『地方人材は東京へ行くべき』は本当か?
先週金曜日、はじめて名古屋で登壇してきました。
テーマは『フリーランスとしての起業』。
これまで大企業からスタートアップ、フリーランスといろんな働き方をしてきた中で感じたこと、考えたことをお話しました。
当日お話したことは下記のモーメントにまとめていただいているので、あわせてお読みください。
(ていうかなぜOGPの写真これにしたし)(もっと「イベントが盛況です!」みたいな写真あったやろ)
働き方を中心に1時間半くらい話したのですが、その中でも事前の打ち合わせで『この話を入れましょう!』と提案したのが『地方人材の可能性』というテーマでした。
私自身九州の片田舎出身で、大学から東京にでたこともあって、ことあるごとに『地元に帰る』という選択肢に直面してきました。
結果としてもう10年東京にいて、まだしばらくは東京にいつづける予定なのですが、フリー時代にいろんな地域を訪れて仕事をしたこともあって、『地元に帰る』ことへの考え方が昔と今ではずいぶん変わりました。
昔はとにかく東京にでないとどうしようもないと思い込んでいたのですが、ネットを通して世界中がつながるようになった今、むしろ地域というエッジを立てることで『会いに行きたい人』になる戦略もありなのではないかと考えるようになったのです。
この話をした後、質問で『それって理想論だと思うんですが』と言われたのですが、私はむしろ『東京に行きさえすれば成功できる』という考の方が楽観的すぎるのではないかと思っています。
というのも、東京で働くということは、1000万人の中に『埋もれる』ことだとも言えるからです。
東京にはたしかにチャンスが多い。でもそれと同じだけ、ライバルも多い。
総数としてのチャンスは多くても、そのチャンスが自分に巡ってくるとはかぎりません。
とはいえ、東京に行くこと自体に反対しているわけではありません。
私自身が東京にいてよかったなと思う理由のひとつは、人口が多い分消費の選択肢も多くそのレベルも高いことです。
日本有数の美術館やトップレベルのセレクトショップ、活気のある商店街など地方にはない刺激がたくさんあり、人が何に欲求を感じ、どう行動するのかを自分の身体で体験するチャンスがたくさんあります。
また、人が密集している分、会いたいと思った人にすぐに会いにいけるのも大きな魅力です。
どんなにSNSを含めたオンライン上のやりとりをしていても、直接会うことによる親密さの深まりには勝てません。
興味がある人にはすぐに会いに行って、仲良くなって、そこから新しい何かを生み出していく。
東京という街は、そういうエネルギーに溢れていると思います。
ただ、こうした魅力も、その他大勢に埋もれているままではそのポテンシャルを十分に活かすことができません。
消費が発達した街だからこそ、何も考えずに遊びに行けばそこそこ満足できてしまうからこそ堕落してしまうことが多いし、会いたい人がいても自分自身が相手にとっての『会いたい人』にならなければ会ってもらうことはできません。
とりあえず上京したはいいけれど、いつのまにか野心や夢を失ったまま惰性で過ごし、気づいたらもう地元に戻るという選択もできずに東京の『その他大勢』として生きていくしかない、という罠にハマりやすいのが『とりあえず東京に行く』という決断なのです。
(ちなみに東京で暮らすこと自体が目標だとか、東京での暮らしが楽しくて幸せだから満足、という人は特に問題なくて、もっと何かしたいのにというフラストレーションを抱えたまま惰性で過ごすのがよくないという話です)
だからこそ私は、単に東京に行くというだけではなく、その『行き方』が重要なのではないかと思っています。
地方人材はそもそも、東京以外の地域にいるというアドバンテージを持っています。
それを有効活用して、東京側から『ぜひ一緒に仕事をしてほしい』と指名されることを目指す方が、苦労をショートカットできる場合も多いのではないかと思うのです。
これはイベントでも話したのですが、地域と東京をつなぐ『コネクター』は、とても重宝される存在です。
誰もが地域に注目しているけれど、地域にはそれぞれのルールや人間関係があり、よそ者が簡単に入っていくことは難しいものです。
特に伝統工芸などのものづくりをしている人たちは警戒心が強かったり口下手な人も多く、信頼を築くまで時間がかかることも多々あります。
そんなとき、地元に顔がききつつ東京の人たちのセンスやスピード感もわかって双方の考えを『翻訳』しながらつなげられる人がいれば、東京の人にとっても地域の人にとってもメリットのあるプロジェクトがたくさん生まれていくはずです。
さらにそうやってコネクターとして動ける人のもとにはあらゆる情報が集まり、その知識や信頼を生かしてまた人をつなぎ…と続けることによって『○○といえば△△さん』というイメージがつき、東京に行っても埋もれることなく活躍することができるようになるのです。
