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映画時評:春画ドキュメンタリー「春の画」は、改めてアートとエロスが技術の革新を生むことを確認

春画ドキュメンタリー映画を京都出町座で観た。
お勧めだ。
なぜなら、既成の概念を覆させられること間違い無しだからだ。
アナタが専門家なら確認事項に終わるだろうが。

春画のイメージがエロスであることには間違いない。そして、そこにアートの要素が絡んでいることを知っている人が少なくないのも大方の理解通りだ。

そこからだ。
版画は、絵師の画を基に彫師・摺師が関わるのだが、その過程で更に芸術へと昇華させていく職人芸が唯一無二の根本的な人間模様を描く作品となっていく。皆で作り上げていく。
ただ、その原点として紹介されていたのは、大名家の嫁入り時の肉筆巻物であったと。一点ものを庶民でも活用できるよう版画刷りするようになったが、やがて芸術に制限がかかった時代に裏モノとして春画が描かれていたことを利用し、芸術家たちは色や技法、素材の試しの場として春画を利用するようになった。
それがのちに知られるようになった春画の興隆期、絶頂期へとつながった。
絶頂期から後は、私見だが芸術性は後回しになり、刺激性が高くなり、エロスと刺激性が求められ、より庶民よりとなり、やがて衰退の道をたどる。


この度は思わずパンフも買った


映画を観て
江戸の彫師の陰毛にかける情熱の程を想像するに、
江戸の摺師の秘所のグラデーションにかける情熱の程を想像するに、
彼らの「仕事」(あえて芸術と言わない)に向かう姿勢に敬意を表さずにいられない。

歴史上、複数人で関わり世界でこれほど真摯にエロスに向き合った人たちがいるだろうか。
おそらく、嫌だと言う人もいるだろうが、ボクはこの映画は世界に是非紹介してほしい映画だと思う。
今後、このような芸術形式は出ないだろうから猶更世界中の皆さんに観て頂き、「本当の」春画を理解していただいた方がいいと思う。
日本人でさえも正しく理解できていない人が多いだろうから、まずは日本人から。

いや~、素晴らしい。
そもそも、性行為を伝えたいだけなら、無地線画でもいいはず。
なのに、着物や家具や部屋の風景と言った情景をカラーで描こうとする「意味」!
着物の素晴らしいこと!
意味あるの!

時代の規制の中でアンダーグラウンドな表現方法であった浮世絵でしか利用できなかった絵の具や技法を思いのたけ使うことで、後の日本画への表現へと昇華させていった一流絵師たち。あるいは、浮世絵師。
彼らには不幸にも、まずは時代の中での「制限」という足枷があったからこそ、成長できたという皮肉な環境があった。
現在我々、或いは芸術家には「何でも自由」という別の足枷がある。彼らは何かを生み出すことができるのだろうか。

そして教えてエロい人。
絵師はどうやってそれぞれの図案を描いているの?
絵巻物だったら結婚前から熟女になる女性の姿を描いているわけだけど、一人の絵師がそれだけの女性に対する経験を必ずしも持っているとは限らない。経験を越えた以上の図案を描いているような気がしてならないわけなのだ。
つまり、モデルがいてる?
男女同時に?
謎~。

京都の出町座で観た

映画を観て劇場を出るや即座にパンフと春画に関する本を買った。
今まで春画に関する本にも関心があったが、買うに際し多少の躊躇いがあったが、映画を観た後では一切の逡巡はなかった。
出町座のいいところは、本屋も併設しているところだ。文化の発信地でありたいとする意図が見事に功を奏している。商店街には古本屋さんもあり、あとレコードショップ、古着屋さんがくればもっともっと魅力的な商店街となろう。


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