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日本の会社は "社会"を形成する

私は新卒で入社したときに『これは入社ではなく入学だ』と感じたエピソードをよく話すのですが、日本企業は多かれ少なかれ学校のような要素も持ち合わせているものだと思います。

そう確信したのは、『アメリカ・ジャーナリズム』という本の中で日米の社員教育に対する考え方が異なるという箇所を読んだから。

社員教育費がほぼゼロに近いというのもまた極端な気がしますが、たしかにアメリカのように雇用の流動性が高い環境では、お金をかけて社員を成長させても次の会社にステップアップしていってしまう可能性があるので、常に即戦力だけを募集し、成長は自己責任というスタイルが理にかなっているのかもしれません。

このように日米の雇用形態の違いを話すと『日本も雇用の流動性を高めるべきだ!』『成長は自己責任だ!』とアメリカ化することがよしとされる風潮がありますが、私はそれぞれに一長一短があると思っています。

アメリカで働いたことがあるわけではないので実際にどのくらいアメリカ企業がOJTや個人の能力開発を支援しているかはわかりませんが、日本のような入ってから教育するスタイルは、社会全体で見れば『敗者復活』がありえるという利点があります。

例えば私は二社目のITベンチャーに入った時点では『ぐーぐるくろーむって何ですか????』という状態だったのですが、基礎を教えてもらいながら実務で使ううちに、3年経つ頃にはサービスの構造を理解し、ACCESSを使って自分でクエリを組んで自分の欲しいデータを出せるくらいまでは成長しました。

もしこれがアメリカ的な実績主義の中途採用しかなかったら、私の知識や経験ではそもそも異業種への転職はかなわず、『小売×IT』という今の私の強みは醸成されたなかったと思います。

就職ではなくまず職業訓練校や大学院で学び直すという方法もありますが、ただでさえ多額の奨学金という負債を背負っている中で、自己資金で再度学び直しができる人がどれだけいるのだろう、と個人的には思います。

学び続けるための能力開発費が完全自己負担ということは、学ぶための資金がある人はますます富み、お金がない人は現状を抜け出すきっかけがなかなか掴めないということなのではないでしょうか。

そう考えると、日本では企業がある程度研修費を負担したり、社員の留学や学び直しにお金をかけるという点で、社会に変わって教育という福祉を提供しているとも言えるのかもしれません。

さらにいえば、

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