(長時間の静止、相性の悪い個体や苦手な場所への接近、限界ギリギリの脱感作など)、トレーニング終了と同時にブリーチジャンプ等の激しい動きをすることがあります。終了前に息抜きをすると(安心できる場所へ移動する、軽い運動など)ブリーチジャンプ等の頻度減少につながります。
ですが、そもそもトレーニングの内容がイルカの限界を超えていることが問題です。トレーニング中に良い行動が出現し、それを強化して出現頻度が上昇していたとしても、トレーニング終了後に問題行動が発生するようなら、イルカに対する負荷が大きすぎたと判断したほうが良いと思います。そんなに負荷をかけなくても、出来ますよ~、やり方次第です。

原因その3:葛藤(接近ー回避型)
やりたくないけど餌が欲しい。
「ぜーーーったいにやりたくない、けど、すっごーーーいお腹すいた!」
激しい葛藤状態が長時間続くようなトレーニングが毎回繰り返され、毎回もやもやしたままトレーニングが終了していれば、終了直後に問題行動が起きるのは当然。
終了の仕方の問題ではなく、給餌量設定やトレーニングの内容の見直しが必要ですね。

原因その4:混乱
何をすればよいかわからない、トレーニング中に混乱はつきものです。混乱を乗り越えた時に、わかった楽しさや出来た自信が得られ、次へのモチベーションに繋がると思うのですが、これも程度問題。明らかに限界を超えた瞬間に問題が発生すればわかりやすいのですが、混乱の程度によっては、ワンテンポ遅れて(トレーニング終了直後)問題が発生するとこがあります。サラリーマンが仕事帰りに一杯飲みながらが部長の愚痴をこぼすようなものでしょうか。これも、トレーニングの難易度設定見直しをする必要があります。

原因その5:特になし
原因があって問題行動が発生してたけれど、同じ状況に長時間さらされることで因果関係がどうでもよくなってしまって、原因を排除しても問題行動だけが残るパターン。この状況に陥ると、問題解決が難しい。この場合はトレーニング終了後(問題行動が出る前に)、すぐにトレーニングを再開したり、終了の合図直後に餌を与えたり、大好きなおもちゃをあたえたり、おもちゃの出る場所を変えたり、終了直後の注意を引くような工夫で改善することがあります。


終わりのサインで発生する問題行動の原因は、ほとんどの場合トレーニング中にあるのではと考えます。
例えば、尾びれ保持で30秒の静止が出来たとしても、
 ・OK(ブリッジ)直後に激しいターンや、他個体やトレーナーへの威嚇攻撃
 ・強化子(魚)直後の離れや、他個体やトレーナーへの威嚇攻撃
 ・強化子(魚)を与えているにも関わらず、サイン反応が悪くなる
 ・トレーニング終了後の問題行動
これらの行動が出るのであれば、イルカへ求める課題が難しすぎる、設定が高すぎるので、トレーニング内容を見直した方が良いです。良い設定を見つけるには、表面上の行動だけでなく、もっと詳しく、細かく、シビアに、行動の微妙な違い(行動の質)まで気を配りましょう。

そもそも、終わりのサインは何のために使うのか、目的は何でしょうか。

「楽しいトレーニングを進めてきましたが、そろそろ終わりの時間が来ました。もう少しやりたいですか?でも今回はここまで。決してタイムアウトではありませんよ、ダメな事があったからおしまいにするわけではありません。トレーニングの時間、食事の時間がおしまいです、また次回を楽しみにしておいてくださいね。さて、今からの時間どう過ごしますか?休憩する?おもちゃで遊ぶ?仲間と過ごす?人と遊ぶ?探索する?自由に過ごしましょう!新たな楽しい時間のはじまりです!」

終わりのサインには、こんな意味を込めたいと思っています。
終わりのサインがイルカにとって好ましものになりますように。

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