たった5mの距離が、地球の裏側よりも遠い季節
『5メートルの距離を保っていれば──日記の中ではヒロインでいられる?』
ドラマ『Unrequited Love』の中で、主人公のルオ・ジーは日記にそっと秘めた想いを書きつける。
高校時代から片想いしているション・ホァイナンと一定の距離をとりながら、そっと見つめ続けるルオ・ジー。
近づいて傷つくくらいなら、はじめから諦めてそっと見つめるだけでいい。
真面目で思慮深く、それでいて自信がないルオ・ジーの振る舞いは、多くの人に学生時代の淡い恋愛を思い出させるだろう。
一定の距離を保ちながら後ろを歩くシーンや、名前を覚えてもらうために成績の順位をあげようとがんばるいじらしさ、同級生と付き合い始めて『王子様は結局お姫様と付き合うことになってるのよね』と自分に言い聞かせる姿。
主人公が期待と自信のなさの間で逡巡し、素直になりきれない様は、まさに青春そのものだと思う。
2人の距離は、たった5m。
走り寄っていく勇気さえあれば肩に触れることだって言葉を交わすことだってできるはずなのに、自信のなさが5mの距離を地球の裏側ほどに遠くする。
近づきたいけれど、近づきたくない。誰かに近づくことの喜びと恐怖に揺れる季節。
それを私たちは青春と呼ぶのだろう。
***
タイトルにもなっている『片想い』は、中国語で二種類の言い方があるのだそうだ。
秘めた恋を表す『暗恋』と、振られても思い続ける『単恋』。
日本語でいえば同じ『片想い』でも、中国語で話すときにはその気持ちを伝えているかどうかで使う言葉が変わると気づいたとき、ふと自分の過去を振り返ってみてあれはどっちに当てはまるのだろう、と考えてみたりした。
5mの距離を保ち続けた関係性と、詰めても詰めても距離を開けられる関係と、どちらが幸福なのだろう、ということも。
『5メートルの距離を保っていれば──』
そう願いながらも少しずつ距離が縮まっていくルオ・ジーとホァイナンを見守りながら、青春時代の片想いに想いを馳せていた。
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