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今週読んだ海外記事と雑感(2020.2.1)

今週もNewsPicksでピックしたニュースとコメントを転記してまとめておきます。
今週はピック数が少なかったので、文末の有料パートは別途読んだ海外記事とそれに対する感想を書いていきます。

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CasperのIPOが不安視される理由

上場準備に入ったCasperですが、足元の成長が鈍化し、赤字も増大していることから公開後の成長については懐疑的な投資家が多いようです。こうした投資家マインドは同じく上場準備をはじめたPelotonにも影響が出そう。
記事中に「Casperは小売企業であってテクノロジー企業ではない」というコメントがでてきますが、今後ユニコーンとして大量に資金を集め、IPOを目指すのであればここが論点になってきそう。
あくまでモノをベースとしたデータ活用やプラットフォーム化を目指し、そのテクノロジーも整えているのであれば別ですが、現在のD2Cブームは(表面的には)モノづくりに終始しているところが多く、ある程度普及したらそのあとは確実に成長が鈍化していきます。
特にCasperのような買い替え周期が長い商材はわりと早くにその影響を受けやすく、その問題点が財務面にもはっきりと現れてしまった分、投資家からの評価も辛口になっているのではと予想します。
とはいえCasperも睡眠を軸としたテック企業としてIoT的な動きを加速しているようなので、現時点の成長鈍化や赤字幅はそのための投資としてきちんと説明し、ブランドとしての舵取りができればそこまで悲観的になる必要もないのでは?と個人的には思ったりしています。

ファッションブランドがレンタルサービスを開始する際の3つの戦略

レンタルサービスをはじめるブランドも増えてきましたが、自前でやるorレンタルサービスを使う以外に、第三の道としてレンタルサービス専用のプラットフォームが生まれ始めたというのは面白い。特にCaastleはすでにバナリパやBloomingdalesが活用しているようで、昨年辺りからブランドが自前のレンタルサービスを開始した背景にはこうしたプラットフォームの誕生があったのか〜!と納得。
記事の冒頭にもあるとおり、レンタルは通常の販売とは流通が大きく異なるため、中小のブランドにはなかなか手が出せないのも事実。とはいえ今後の大きな流れを考えればレンタルやリセールをブランド自身が運営する市場の成長可能性は大きいため、日本でもこうしたプラットフォームが生まれそうだなと思います。
またレンタルサービス活用の話でRent the Runwayの話がでてきたのですが、商品の買い切り以外にもレベニューシェアを少しずつ試し始めているとのこと。買い切りモデルでもブランドからすると百貨店に卸すのと変わりないので意外とすんなり受け入れているブランドも多いようですが、レベニューシェアが当たり前になれば、そもそもの生産量を少なくしつつちゃんと利益をあげる、という仕組みができそうだなと思います。
あと面白かったのはRTRのUnlimited契約者のうち75%がはじめの3ヶ月で15以上の新しいブランドをレンタルしているという点。さらにブランドの視点からも、購入される洋服とレンタルされる洋服が異なるためカニバることなく新しい客層にアプローチできているとのことで、現時点ではマーケティング的な視点から連携しているのだろうなと思います。とはいえデータは自由に使えなさそうなので、その点をどうみるかではありますが。
今後こうした「レンタル」との付き合い方はあらゆるブランドが考えなければならなくなっていくのだろうなと思います。

ファッションブランドが「限定イベント」を通して創る新たな顧客コミュニティのかたち

先日のプラダのクラブイベントを筆頭に、ロイヤルカスタマーのみ招待したライブイベントやフィットネスイベントなど、リアルの体験を共有することを通してコミュニティを醸成する取り組み各ブランドの間で始まりつつあるもよう。一部の調査では81%の人が好きなものを通して人とつながりたいと思っており、75%の人がブランドの特別な体験をSNSでシェアしたいと回答したとのこと。
一方で、Rebookのようにポイントにあわせて参加できるかどうかが決まるという形式だとヒエラルキーが可視化されてしまうため、あくまで「ランダムに招待がくる」ような形式の方が顧客を疲弊させないのではないかなと思ったりします。ファッションにせよエンターテイメントにせよ、ひとつしか選べないわけではなく複数所有したり参加したりするものだからこそ、あまりに強い熱狂を生むと結果的にLTVが下がりそうだなと思ったり。

NordstormはいかにしてD2Cブランドとの関係を築いているのか?

昨年「kimono」の商標登録をめぐって騒ぎになったキム・カーダシアンのブランド・Skimsの商品をNordstromが取り扱い開始。Nordstromは3年ほど前からD2Cブランドの取り扱いを精力的に増やしています。その結果として、今年の第三四半期売上額は昨年対比でほぼ2倍となる1億2600万ドルに…!ちなみに基本的には独占契約のよう。
2017年時点でNordstromのポップアップを開催し成長とともに規模を拡大するなど小規模なブランドのアクセレーターとしても機能しはじめており、この形式を独占契約にしているのであればしばらくNordstromの天下は続きそう。
ただポップアップの場合は卸売契約ではないはずなので、どんな契約形態なのか、必要在庫数がどのくらいなのかが気になるところ…!

