『第9地区』映画感想#1


Amazonプライムビデオで見ることが出来たので、あらすじを思い返しながら感想を書きます。

あらすじ(結末までネタバレ有り)
※思い出しながらなので所々間違っているかもしれないです。


 物語はドキュメンタリー形式で進行し、エイリアンとヴィカスという人間に対する人々のインタビューから始まる。 

 突如、ヨハネスブルク上空に現れた宇宙船に搭乗していたエイリアン達。宇宙船内は何らかの原因で動くことができず、かれこれ20年くらい上空で立往生していた。

 人間達は宇宙船に乗り込み、衰弱した様子のエイリアン達を保護、難民キャンプに収容して隔離するが、スラム化してしまう。その名も第9地区である。

 人間達から「エビ」という蔑称で呼ばれるエイリアン達は、人間から盗み、殺し、誘拐する等々、数多くの問題を引き起こし、地元住民と衝突する。また、エイリアン達に対する人間達の差別感情も高まっていた。

 主人公のヴィカスは、MNUという会社のエイリアン課に所属しており、エイリアン達の居住区移設計画の責任者に抜擢される。ヴィカスは、新居住区への移住に対する同意書にエイリアン達のサインを求めるため、第9地区を訪れる。

 その最中、一風変わったエイリアン宅から謎の液体が保管された容器を発見、その容器から噴出した液体が顔にかかってしまう。

 その後、ヴィカスは徐々に体調に異変をきたし、遂には片手がエイリアンのように変形していく。

 「感染者」となったヴィカスは、人間とエイリアンの遺伝子を併せ持つ世界で唯一の存在となり、MNUの実験体にされてしまう。エイリアンのDNAにしか反応しないエイリアンのエネルギー武器も使えるようになっている。

 ヴィカスの感染が進んで死んでしまう前に、とサンプル回収(恐らく細胞やら臓器やら)しようとする研究者達を蹴散らし、命からがら逃げ出すことに成功。液体の謎を知っていると思しきエイリアン、通称「クリストファー・ジョンソン」とその息子の宅にたまたま逃げ込む

 クリストファーの家の地下には、上空に浮かぶ母艦を動かすための鍵とされる宇宙船が眠っていた。それを動かす最後の動力源が例の液体である。

 液体があれば上空の宇宙船を動かすことができ、宇宙船内でヴィカスを人間に戻すための治療をすることも可能だとクリストファーから知らされたヴィカスは、クリストファーと協力してMNUに乗り込み、実験体にされた時にMNUに押収された液体容器を回収することに成功する。

 その後、ヴィカスを捕獲したいMNU、ヴィカスの変形した腕を食べてエイリアン武器を使えるようになりたいと目論むナイジェリア人達とバトルを繰り広げた末、ヴィカスはクリストファーを身を挺して守る。

 クリストファーは、「必ず治療しに戻る(※ただし治療出来るようになるのは3年後)」と感謝の言葉を言い残してその場から逃げ、息子と共に宇宙船の母艦を動かすことに成功する。

 20年越しに動き出した宇宙船をヴィカスは満足げに見上げる。その後のヴィカスの行方は誰も知らない。

 ヴィカスの妻がドキュメンタリーのインタビューに答える場面。玄関先に一輪の花(金属製のガラクタから作ったと思われる)が置いてあったと言い、夫が置いて行ったものだろうと語る。

 場面が切り替わり、一人のエイリアンがガラクタから花を作っているところで物語終幕。


感想


 ます、絵面が綺麗ではないので苦手な人は少なくないかもしれない。エイリアンがお世辞にも可愛くないが、物語の進行上、何度も出てくるので注意。

 また、人間がエイリアン武器で死ぬ時に、スイカを熱した際に爆発四散する感じ(YouTubeで探せばあります)で死ぬので、ちょっとグロ注意なのかもしれない。実験体にされるときも痛々しい。苦手な人は本当にダメかもしれないが、案外ここまでだと「いかにもB級」で大丈夫かもしれない。

 B級SF映画だが、社会的な問題(難民、差別、貧困、食人、倫理的問題など)が取り上げられてるので、個人的には面白いと思った。

 実際に200万人くらいのエイリアンを保護、収容するとなれば、映画以上に様々な社会問題が引き起こされるだろう。エイリアンを難民にそのまま置き換えられそうな話だが、エイリアンしか使用できない強力な武器があり、人間が自分達もその強力な武器を使用出来ないか目論んでいるフィクションがしっかりあるのも良かった。

 最初、主人公のヴィカスは気弱で優しい、人当たりがいい、ヘタレという印象だが、エイリアンに対しては他の人間同様に差別的という描写がされる。エイリアン達の卵を楽しそうに焼き尽くしたりとか、エイリアンの所持品を戦利品のように押収したりなど。

 エイリアン達が知能の低い生物ならここまで嫌悪感はないのかもしれないが、エイリアン達は人間の言葉、文化を解し、元々高度なテクノロジー(エネルギー武器、宇宙船など)を有しているので、下等生物扱いが気分悪くさせられるのだが、それが後半に生きてくるのである。

 ヴィカスがエイリアン化した際、自分が差別した側に転落する、その様が痛々しい。

 個人的には、こういう気弱で人当たりがいいキャラがいやに差別的という描写に違和感があった。あからさまなのでエイリアンに憎しみを抱くような背景があるのかと思ったが、それも無さそう。何故ここまで差別的な部分を強調して撮るのかと思ったが、エイリアンに変容したところで納得。

 確かに、単にエイリアンになるより、差別していたエイリアンになる方がより悲壮感が出る。
 そういう話の構造だった。

 ヴィカスがクリストファーと協力するのが面白い。元々敵対関係だけど、二人の目的のために協力しないといけないっていうパターン。あるあるだけどやっぱり燃える。結末では友情を感じさせたりしてね。 

 あとはナイジェリア人達。闇市を牛耳り、エイリアン達が大好きなキャットフードを法外の値段で売り捌いたり、武器を集めたりしている。

 エイリアンや半エイリアンのヴィカスを食べようとするのは、アフリカのそういうのを描いているんだろうなぁ。「うえぇ・・・」と思いながら見てた。食べてその力を取り込むって感じらしい。真っ先に思い浮かんだのがアルビノのそれ。

 一つツッコミたかったのが、エイリアン食ってもエイリアンの武器を使えるようにならなかったのに、半エイリアンのヴィカスを食べて使えるようになるわけないでしょうがということ。

 ところで、ちょっと納得いかないのが終わり方。

 宇宙船が動いた時、全てのエイリアンが宇宙船で自分たちの星に戻り、難民問題は解決するんだと思っていた。これは私の勝手な思い込みだけど。だって、あの液体さえ手に入れば全部解決するみたいな感じだったから。

 だが、エイリアン達はクリストファーたち親子以外は地球に取り残されてしまった。

 その後、エイリアン達は居住区を移し、エイリアンの数も増加。物語的には何の解決にもなっていない。

 これをどう見たらいいのだろうか。

 続編への布石か、現代社会への警鐘か。


 星を付けるなら、3.5くらいでしょうか。

この記事が参加している募集

#映画感想文

67,269件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?