第41回 『オデュッセイア』第4歌&『プロテウス』総括
『オデュッセイア』第4歌
古代ギリシヤ。
テレマコスはペイシストラトスに付き添われ、馬車でスパルタへ行く。
メネラオスに会う。
「父オデュッセウスの消息知りませんか?」「知っとるよ」「え! どこですか!?」
「いやぁ〜、私も戦争からの帰郷は大変でした。あっちへフラフラこっちへフラフラ。
そしたらある島で、変幻自在に姿を変える不思議なおじさんプロテウスという人偶然出会えて、で帰り道を教えてもらって、で帰れたのです」
「へぇ、そうだったんですか。で父のオデュッセウスの消息は…」
「でも帰って来たらびっくり。私の兄、大将アガメムノンが部下のアイギストスに愛妻クリュタイムネストラを奪われ、しかも風呂場でその二人に殺されたって言う衝撃の事実を知らされ、私はもうショックでショックで…」
「まあ、それは大変でしたね…。で、オデュ…」
「でも、私の妻、そう戦争の原因を作ったへレネは、やっぱり私の方が良いと言うことがようやくわかったらしく戻ってきてくれたのです。これが不幸中の幸い。雨降って地固まるで、今は前よりラブラブです」
「ご馳走様です」「お陰様で」
「…あの、で父のオデュッセウスの消息は?」
「ん? そうそうごめんごめん、それだったね、あなたがここへ来た理由。あいつならオギュギャ島にいるよ」「ほんとっすか⁉︎」
「うん、なにやらカリュプソっていうオネェちゃんに足止め食らってて」「なんですかそれは⁉︎」
「いやぁ〜、ここらへんの事情は君にはまだ早いかなあ」
「でも生きてるんですねっ! やったー!」
続く。
『ユリシーズ』第3逸話「プロテウス」
時刻午前11時、サンディマウント海岸にて。
浜辺を、ぼんやり考え事しながら歩くスティーブン。
まず最初に考えたのはアリストテレスの哲学。
視覚世界という(目覚めている以上)避けがたい容態。
「でもあの人は視界がなくても、そこにある物体を確認できたそうな?」
「そりゃ物体に触ったからだよ」
スティーブンは試しに目を閉じ、歩いてみる。
ぐしゃ、ぐしゃ、足の裏で物体を確認しながら歩く。
やがて目を開けようとして、思いとどまる。
「僕がしばらく見てないうちに、もし世界が前と違っていたら(誰でもそうだがスティーブンは自分が目にしている世界しか知らない。従って自分が見ているからこそ世界が存在していると思っている)」
そしてついに瞼を開けるスティーブン。
「それみろ、僕が見てなくても、世界はなにも変わっていない」
少しがっかりしているスティーブン。
しばらく歩くと、二人組の女性を目にする。会ったことないくせに、彼女たちをフロレンス・マックイブの奥さんやら産婆さんやら「ふたりのマリア」やら勝手にネーミングして罪のない遊びを楽しむスティーブン。
またしばらくすると、近くに親戚の家があるのを思いだし、寄ろうかどうするか迷う。スティーブンは脳内で、おじさんのモノマネをしてみたり実父サイモンの真似をしてみたり、サイモンがおじさんのモノマネをするところをモノマネしてみたりする。そんなことをしていると、いつの間にか家を通り過ぎちゃう可愛いスティーブン。
没落の家系…。
スティーブンは自分の家、生い立ち、捨ててしまった信仰のこと、自分の中にいる天使と悪魔、溺れた男を助けたいが、自分はそんな柄じゃないと悩む。作家になる野心のことを考える。
マリアとヨセフとイエスのことを考える。
パリ留学時代の思い出から、父の友人ケヴィン・イーガンとその息子パトリスを思い出す。
イーガンはカッコイイおじさんだったが、彼の過激な政治思想にはついていけずお別れする。
ふと振り返ると、マーテロ塔が見えた。”あんなところ2度と戻るものか”と誓う。
岩に腰を下ろし、一休みしてると犬が駆け寄ってくる。犬は豹に見えたりする。
遠くに男女の影が見える。男女は娼婦とピンプ、ジプシーとかまた勝手な妄想をする。
突然詩作が湧く。紙切れに詩を書く。
タッションらしきことをする。
海に目をやると、帆船が見える。
また歩き出す。
おしまい。
第3逸話『プロテウス』。
…これぞ文学!
現実的にはなにも起きていない。時間にして多分20分ぐらい。ただスティーブンは海岸をぶらぶら歩いているだけ。
それがこれだけの情報量!
文章のほとんどは彼の脳内独白。いわゆる意識の流れ。
まさに文でしか表せない芸術です!
…でも、もう少しわかりやすく話してくれたらなあ。
これでスティーブン。ディダラス君とはしばらくお別れ。
第4逸話『カリュプソー』へ続く。
いよいよもう一人の主人公、ダブリンのオデュッセウス、レオポルト・ブルームさんの登場です。
あそうそう忘れちやいかん。元ネタ『オデュッセイア』も、第5歌でようやくオデュッセウスさんの登場です。
『オデュッセイア』の対応キャラ
スティーブン・ディダラス=プロテウス。ケヴィン・イーガン=メネラオス。貝を採る人たち(『二人の女』『男女』)=メガペンテス(えっと、誰だっけ? メネラオスの息子で、テレマコスが到着した時丁度結婚式を挙げていた。それだけ以降全く記されていないけど)。
ジェイムズ・ジョイス作成「計画表」より。
よろしければ、サポートお願いします。励みになります。