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今週読んだ海外記事と雑感(2020.2.15)

今週もNewsPicksでピックしたニュースとコメントを転記してまとめておきます。
文末の有料パートは海外記事の解説です。

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Amazonがラグジュアリー領域へ進出

Amazonが参加のZapposを通してラグジュアリーECへの参入をテスト開始。「VRSNL」というラグジュアリーブランド特化型のサイトによってFarfetchやYNAPに対抗していく考え。Amazonは世界一の小売業となったものの、ファッション分野、特にラグジュアリー分野はまだまだ未開拓で広大なマーケットが広がっている状態。Amazonブランドの中ではなく、グループとしてポートフォリオを組んでいく考えのようです。とはいえこれまでAmazonもあの手この手でファッション分野に参入を目論見つつあまりうまくいったものがないので、あくまでテスト的な運用である、という立ち位置のよう。
低価格のイメージからブランド力をあげた例としてはユニクロのようにブランドコラボを絡めながら長年かけて作っていった例があるので、そういう地道な戦略になっていくのかなあと個人的には思っています。

D2Cブランドの新たなルールブック

「これからのD2Cブランド立ち上げのルール」として
・オンライン販売に固執しすぎない(はじめから実店舗を持つことも視野に入れる)
・卸売を視野に入れた戦略策定
など従来の「オンラインで直接売ることで中間マージンをなくす」といった文脈に止まらないルールが出てくるのが印象的。この記事を読むと「D2C」「Digital Native Brand」の定義がさらに曖昧になっていく印象を受けますが、個人的には「思想の表明としてプロダクトがあること」「SNSを中心としたファンコミュニティを形成していること」といったポイントが「新しい」と言われる部分なのかな、という気はしています。
このへんの言葉の定義はあと5年くらい経ってさまざまなケーススタディをベースに類型化できるようになる、もしくは業界団体ができて公式の定義を表明する、といった動きがなければ定義自体がポジショントークの域を出ないので不毛だなという気もしています。
これからのブランドの立ち上げ方としては、マイクロインフルエンサーを重視するGenZ思考なども含め参考になる記事でした。

変化する「ラグジュアリー」の定義

「ラグジュアリー」の定義が変化し、価格の高さや権威性よりも「特別感」の方が重要になりつつある、という話。パーソナライズはいわずもがなですが、日本でいう「別注」も、ブランドの再解釈というコラボとはまた別の文脈で人気がでているのかなと思います。そういう意味では、ここで"drop"と表現されているインフルエンサーコラボも、単にフォロワーが多い著名人とコラボすればいいわけではなく、その人独自の解釈が入った商品をその人のコンテキストにあわせて作れるかが「特別感」のポイントになりそう。
また記事には書かれていませんが、招待制の会員システムにして買える人を制限するといった流れもではじめてきており、「誰が関わっているか」「誰がつかっているか」自体が特別感醸成のポイントになりつつあるのかなあという気もします。

ファッション界のベテランたちが作る新たな "Made to Order"ブランド

NYFWでレベッカ・ミンコフとElite World Groupがそれぞれカスタマイズオーダーブランドをローンチ。特にElite World Groupのe1972は専用アプリを使って自宅採寸し、4〜6週間で完成品を届けるというスピード感がすごい。メゾンブランドなのでトップス30万円〜と一般人には手が出ない価格ではありますが。パッとHPをみた感じだと、実際に自分がそのアイテムを身につけた際のイメージ画像が出てくるのかどうかが不明だったのですが、個人的には「ぴったりのサイズを作る」以上に、「その体型にあった商品をレコメンドする」だったり「来た感じをアバターで再現する」という機能が肝になるように思います。
またいちブランドで計測用アプリからアトリエのリレーションまで構築したのはすごいと思いつつ、サイズ計測アプリがバラバラに混在していると消費者視点では使いづらいことこのうえないので、今後スタンダードをとっていくかAmazonやアリババのような巨大資本と提携していくしかないのかなあ、という気も(FarfetchやYNAPとの連携は視野に入っていそう)。
記事の冒頭で失敗した例としてZOZO SUITがでてくるのですが、このスタンダードをファッションECとしてZOZOにとってほしかったな、という気もします。

2店舗目のオープンを発表したShowfieldsの躍進

昨年3月にNYにオープンした体験型デパート・Showfieldsが好調のよう。アートとデジタルネイティブブランドの商品体験を組み合わせ、アミューズメントパークのような作りにしているところが人気の要因のもよう。商品はShowfieldsの店内でも購入できるようです。
HPに出店者向けの情報が載っていないのでなんとも言えないのですが、競合となるb8taのようにデータを渡しているのか、契約形態は月額固定の家賃なのかも気になるところ。
また記事の最後にもあるとおり、これから一周年に向けて再来店率をどれだけ上げられるかの正念場になりそう。アートの造作が多い分、頻繁に内装を変えるのが難しく常連客を定着させるところに苦労するかも?と個人的には思ったりしています。

パーソナライズのオムニチャネル化に向けて

これから小売業の大きな課題となるであろうオムニチャネル・パーソナライズについてのマッキンゼーの考察。課題の箇所にも書かれているとおり、オンラインとオフラインをつなげて総合的なパーソナライズ体験をつくるための一番の壁は、必要なテクノロジーが多岐に渡ること、それらを統合する仕組みの構築が必要なことにありそう。
おそらくAmazonがリアル店舗でやろうとしているのは、たとえば顔認証によってユーザーを識別し、ほしいものリストや過去の購買履歴から「ここにこの商品がありますよ」というアラートを出したり、入荷のお知らせから試着予約までをオンラインですませた上で店頭で自動受け取りできるといった仕組みづくりだと思うのですが、Amazonですらキャッシュレスと商品認識で手一杯な状況なので、実現まではまだ数年かかりそう。さらに既存の小売企業はオンラインとオフラインの在庫データを統合するところから四苦八苦している状況(この苦労は察してあまりありますが)。
とはいえ、パーソナライズはオンラインだけでは片手落ちなのは明白なので、ゆっくりではありますが統合された体験になっていくことは確実だと思います。
b8taのようなリアル店舗のデータ分析をするサービスも、結局その顧客がはじめて商品を知ったのか検討段階なのか、購入経験があるのか、といった履歴に紐づく顧客情報が重要であることは理解しているはずなので、EC系サービスのどこかと提携してパーソナライズのためのデータ活用のテスト運用とかやるんじゃないかなーと思っていますがはたして。

***

今週読んだ記事を改めて俯瞰してみて思うのは、いよいよ流通を含めた購買体験の再構築が起きようとしているのだな、ということ。
D2Cブランドが起こした革命は実は全体の中でみると「売る」「伝える」という最終工程の部分にすぎず、「作る」「(物理的に)届ける」「管理する」といったすべての工程がテクノロジーによって変化し、体験そのものを変えていくのだなと感じました。

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