【読書感想文】人新世の資本論
遅まきながら、新書でベストセラーとなっている斎藤幸平氏の「人新世の資本論」を読了しました。
資本主義にどっぷりと浸かった生活をしている私たちですが、気候変動という喫緊の課題に対し、どうすればよいのかという提案が、本書の主題であり、マルクス主義の再解釈にその根拠を求めています。
まず、資本主義の改善では、解決が難しいと主張しています。資本主義は、あらゆる財やサービスを希少性のある「商品」として貨幣と交換可能なものとするため、富のあるものが必然的に富んでいき、格差の拡大をもたらします。そして、さらなる欲望が、資本主義を駆動するため、無限の経済成長という需要に応えるべく、有限の化石燃料を燃やし続けて、無駄も含めた供給を続けることで、地球環境に不可逆で深刻な負荷を与えてしまっています。その結果、すでに地球的課題である気候変動として顕在化しているという説です。
斎藤氏の提案である「脱成長コミュニズム」は、市民社会の民主的な合意形成を基に、成長に一定の歯止めをかけ、希少性のある「商品」ではなく、公共財として誰もがアクセスできる「コモン」の創設によって、経済成長を追い求めなくても、幸福になれるのではないかと述べています。
これらの考えは、経済学者宇沢弘文氏の提唱された「社会的共通資本」と通じるものがあると、まず感じました。
そして、今年の夏も酷暑で、クーラーをかけても効かない程になってしまい、これは地球がおかしくなっているのでは、とようやく感じ始めたところだったので、私としては、タイムリーで、概ね腑に落ちる内容でした。
斎藤氏の提案である「コモン」というキーワードは、このnoteにもつながるようにも思えました。クリエイターが、課金を選択して、知識やノウハウなどを希少性のある「商品」として提供するのは、資本主義の方法論です。一方で、コンテンツに課金を選択せず、無料で誰もがアクセスできるようにすれば、公共財として「コモン」の知となります。クリエイターが収入を得られないのは、損するようにも思えますが、より広い読者に知識が届き、信頼も増すことで、クリエイターの認知も広まるようにも思えます。利他主義とも言えるのかもしれませんが、ジャック・アタリ氏によれば、利他主義は、回りまわって自分の利益にもつながると述べています。
noteというプラットフォームは、資本主義的でもあり、コモン的でもあり、ハイブリッドで、それはそれでよいのではないかと思います。このようなところから、言葉を通じて色々と試みてみることも、これからの社会のあり方の試金石になるかもしれないし、やがて大きな力となるかもしれません。
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