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漫画「ハローブランニューワールド」ができるまで 【中編】

こんにちは。

手探りでnoteのマガジンを作り、”舞台裏”と名付けた流れに乗って、cakesで連載が始まった自身の漫画「ハローブランニューワールド」ができた経緯や、なぜこういう話を描こうと思ったかという理由なんかを書いています。

この投稿は、同名記事の中編にあたります。実はこの内容を後編にしようと思っていましたが、書いてみるとまた長くなったので、さらに内容を分割。今回を中編としました。

興味があれば、前編から読んでみてください。

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どれにしようかな

さて前回、連載の内容を詰めていくミーティングをすることになり、担当編集者の大熊さんに不安を払拭いただいたところまで書きました。

悩んだ末、この時点で提出したプロットは最終的に4つ。

自分を勝手に超人に改造した人物から、多額の請求書を叩きつけられる”借金ヒーロー”の話。手で触れるだけで命を吸い取ることができる、死神の息子の話。近未来、新たなパンデミックが世界を襲い、断絶が当たり前になった友人たちの話。そして…公開中の本編の元になった話(これはネタバレになるので概要は伏せます)。

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そのプロット4つ。使わなかったものも、いつか漫画にしてやりたい。
(ネタバレを含むところがあるのでボカシをいれています)

このうち2つが可能性ありということになり、それぞれの第一話のネームを描いて提出。次のミーティングではそれらについて、より具体的なアドバイスを頂きました。

普段僕は、左→右の北米レイアウトで漫画を描いています。したがって、ひっくり返して右→左の日本レイアウトの漫画にする必要がまずありました。いつものコマの流れを逆にするのは、慣れるまでは思っていたよりも難しかったです。フォークとナイフをいつもと逆に持ってステーキを切る違和感、というと想像してもらえるでしょうか。

ウェブベースの漫画ということで画面サイズを考慮し、縦に割るコマは3列までというのも、なるほどと思いました。それ以上だと、一つのコマサイズは当然小さくなります。そうすると絵も文字も相対的に小さくなってしまい、特にモバイルデバイスでは可読性が下がってしまうからです。

他にもストーリーの向かう先やテーマについて議論しましたが、最終的にcakes内でも検討いただき、公開した漫画の”原型”にたどり着きました。


「文字数は半分に。もっと絵で語ってください。」

いよいよ、連載用の話を作り込んでいくぞという時、一生忘れないであろう一言を大熊さんから賜っています。それは

「文字数を半分にしてください。もっと絵で語ってください。」

というもの。正直、

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と思いました。笑

続く後編にて詳しく書こうと思いますが、提出した漫画のアイデアは、哲学の議論・理論をテーマにしています。なので、この一言を食らった瞬間「文字説明を減らして漫画として成立するか??」と困惑。ご本人も「哲学がテーマなのに酷なんですけど」と前置きされていました。自覚あったんや。

大熊さんは続けます。

「せっかく絵があるんですから、それを活かさないともったいないですよ。それに、どんどん文字を読まなくなっているこのご時世、本当に大事なことだけになるまで余計なものを削ぎ落としたほうが、逆に(言いたいことが)伝わると思うんですよね。」

見返してみれば、僕の描いたものは、文字に限らず”説明しすぎ”のきらいがあると感じました。絵だけでボタンを押していることがわかるのに「カチャカチャ」と効果音を入れていたり、動きが十分伝わるのに更に効果線を描き足して、コマがごちゃっと見えたり。ストーリーに関しても、最初から色々な設定を説明しすぎていたと思います。

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例。効果音が無くてもどんな音が鳴っているかわかるし、コマが細長いので進行上必要な文字が相対的に小さくなってしまっている。

つまるところ「文字は半分・絵で語る」はひっくり返せば、「大事なところがわかりやすいページ作り」への”道標”なんだと思います。不思議なもので、最初は無茶振りにしか聞こえなかったものが、それを踏まえると、ネームの描き直しは必須に思えました(もしくは、大熊さんに上手に乗せられてしまったのか…)。

さて、”どうせやるならトコトン”です。何度もネームを描き直しながら、効果音、効果線、無駄コマ、セリフを徹底的に削ぎ落とし、ストーリーの展開上必要な要素だけを洗い出しました。

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実際の変化をお見せすると…指摘をもらう前はこんな感じ。

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ネタバレを避け、使わなかったプロットのネームですが、そもそもの制作姿勢が、全体的にごちゃーとしているのがおわかりいただけるでしょうか?もはや、「余白恐怖症」ですよね。

対して、こちらが指摘を踏まえて制作・完成したページです。

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この2ページはすでに公開した第一話の一部です。文字情報は必要なこと”だけ”に抑え、その分絵を描き込んでいます。

自分史上かつてないシンプルさの漫画に仕上がったと思います。ビフォア・アフターを見比べてみた時「こんな伝え方もあるのか」と、思わず膝を打ちました。


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最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました!

冒頭にも書きましたが、もともとこの記事でまとめるつもりが、書いてみるとさらに長くなってしまったので、後編に続きます。

後編では、前編で予告しておいてできなかった哲学の話や、公開前後の様子を書くつもりです。

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Have a good one,
Q


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