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『海と毒草』(遠藤周作)読書感想文#12

遠藤周作の作品です。時折、新聞でも取り上げられているのを見かける有名な作品です。

ネット記事か何かで見かけた、遠藤周作のおすすめ作品に挙げられていたので読んでみました。

太平洋戦争末期、九州帝国大学(現九州大学)医学部の医師らが、捕虜となった米兵を生体解剖した事件を題材にした『海と毒薬』です。

ただ、題材になった事件というものであって、小説の内容と実際の事件の内容は色々と違うところはあるんだろうなと思います。この前に見たニュース記事でも、当時を知る方のインタビューでは、小説と実際の事件に色々と異なる点や誤解があると書かれていました。

戦争の極限状態、出世争い、派閥争い、自己保身のウソ、責任逃れ、嫉妬、倫理観、罪、良心、罰、世間体、同調圧力など、この作品は思わず目を背けたくなるような……まあ重苦しいテーマを次々に読者に突きつけてきます。

読後感は暗澹たる気持ちになりますが、考えさせられるものでした。

「ああ、わかるなあ」「自分(私)のこと言ってる?」と思うくらいに登場人物たちの負の感情が本当にリアル。心の奥底を覗かれているみたいだと思いました。



遠藤周作の作品は『沈黙』しか読んだことがありませんでした。『海と毒薬』で二冊目です。

『沈黙』は日本にやってきたイエズス会の宣教師の話です。私自身、キリスト教信者でもなければ熱心な宗教家というわけではありませんが、この作品のことがとても好きです。何回も読み返しています。

マーティン・スコセッシ監督が同小説を原作とした映画『沈黙 -サイレンス-』を制作しています。

(関係ないけど、この前観た同監督の『シャッターアイランド』、結構面白かったなぁ)

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