もちろんこれは東京と地域という話にとどまらずどんな分野でも言えることですし、東京に行ってから自分のキャッチコピーをつけるということも可能です。
ただ前述の通り東京はライバルが多い分そのための努力は並大抵ではなく、さらにブルーオーシャンを過度に意識してニッチすぎる(=需要の低い)ところで戦ってしまうとなかなか人に見つけてもらうことができません。
その分、自分の過ごした『地域』を強みに据えればほとんど努力も必要ありませんし、旅行や地域のものに興味がある層は多いので誰かのアンテナにひっかかる可能性も高まります。
これは地域の話に止まらず業界や趣味などあらゆることに言えるのですが、『自分は何も持っていない』という人でも、自分がいるコミュニティ外から見たらそのコミュニティの専門家です。
だからこそ、接するコミュニティを少し変えるだけで、『そんなことで?』と思うようなことで評価されたりするのです。
地方人材はつい東京と比べて自分たちには何もないと思いがちですが、東京の人から見ればはるかにその土地に詳しく、頼もしい存在です。
その利点を活かすことができれば、単に東京の企業で働くよりも自分のやりたいことに近づける可能性が高まるのではないかと思います。
ただ、こうした話が『理想論だ』と言われがちなのは、その地域内で一角の人になるまでの道筋がイメージできないからなのかもしれません。
では具体的にどうすれば地方から名を上げることができるようになるのか。
そのひとつの答えは、イベントでも話した通りまず『無償でいろいろ手伝ってみること』にあると思っています。
ちょうど週末にNewsPicksの特集で公開された『バズりの法則』という記事の中で、バズるにはネットワークが重要だという話が書かれていました。
詳細は記事で読んでいただければと思いますが、私がこの記事を読んで思ったのは、何かを広めるために必要なのはネットワークの回路を変えることだということです。
大前研一さんの『人生を変えるには時間配分、住む場所、付き合う人のどれかを変えるしかない』という有名な言葉があるように、付き合う人が変わることでネットワークの回路が変わり、情報の流通が変化した結果人生が変わるということは多々あります。
以前下記の記事の有料箇所でもSNSブランディングにおけるオンラインとオフラインの融合という話を書いたのですが、SNSという空中戦を制するためには実はリアルの場という地上戦が重要になっていきます。
具体的にいうと、ボランティアでイベントの運営に参画したり、仕事以外の時間を使ってどこかのベンチャー企業を手伝ったりすることでオフラインの人間関係が変わり、それによってSNSを含むオンラインの人脈も変化していくのです。
何か新しいことをしようとするとき、最近はSNSをはじめたりオンラインの発信をする人も増えましたが、誰ともつながっていない状態から急に発信をはじめてもほぼ誰にも届かず、面白くなくなっていつのまにかフェードアウトするという例が多いように思います。
それよりもむしろ『あなたが書いた記事なら読むね!』と言ってくれる人や、『このコンテンツを広めてあげたい!』と思ってくれる人をリアルの人間関係でいかに作り、まず小さなコミュニティの中で応援される人になるか。
小手先のテクニックを磨くよりも、そうしたリアルな信頼を作ることの方が、自分のブランドを確立するためにはよっぽど近道なのではないでしょうか。
そういう意味で、賛否両論あるオンラインサロンも、その存在を知っている人には『○○に入ってる方なんですね』と一気に距離が縮まる可能性が高まります。
実際、私も箕輪編集室やコルクラボ、櫻田サロンなどはすべてオーナーと知り合いであり、中の人にも知り合いがたくさんいるので『○○に入ってるのですが』と自己紹介されると会話の糸口を見つけやすく、距離感が近くなることを感じます。
そうやって人間関係の回路を変えながら自分の意見を発信し、共感者を集めていくことこそが、埋もれずに自分らしく働くことにつながるのではないかと思うのです。
そしてこれまでは回路を変えるためには東京に行くしかなかったのが、SNSの発達によって距離が遠い人だけではなく、逆にその地域内で活躍している人にも出会えるという大きな変化が起きました。
だからこそ今地方に住んでいる人たちは単に上京を選ぶのではなく、地域というタグを自分の強みにする可能性も意識しながらまずネットワークの回路を変化させていくことが重要なのではないか。
最近はそんなことを考えています。
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今日のおまけは、イベント翌日に主催者であるIDENTITYのメンバーと話していて考えた、今後地域においてアテンドという仕事が稼げるようになるために必要だと思うことについて。
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