見出し画像

もう新しい人がいるんだね、




置き忘れた荷物を取りに久々に元恋人の部屋に訪れた。

残り少ない私の荷物。これを持って帰ればきっともうこの部屋に来ることは無い。


ふと目に付いた紙袋。
レディースブランドの紙袋だったから(あれ、私こんなの置いてたっけ)と思いながら確認のために中身をみた。


紙袋の中には見覚えのないパジャマと歯ブラシとスリッパ。

「…なんだ、」









もう貴方には新しい人がいるんだね、

無意識に声に出してしまっていた。

別れて数ヶ月。久々にLINEの通知が鳴ったと思ったら「最近忙しい?まだ残ってる荷物が少しだけあるんだよね。まとめとくから空いてる時に取りに来て欲しい」って。











(新しい人との日々を始めてるから、ってことね)


と妙に冷静に判断した自分がいた。

それならば、元恋人が急に連絡してくる理由もわかる。新しい恋人と新しい思い出を作っていくには、前の恋人の古い思い出など無い方がいいに決まっている。

少し傷ついている自分がいることに気付いて我に返る。
ああ私、少しだけ期待していたんだな。


まだ私に未練があったとしてすぐに好きな人なんて出来ないよな、とか
捨ててしまえばいいはずの荷物を取りにこさせたのも私と接点持ちたかったから、とか

そんなのただの私の都合のいい妄想でしかなかったな。
なんか拍子抜けだなあ。
もっと引きずってるんじゃないかなって思ってたのに。

伊達に数年も付き合ったわけではないし、お互いの将来のビジョンにちゃんとお互いが存在してたはずだったのに。

けれども人間というものは変わってしまう生き物なのだ。その時はそう思っていても今も同じとは限らない。
仕方ないんだ、こればっかしは。

変わってしまった考えの中にお互いがいなかった。ただそれだけ。

元恋人はもう新しい未来へと歩き出している。
私も歩き出さなきゃなあ。……当分先になるかもしれないけど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?