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『コンビニ人間』(村田沙耶香)読書感想文#13

最近、読書は続けていますが、読書感想文を書く暇があまり取れませんでした。

Audible(Amazonの朗読アプリ)にハマってしまい、通勤中の電車の中で読んでいます。ちなみにライトノベルです。

秋から冬にかけて少しだけ仕事が忙しくなります。


さて、今回読んだのは『コンビニ人間』。芥川賞受賞作品です。

有名作品なので読書家の方は皆さまはとっくの昔に読んでおられるのでしょうが、私は読んだことがありませんでした。

もちろんタイトルは聞いたことはあったので、いつかか読んでみようと思っていました。

内容紹介(Amazonから)

「普通」とは何か? 
現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作 

36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。 
日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、 
「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。 

「いらっしゃいませー!!」 
お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。 

ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、 
そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。 

累計92万部突破&20カ国語に翻訳決定。 
世界各国でベストセラーの話題の書。 



この小説は、コンビニ店員である「私」の話です。

冒頭を読んだ私は、これがどのように展開して、どのように面白くなるのだろうかと思っていました。

コンビニと言えば、私にとって最も身近なお店です。ATMや支払いに使ったり、お菓子や飲み物を買ったり、好きなYouTuberのネットプリントを求めに行ったりすることもあります。

コンビニとは、便利さや日常の象徴です。

この本を読む前に、「コンビニ人間」というタイトルとはどういう意味だろうと考えました。

コンビニ人間──物質主義でコンビニに代表される便利な現代社会に生きる人間と社会の功罪を言い表した表現。そのような意味かと思っていました。

実際に読んでみると、その斬新すぎる主人公とその内容にすぐに夢中になって読んでいました。

通勤中、一時間程度であっという間に読み終わました。

読後、改めてタイトルの意味を考えて、案外、そのままの意味だったなと思いました。

幼い頃から若干サイコパス気味な行動で、社会の異物として排除されてきた主人公は、コンビニ店員として働くことで、初めて社会の歯車になったことを実感して充足感を得た人間です。

もはや「コンビニ人間」という種類の人間なのです。「コンビニで働いて○年」ではなく「コンビニ人間として生まれて○年」という考え方の人間なのです。

社会の歯車として働くことで、自分は確かに社会の一員、構成員であるという充足感を得るというのは誰しもあると思うのですが、主人公のコンビニに対する度を過ぎた入れ込み具合は尋常ではありません。

主人公は、人間らしい振る舞いや行動を自然に獲得できず、今まで社会から排除される側の存在であり、ある意味「人間」ではありませんでした。(あえてこういう表現を使っています)

そんな主人公を「人間」として産んだ、あるいは「コンビニ人間」として産み直したのは、コンビニです。親ではありません。

作中に、妹は頻繁に出てくるのに、親が大して出てこないのは、意図的なものなのだろうかと思わずにはいられませんでした。

コンビニ店員としてのマニュアルや同僚店員を通じて、主人公は一生懸命に普通の人間に擬態し、人間らしい振る舞いや言動を獲得しようとして、実際に成功しました。

主人公のコンビニ愛は、単にコンビニが自分に人間性を与えてくれるからというだけではなく、子が親を慕うような気持ちもあるのではないかと思います。

穿った見方でしょうか。

コンビニという無機質なシステムに対する愛としては、いささか重すぎる気がします。

おすすめの作品です。

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