見出し画像

「w」なんか、使えない!

ご存知、(笑)にとって代わって幅広く使われるようになった、w。通称、草、である。

ネットスラングであり、あえて誤解を招くような言い方をすれば「元々はネットオタクや2ちゃんねらーの言葉」だった。

初めて目にしたのは15年くらい前のこと。このころ、まだ世間一般でwと聞いて思い浮かべるのは、(笑)という意味よりも辻ちゃんと加護ちゃんのふたりによるユニット「w(ダブルユー)」のことだった。多分。


当時はまだ「現実にネットを持ち込むイタイ人」しか普段使いしていなかったが、ネットやスマホの普及に伴い、いつの間にか(笑)にとって代わってwが一般的に使われるようになった。

その一方、私は未だにwが使えない。

勿論、他人が使っているのは気にならない。特に、若い世代の人は元々(笑)よりもwの方が身近なので、wを使う方が自然だろう。本件は、30オーバーの、場合によってはミドル世代に向けた私からのラブレターである。


さて、wを使いし30オーバーの者たちよ。まず言っておく。オレは、アンタらを否定するつもりはこれっぽっちもないんだ。先にこれだけはわかっておいてほしい。


で、いつからだ?いつ、wに魂を売った?オレたちは、ずっと(笑)と一緒に走ってきたじゃないか。パカパカの折りたたみケータイやスライド式のケータイで(笑)を使ってきたじゃないか。

ケータイのキャリアが違って絵文字が使えない相手には、☆、♪、(笑)を駆使してお茶を濁してきたじゃないか。

30オーバーでwを使っている人たちは、どこかで(笑)からwへの切り替えをしているはずなんだ。その時、心のどこかで「自分を殺した気持ち」がなかったか?オレには、それがあるんだ。

過去、何度も使おうとした場面はあったよ。でも、オレの中のオレが笑みを浮かべながら言うんだ。

「とうとうお前も迎合するのかw」

ってね。嫌味なやつさ。


でも、やっぱり出来ないんだ。プライドが高すぎるのかもしれない。wだけは使えないんだ。同じネット用語でも「ググる」を使うのには抵抗ないのに、おかしな話だよ。


昔、こんなことがあったんだ。21、2の頃だったかな。バンド活動をしながらある通信会社で契約社員をしてた頃、40代後半くらいのオッサンに声をかけられたんだ。

「キミ若いから知ってると思うんだけど、若い子とチャットしてるとwって使ってくるじゃん?アレなに?」

震えたね。全身に鳥肌が立って、そのまま鳥になって飛んで逃げたよ。

(コイツは表現の通じないような若い世代に迎合してまで、ヨロシクやろうとしてんのか)

って考えてしまったんだ。キモチワルイ話だと思ったね。wに対して極端に忌避感が出たのも、それが原因なのかもしれない。だけど、多分原因はそれだけじゃないんだ。


そもそもオレは変化が嫌いなんだ。物を買い替えるのもあまり好きじゃない。そんなオレが1番苦手なのは、言葉や呼び方を変える事なんだ。

子供の頃、ボクからオレに一人称を変えた日のことは今でも覚えてる。

(オレって言うぞ……今からボクはオレって言うんだ……!)

と決意して、家族の会話の中でタイミングを見計らい、自然にオレって言った時は、膝が震えてたね。緊張で汗だくだった。その時、オレの握った拳から出た汗が溜まって出来たのが、琵琶湖だって言われているんだ。


こんな調子だから、「自分の知らない間にできたあだ名」なんて、最悪だね。自分が「あだ名が成立した瞬間」に立ち会っていたならそのあだ名で呼べるんだけど、その場に居ない時に成立したあだ名でなんか恥ずかしくて呼べるわけがない。

自分がいない時に成立したあだ名で呼ぶのって、何だか図々しい感じがするだろ?これまで呼んでいた名前を、事情も分からずに捨てるんだぜ。言葉や呼び名を変えるのには、オレにとってシチュエーションや覚悟が必要なんだ。