香港が「ショッピングセンターの街」になるまで

アメリカでショッピングセンターが大量閉鎖している中、なぜアジア諸国、特に香港でSCが台頭しているかについての考察記事。香港は1㎢あたりのSC面積が世界一で、なんとひとつのモール内で生活のすべてが完結するビルもあるとのこと。
これだけ香港でSCが発展した理由としてあげられているのが公共交通機関との連携。日本でいうJRとルミネや阪急鉄道と阪急百貨店のように、元国営の地下鉄がモールを多数所有しており、ドアtoドアでモールに直結できるようになったことが発展の理由として説明されています。
これは日本でもまったく同じ現象が起きており、逆に言えばアメリカのSCの衰退は郊外型だからとも言えるのかもしれません。
フィリピンやベトナムでもイオンが好業績をあげるなどSCが人気を博していますが、都市型でアクセスしやすいこと、空調がきいていることから比較的国土が狭く高温多湿な国でSCが人気を得ているのだろうなと思います。

競争が激化するキッチンウェアD2Cの生存戦略

D2Cブランドの中でも特に激戦区になりつつあるキッチンウェアの分野で各ブランドがどのように成長戦略を描いているかをまとめた記事。ざっくり分けると、①商品数を絞り込んで効率化②素材や環境面のこだわりを語って差別化③顧客コミュニティの醸成によるファン化の3つが大きな方向性と言えそう。
ただ記事中にもあるとおりD2CはこれまでのITのように勝者総取りモデルではなく市場を分け合っていくモデルなので、どの戦略を選ぶにせよ中途半端にせず突き詰めることが重要なのかなと。
そしてエッジを保つには外部からの資金調達が足かせになることが多いという話も納得。とはいえ工場や店舗など設備投資をするのであれば調達が欠かせないのもまた事実なのですが…!
資金調達とブランディング戦略のバランスは今後D2Cの大きな課題となっていきそうです。

旅×ファッションレンタルが創る新たなマーケット

ファッションレンタルと旅行市場の相性がいいのはとても納得。RTRがW Hotelと提携してホテル内でレンタルアイテムを受け取れるサービスをはじめたのは知っていましたが、Trvl PorterやMyVacationStylistなど旅先に特化したファッションレンタルが生まれていたのは初めて知ったのでとても興味深かったです。今はまだ富裕層の旅行者向けがメインなので1点あたり65ドルと普通に買うのとあまり変わらない金額に思えますが(とはいえ元の値段は10倍くらいするアイテムのはず)、なるべく手ぶらで旅行したい需要はあるので、今後効率化が進めばよりカジュアルなサービスも出てきそう。
文中に出てくる「ホスピタリティとは白手袋や銀のスプーンに象徴されるようなものではなく、顧客がほしいものを提供すること」は至言です。

NYがキャッシュレスのみの店舗を違法化へ

世界中で進むキャッシュレス化の波ですが、アメリカでは「現金取り扱い」が義務化される流れが起きています。というのも、銀行口座やクレジットカードを持っていない人たちが一定数存在し、キャッシュレス決済のみの店舗はそうした人たちを差別することになる、という認識が広がっているからです。フィラデルフィアからはじまってニュージャージー、サンフランシスコと続いてきたこの波がいよいよNYにも波及。今年中にはキャッシュレスのみの店舗を禁止する法律が試行されるとのこと。口座を持っていない人口が10万人と全体の1%以上を占めるため、やむをえない措置ともいえそう。
とはいえ店舗からすればキャッシュレス決済と現金どちらも取り扱うのはそれなりのコストがかかるため、キャッシュレスに一本化したい店舗もそれなりにあるのでは…と思ったり。そもそも銀行口座を全員がもてるようにするための取り組みが必要ではあるものの、先進国ではこうした併用スタイルをしばらく続けざるをえないのかもしれないなという気もします。

FarfetchがTencentから25億ドルを調達

もともと2社は中国におけるパートナーシップを結んでいましたが、今回の資本提携は中国のソーシャルコマースを2社で抑えていく宣言ともいえそう。これに対してAlibaba・YNP陣営がどう対抗するのかが気になるところ。今中国はちょうどラグジュアリーEC伸び盛りのフェーズだと思うので、ここでアクセルを踏む・踏ませる2社の戦略はさすがだなと思います。
一方でTencentがFarferchの大株主となるため、中国以外の戦略にも大きな影響がありそうな提携です。

Norstormがリセールサービスを開始

Nordstromが1/31よりリセール商品を扱う「See You Tomorrow」の取り組みをECとNYの店舗で運用開始。一旦半年限定のテスト運用のようですが、拡大への期待値も大きくおそらくその後も何らかのかたちで続いていくのではと思われます。商品はNordstromの既存在庫を使い、パタゴニアのリセールサイトなどを運営するYerdleに運営委託しているとのこと。
記事の最後でこのプロジェクトの責任者が話しているとおり、今後さらにグローバル化が進み商品が均一化していく中で、リーシングやバイイングだけではなく「売り方」にバラエティを持たせ、思想を表明していくことが今後ますます重要になっていきそうです。

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今週ニュースを読みながら考えさせれたのは、小売を含むリアルビジネスとスタートアップ的な戦略の相性について。

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