確かに、そういう覚悟を伴わないで言葉を変えることができる連中もいるよ。でも、noteにいる人って、そういう人じゃないだろ?もうちょっと、繊細な人が多いはずだよ。だから、自然にwの導入ができた人って、少ないんじゃないかな。

オレの友人のSも、当然wなんて使わない。さすが、心得ているよ。精神が高潔といえるね。自慢の友達さ。特別な友達。そう、マイミクなんだ。

ただ、もしかしたらコイツも自分の奥さんにはwだらけのやりとりをしているかもしれない。でも、それも良いと思うんだ。相手に合わせたノリも大事さ。


オレが思うに、wと言う表現には品がない。そして、どこか若くて、明るいんだ。バーベキューとかやってるやつにぴったりな笑いの表現だよ。まるで太陽さ。

そのせいか、文章の中にwがあるだけで何だか文体がポップに見えるから不思議なもんだよ。元はネット用語だったのに、大したもんさ。クソったれだよ。

オレも含めてそういう類のノーテンキさみたいものに抵抗がある人って多いと思うんだ。オレはラテンの人にはなれない。だからこそ、あんたらがwに魂を売ったときの話が聴きたいんだ。きっと、覚えているはずさ。

例えば、グループラインでいつの間にか自分だけ(笑)を使っていることに気づいた、とか、好きになった相手のノリに合わせて、とかね。尊敬している人が使ってるのを見て抵抗がなくなった、なんてこともあるかもしれない。

多分、wを使うようになった時、そこに何かしらのドラマがあったんだと思う。別に、ないならないでも良いんだけどね。


やっているゲームがあるんだ。ソシャゲっていうのかな。もうすぐサービスが終わりそうな、風前の灯火のようなゲーム。昔のゲームの続編みたいな位置付けだから、割と年齢層が高いゲームなんだ。

チームを組んで戦うゲームだから、当然交流が産まれるんだけど、そこで、50代前半と思われる女性と知り合ったんだ。知り合ったと言っても、ゲームの中だけどね。

彼女は幼児教育に携わる仕事をしていたためか、割と綺麗な言葉を使うんだ。本もよく読んでいるみたいで、当然(笑)を使っていた。

そんな彼女が、先日wを使ってきたんだ。別に、おかしなことじゃない。wなんて今時誰だって使ってる。この前犬ですら使ってるのをみたよ。でも、重要なのは彼女はこれまで使ってこなかったってことなんだ。

オレは思ったね。ああ、覚悟を決めたんだな、これからはwとやっていくんだなって。

何があったのかは、わからない。これまでもずっと使おうとして、使えなかったのかもしれない。「おめでとう」という気持ちと、ちょっぴり「残念だな」という気持ちがあった。寂しかったんだ。

当然、「wを使うようにしたんだね」という野暮なことを言い出す人はいなかった。みんな黙って彼女の門出を見送ったんだ。wの国への旅立ちさ。

しかし、彼女はすぐ(笑)に帰ってきた。きっと、wの国の水が合わなかったんだろう。もしかしたら、使った後の気恥ずかしさに耐えきれなかったのかもしれない。


言葉なんて、本来相手に失礼でなければ好きに使えば良いんだ。だから別に(笑)だろうとwだろうと好きにすればいい。

実際、職場の60近いラテン系のお姉様が、業務連絡で「わかる〜w私も思ったw」って送ってきた時は、思わず腰が抜けて失神したけれど、別に良いんだ。個人の自由だよ。

だからオレも古いとか、おっさん臭いと言われようと(笑)を使い続けるんだ。でも、本当はちょっと、心のどこかでwを使ったコミュニケーションをとりたいって気持ちもある。

そう、オレだって若い世代に迎合してヨロシクやりたいんだ。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?